第7話

順番を決めた後は、画面上にマス目とサイコロが表示された。



「あぁ、すごろくゲームなのか……」



画面を見てイクヤがそう呟いた。



昔からよくあるゲームだ。



ただ少し違うと感じたのは、画面全体の暗さだった。



右上に包帯男のキャラクターが鎮座していてこちらを見ているが、それ以外は黒を基調とされていた。



どんなゲームでも沢山の色が使われ、見ているだけて楽しい気分になるのだけれど、このゲームはどこか人を陰鬱にさせた。



「ほら、早くサイコロを振れよ」



カズヤに急かされて、ミホがコントローラーを操作してサイコロを振った。



出た目は3だ。



画面上のキャラクターが勝手に動き、3つ目のマスで止まった。



すると、画面中央にマスに書かれている文字が表示された。



「え……?」



あたしはその文字を読んで、思わずそう声を漏らしていた。



「あぁ、なるほど。これってホラーゲームなんだね」



文字を読んだホナミが納得したように言う。



「《危険なゲーム》って、やっぱりホラーゲームのことだったのか」



イクヤが呟いた。



全員、画面に表示されている《一番嫌いな異性とエッチする》という文字に釘付けになっていた。



みんなはホラーゲームと言っているが、あたしには年齢指定のゲームに見えた。



「えっと、これってキャラクターを操作すればいいのかな?」



ミホが我に返ったようにそう言い、コントローラーを動かす。



しかし、画面上のキャラクターはマスの上に立っているだけで動く気配がない。



「どうやってやるんだろうね?」



あたしは首を傾げてミホと画面を交互に見つめた。



普通、ボードゲームだと出たマスに書かれていたことが画面上で勝手に実行される。



しかし、このゲームはちっとも動かないのだ。



「壊れてるんじゃないか?」



イツキがため息交じりに言った。



せっかく探し出したのに動かないゲームにガッカリしているみたいだ。



「一旦リセットしてみるか」



カズヤがそう言い、ゲーム機のリセットボタンを押す。




しかし、それも反応がなかった。



「おいおい、なんだよこれ完全に壊れてんのか?」



何度もリセットボタンを押してみるけれど、やはり反応はなかった。



「仕方ない。諦めてやめようか」



イクヤがそう言ってモニターの電源を落とそうとする。



しかし、そちらもスイッチがきかなくなっているようで、画面は消えない。



「モニターまで壊れてるの?」



あたしは眉を寄せて呟いた。



ゲームが壊れていたとしても、モニターは関係ないはずだ。



部屋の中になんだか重苦しい空気が立ち込めて来た。



早くこの部屋を出たい。



そう思い、あたしはモニターのコンセントを一気に引き抜いた。



しかし……画面は消えない。



あの包帯男がずっと表示され続けている。



「なにこれ、どういうこと?」



ホナミが混乱した声を上げる。



嫌な汗が背中を流れて行くのを感じて、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。



「もういい。部屋を出ようぜ」



さすがに気味が悪くなってきたのか、カズヤがそう言って1番に倉庫のドアを開けようとした。



でも……。



「開かない」



カズヤが小さな声でそう言ったのを、あたしたちは聞き逃さなかった。



「え……?」



イツキが呟く。



「ドアが開かない!」



カズヤが何度ドアノブを回してみても、ドアはビクともしない。



「嘘だろ? ちょっと貸してみろ」



イツキがカズヤの体を押しのけてドアを開けようとする。



でも、結果は同じだった。



ドアは押しても引いてもビクともしない。



カズヤは青ざめ、その場に座り込んでしまった。



「カズヤ、ここに入ってから鍵をかけたんじゃないのか?」



イクヤにそう言われて、カズヤは青い顔のまま左右に首を振った。



「ちょっと、鍵を貸してくれ」



イクヤはカズヤから鍵を奪い取ると、イツキの元へと向かう。



銀色に光る小さな鍵が鍵穴に刺さり……回してみるとカチャッと音がした。



その瞬間カズヤが大声で笑い始めた。



「あはははは! びびっただろお前ら! ドアが開かないなんて嘘だよ。鍵をかけておいたんだ」



そう言い、お腹を抱えて笑っている。



ホッとすると同時に怒りが湧き上がって来た。



コンセントを抜いたモニターはまだ赤々と光っているし、なんだかおかしい。



こんな状況でこんな悪趣味なことをするなんて信じられない。



あたしは怒りに任せてドアへと近づいた。



「もういい。帰ろう」



イクヤにそう言ってドアノブに手をかける。



「カズヤ、お前はここで一晩過ごせ。それで頭を冷やすんだな」



イクヤが振り向いて冷たい声でそう言った。



今倉庫の鍵はイクヤが持っているから、カズヤを閉じ込めることは可能だ。



本当にそんなことはしないだろうけれど、カズヤは少し反省した方がいい。



「おい嘘だろ。ちょっとした冗談じゃねぇか。悪かったって!」



カズヤは焦って立ち上がり、ドアまで走って来た。



「本当に、もういい加減にしてよ」



あたしはブツブツと文句を言いながらノブを回した。



「……あれ?」



「なんだよユウ。まさかまたドアが開かないとか言うのか? そういうの勘弁してほしいんだけど」



「違うよイクヤ。本当に、ドアが……」



まさか、勝手に鍵がかかったとか?



そう思い、何度か鍵を開閉してみた。



しかし結果は同じでドアはビクともしないままなのだ。


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