第1話 -4- 想いと想い

 過去の輝き。友人同士の少女二人が戦いながら絆を深めていた遠い最近だ。その時の二人は幼さの残る風貌に泥と血を付けて、荒い呼吸をしながら汗を輝かせている。二人は幾重にも重なる折れた剣群に周囲を囲まれていた。そして顔を見合わせる。

「か、勝った……ぞ」

「わたしたち、生き残ったの……?」

 自覚の浅い声は徐々に笑い声へと変わっていく。そしていつの間にか笑顔が溢れていた。波黒はぐろ白瀬しらせを腕の中に引き寄せて大声で笑う。

「やったぞ。やったぞ。やっぱり私たちは最強だ!」

「そう。そうよ。わたしたちなら誰にも負けない!」

 二つの歓喜。想いと想いは重なり響き合って大きくなる。

 波黒はぐろが頬がくっつくほど近く抱きしめて、相手の両手を強く握る。白瀬しらせは驚いたように一瞬身を固くしたが、直ぐに同様な満面の笑みで手を握り返した。

 喜びの声は徐々に落ち着き波黒はぐろが額をくっ付けてほほ笑んだ。

「綺麗な手だ、こんな時でも」

「ありがとう、あなたの髪も本当に素敵」

 見つめ合って他愛のない言葉を送り合う。そして波黒はぐろは相手の白い手を握って、風に御櫛を梳かせながら続けて言った。

「最高の友人だよ、お前は」

 その言葉に白瀬しらせは空気を鋭く喉へ吸った。しかしその緊張を相手に悟らせる事なく台詞を言う。

「そうだね。良い友達だよね……わたしたち」

 波黒はぐろは同じ言葉に満足を強くし、伝わる熱と鼓動に安らぎと喜びを弾ませて更に強く手を握る。白瀬しらせは笑顔を作りながらそれに応じた。

「わたしはあなたの最高の友人。そうよね」

「そうだ。この先の戦いも、最後だってきっと何ともなる。お前となら」

 喜びの言葉が交わされて、しかし想いと想いは逢い会わない。

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