第14話



 ドンッ




 「キミは、外の世界を知らないでしょ?」



 僕を抱き抱えたまま、彼女は言った。


 目前には、視界スレスレですれ違うガラス張りのビルがあった。


 下から上へと急激なスピードで通り過ぎ、ゴオッという風切り音が、鼓膜の内側を揺する。


 重力に逆らいながら、僕たちは宙を飛んだ。


 青い「空」が、すぐ近くまで迫ってきた。



 ——外の、世界



 彼女が言ったその言葉を、必死に追いかけた。


 地上20階建てのビルの屋上から見渡せる、街の景色。


 ビルからビルへ、彼女は跳んだ。


 まるで、空中を散歩しているかのように。



 「“外”って?」


 「キミは今まで感じたことない?明日もきっと、同じ「日」が来るんだって」


 「明日も…?」


 「なんて言うのかな。同じ日が繰り返されてる。そう感じたことは?」



 飛行機雲が、空の下に伸びている。


 雲はまだらで、雨の気配はまだなかった。


 彼女が言ってることは、なんとなく理解できた。


 “同じ日が繰り返されてる”


 明日もきっと、同じ「日」が来る。



 ——その言葉の矛先にある、意味や内容を。

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