ヲタクでもリアルで恋がしたい

空野そら

プロローグ

「せんぱーい! このアニメ一緒に見ませんかー?」

「だから、俺はそういうの興味ねぇんだよ」


 俺の名前は九十三つくみ りょう 胡正こうせい高校の2年生だ。


 そして、俺の目の前に立っており、今俺にアニメの押し売り......押し見をしていきたのは俺よりも身長が小さく大体140cmぐらいであり、華奢な体をしている俺の後輩、茶立場ちゃたてば 麻美まみという少女だ。


 俺は茶立場のアニメの押し見を何度も何度もされてきており、呆れながら断ると茶立場はわざとらしく落ち込むとすぐに上目遣いで改めて俺にアニメの押し見を行う。


「せんぱい? 私と一緒に見ましょ?」

「だから、俺はこれから勉強をするんだよ。それにお前、ここ学校だぞ? この学校、確か校内でスマホを勉学以外で使うの禁止じゃなかったか?」

「まあいいんですよ、バレなきゃ」

「そういう問題じゃねぇんだけど」


 躊躇なく校則を破ろうとしている茶立場にツッコミを入れると机の上に並べられた教科書や参考書類から数学の教科書と参考書を開き、そこに載っている問題用の数式を白紙のノートのページに書き写し、その数式の隣に答えを書き出す。

 すると俺の勉強を邪魔するように茶立場は押し見させようとしたアニメのあらすじを喋り始めたり俺の肩を手を使って揺らしたり、最終的には今俺が持っているシャープペンシルを奪いだす始末になってしまい、さすがに心が寛大な俺でも(自称)イラっとしてしまい静かに、そしてゆっくりと席から立つ。


「お前、そろそろあの窓から放り投げてもいいか?」

「やめてください! それにせんぱいなら本当にやりかねないですし」

「じゃあ、もう帰れ」


 ふざけ混じりに言ったことを真に受けてそれを拒否する言葉を言い、その後近くにいる俺でも聞こえないくらいの小声で何かを言っていたが、それは俺には関係ないことだろうと判断して茶立場に帰ることを進めると茶立場はムーという効果音が似合いそうな頬を膨らませた表情をする。

 そして俺はまた席に座り勉強を再開する。

 茶立場はその俺を見ると一瞬ポカンと呆けてしまったが、すぐに表情を変えて強引に俺の腕を掴む。


「私は! せんぱいと! 一緒に帰りたいんです!」

「いや俺は最終下校時刻になるまで勉強すんだよ」

「やだー! 私はせんぱいと帰りたいんですー!」


 急に茶立場が一緒に帰りたいと言ってきたため俺は少し遠回し目にそれを拒否をすると茶立場が俺の腕を掴んでいる手の力を強めて腕をブンブンと振るう。

 その行為に呆れた俺は、はぁっと深いため息を吐くと茶立場に体を向ける。


「しゃーねーなー、帰ってやるから校門で少し待っとけ」

「それ、せんぱい来ないですよね? 私にそれが通用すると思っているんですか? 私、数十回は引っかかったので分かりますよ」

「わーたわーたよ、でもこれ片づけるからちょいまち」

「はーい!」


 俺が折れて机の上に広がっている勉強道具を片付け始めると茶立場は俺の腕から手を放して両手を上に大きく掲げ、元気な声で返事をする。




「いやー久しぶりですね、ね?せんぱい?」

「え? 初めてじゃないか?」

「え、嘘、せんぱい......私の初めてを忘れたんですか?」

「おいその言い方やめろ、それ誰かに聞かれてたら勘違いされる」


 ここのみの会話を聞かれてしまったら相当勘違いされてしまいそうであったため俺は即ツッコミを入れて茶立場の頭をペシっと軽く叩く。茶立場は叩かれたことによって「あう」という声を出して頭を手で摩るとなぜかニヤァと不敵な笑みを浮かべる


「普通に引くんだが、お前にそんな性癖が......」

「勘違いしてますよ!? 私にそんな性癖は......ないですから」

「その間はなんだ? その間は」

「ほら、そんなこと言ってる間にもうせんぱいの家に着きましたよ」


 茶立場がそう言うと俺は視線を横に向けて自宅に着いていたことに気づき俺は視線の先にある自宅へ茶立場を避けて向かおうとすると茶立場は俺の進路を塞ぎながら俺の自宅に向かって歩きはじめる。

その光景が信じられず俺は少しの間思考を巡らせていたがそれでもなぜ茶立場が俺のマイハウスに歩を進めているのか理解できず俺は咄嗟に茶立場の手首を掴んでいた。


「せ、せんぱい? どうしたんですか?」

「どうしたもなにも......なんで俺の家に入ろうとしてんだ?」

「え? そりゃあ、今からせんぱいの家でアニメを見るからじゃないですか」

「なんでそんな当たり前みたいに言ってんだ! 俺はこれからお前に邪魔された勉強をすんだよ。だから帰れ、お前の家隣だろ」


 茶立場から想定外の言葉が発せられため無意識に大声で怒鳴り、文句を吐き捨てると茶立場は一瞬呆気にとられたような表情をしてすぐ目に涙を浮かべて急に走り出し茶立場宅の前まで行くと急に俺の方に視線を向ける。

 すると茶立場は口を大きく開き、まるで幼い子供が遠くにいる親に文句を言うような姿勢をする。


「せんぱいのバカ――!! こんなヲタクだって二次元じゃなくて三次元でも恋がしたいんです―!」

「何言ってんだ、勝手にすればいいじゃねぇか」


 茶立場が大声を出してまで言うことではないことを言ったため俺は視線を地面に落として小声で文句を言うとそれに気づいたのか茶立場はべーっと舌を出して茶立場宅に入っていく。

 それを見届けた俺は先ほどよりほんのちょっぴり浅い溜息を吐くとトボトボと目の前に建っている俺のマイハウスに歩を進めて扉の前で一度茶立場宅へ視線を向ける。


「......これでいいんだよな」


 小さく呟くとすぐに扉へ視線を戻して勢いよく扉を開く。

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