第十二話、AIイラストの続きの話

 AIイラストってわかるか?

 そう、うちの会社でもやってたんだよ。グラフィックデザイン系だから。


 でも、後輩のひとりがそれで病んで辞めちゃってさ。

 何でもアマチュアのイラストレーターの風景画を学習させていたら、絵の中にいなかったはずの女が生成されて、だんだん近づいてくるんだって。


 ノイローゼだよ。あいつ、気が弱かったから法的にグレーなことが怖くなって逃げたんじゃないか。

 辞める直前にそのイラストレーターのSNSのアカウントをご丁寧にメールで送って来て、「このひとにだけはやめてください」って。


 脅されてでもしたんじゃないかと思ってイラついたのが半分、あとは好奇心が半分で、仕事とは関係なく、件のイラストレーターの絵を読み込んでみたんだ。


 確かに何度も抽出すると、元の風景にはいなかった女が出てくるようになった。

 面白いなと思って更に繰り返したんだよ。


 よく見ると、その女、妙な服着てるんだよな。昔の体操服みたいな。顔は髪で隠れててわからないけど、どうも女の服のゼッケンに名前が書いてあるようだった。

 よく見てやろうと思って、女の上半身が画面いっぱいくらいまで繰り返した。


 そこで自分もやめた。

 ゼッケンに書かれてた名前が、自分の母親の旧姓だったんだよ。

 ただの偶然だと思うけど、ガラにもなくその夜お袋に電話したな。



 それから、例のイラストレーターのSNSを見に行ったらアカウントが消えていた。名前で検索したら新しいのが出てきたよ。

 どうも元のアカウントが乗っ取られてログインできなくなったとかで作り直したんだとか。


 しばらくして何となく元のアカウントのIDを見に行ったら、おかしなことになってた。


 今までの絵は全部消えてた。

 アイコンとヘッダーは元々描いてた風景画を画質がザラザラになるぐらい拡大して、訳がわからない状態だった。

 ハンドルネームのところには一言「お母さんを探しています」って書いてあった。



 よくわからないが、何にせよ、これ以上関わらない方がいいよな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る