第4話 大学生活

 今日は、寮への引っ越しの日。清和女子大の寮につき、指定された部屋に向かった。すでに入っている人がいると聞いていた。


「こんにちは。今日から、ここで一緒に暮らす室井理恵です。よろしくね。」

「そうなんですね。こちらこそ、糸井彩って言います。よろしく。これまで相部屋とかなかったから、どう過ごせばいいか分からないけど、何かあったら、遠慮せずに言ってね。」

「こちらこそ、不満とかあったらすぐに言ってね。じゃあ、荷物を入れます。そんなないけど。」


その後、引っ越しが終わって夕方になった。


「今日は、二人で引っ越し祝いということで、部屋でパーティーでもしない?」

「いいわね。部屋じゃお料理できないけど、料理とかどうする?」

「ポテチとかでもいい。あと、炭酸系の飲み物とか。一緒に買いに行こう。」

「じゃあ、行こう」


 買い物から帰ってきて、テーブルにスナック菓子を広げ、パーティーを始めた。私は、彩から抵抗感をなくそうと、家から隠して持ってきたブランディーを少し、彩の飲み物にまぜて渡した。彩は疑うことなく飲んで、少しや顔が熱ってきたみたい。


「なんか、気分が良くなってきたけど、どうしてかな。少し、フラフラするけど。」

「疲れたんじゃない。今日、手伝わせてしまって、ごめんなさいね。」


 私は、最初は、テーブルで向かい合って座っていたけど、横に椅子を持っていって座り、体を密着して話し続けた。


「ねえ、彩って、スタイルいいね。」

「それほどじゃないよ。」

「彼とかいるの?」

「今はいないかな~。」

「そうなんだ。私、なんかぴーんときたんだけど、彩って、女の人好きじゃない?」

「いや・・・・」

「隠さなくてもいいよ。私もそうだから、なんとなくわかるんだ。今どき、女同士のカップルだっていっぱいいるし。」

「でも、これまでそんなこと・・・。」

「そんなに、警戒しなくていいって。まず、気軽に試してみて、嫌だったら、やめればいいじゃん。一緒の部屋になったのも運命だと思うの。私は、彩のことタイプ。初めてみた時に、この人って思ったんだ。」


 私は彩にキスをした。そして、フラフラしている彩をベットに連れて行き、上に乗って、濃厚なキッスを続け、彩を愛撫し続けた。


「え、何?」

「びっくりさせちゃって、ごめん。これ、女同士でエッチするときに、両方に入れて両方とも気持ち良くするおもちゃ。中に入って、動くんだよ。面白いでしょ。初めてかと思うけど、痛かったら、すぐ言ってね。無理しないから。」


 愛撫は続き、彩がクライマックスを迎えて終わった。


「よかった? 最初からこんなハードにするとだめかなと思ったんだけど、彩だったら、むしろ、最初から、こっちでいった方が、上手くいくんじゃないかと思って。彩は女性ホルモン、そんなに嫌じゃないんだよ。多分。結構、近づくだけで気持ち悪いっていう女性もいるし。でも、初めてで、そんなにいっちゃうなんって思わなかった。」

「恥ずかしい。」

「そんなことないよ。これから、ずっと一緒だね。私って、昔から悩みがあって、男性が好きになれなかったんだ。でも、女性に声をかけても嫌われるんじゃないかって。でも、なんか彩にあった途端、この人だったらいけるってビビってきて。今日は突然でごめんね。でも、よかったでしょ。」

「うん。理恵のことよく知らないし、これから、いろいろ教えてね。」


 二人は、一緒にキスをしながら眠りに落ちた。その後も、二人は仲良く大学生活をおくり、レストランにも一緒に行ったりした。


「理恵、今日、一緒にレストランに行かない? この前、この先のイタリアンが美味しいって聞いたから。」

「行こう、行こう。今日はご機嫌だね。」

「そうそう。じゃあ、予約しておくね。」


 レストランに着くと、二人の会話は弾んだ。

「部屋で話すのと違って、これはこれでいいね。」

「そうね。そういえば、英語Ⅱの先生、なんか明治時代のおばあちゃんっていう感じだよね。」

「それ、面白い。確かにそう。もう少し、今時のニュースとか軽やかにレクチャーする方がいいのにね。」

「だから、あの先生の授業には、生徒が少ないんだろうね。私、参加してみたけど、いつも寝ちゃっていたもん。」

「それわかるー。先生、やめちゃうべきかもね。」

「それは言い過ぎだよ。そう思うけど・・・。あはは。」


 でも、大学には中学、高校時代の知り合いもいて、これまで暗かった私が楽しそうに明るく過ごしているのは不愉快だと思う人達がいたみたい。そんな人が、私には雰囲気の悪い男の人が周りにいて、気に食わないと、乱暴されるとか噂を流したみたい。


 それから間もなくして、彩が話しかけてきた。


「今日、友達が、理恵は雰囲気の悪い男を使って、気に入らない女に乱暴しているとか、ありもしない話ししてたんだよ。ひどくない?」

「私、昔から、よく言われないし、気にしない。でも、言ってくれて、ありがとう。私、前にも言ったけど、男性とはあまり近づきたくないし、女性も私のこと好きって思ってくれる人少ないし、あまり人に溶け込めないんだ。だから、彩がいてくれて、本当に助かってる。」

「大丈夫、大丈夫。私は理恵のこと、信じてるから。」


 彩、ありがとう。私はそんな人じゃないと、周りの人にきっぱり否定してくれた。やっぱり、彩は心も綺麗な素敵な人ね。


 でも、そんな関係は長続きしなかった。どうも、彩が合コンに行ったあたりから、男性に夢中になったみたいだった。


「彩、最近、ちょっと私に冷たくない?」

「そんなことないけど、この機会だからいうけど、なんか、ちょっと、女性とエッチするの、気持ち悪いって思うようになっちゃったんだよね。ごめん。理恵が嫌いとかじゃないよ。」

「そうなんだ。仕方がないね。寂しけど、別の人探すしかないな。」

「本当にごめん。」

「たぶん、初めての経験で、興味があっただけなんだよ。よく聞くことだし。それとも好きな人できたの?」

「好きな人というのはまだなんだけど。」

「じゃあ、エッチはやめるけど、時々は、一緒にショッピングとか付き合ってね。」

「わかった。」


 同じ部屋で過ごす友達として普通に関係は続いたけど、彩の私に対する気持ちはどんどんなくなっていくのが分かった。私が変わっているんだから、仕方がないわ。でも、私は彩を見守っていくから。


 しばらくすると、逆に、彩が男性にだらしない、男性を誘惑して性欲いっぱいの女性だという噂がたった。私は、女性達がテーブルを囲んで、この話しをしているたびに、否定してやった。女性達も、私のこと怖がっているようだったから、その時は、みんな黙って、話しをやめた。


 大学生活も楽しかったのは1年半ぐらい。それ以降は、彩とは女性友達として仲良くしていたけど、心は男性にすっかり向かっていたので、結局、残りの2年半ぐらいは1人ぼっちだった。


 もう少し外に出てみようと、コスプレショーとかに行って、スパイファミリーのヨルさんになってみたりもした。その場では仲いい女性の友達もできたけど、ショーが終わると、それぞれが現実の生活に戻っていき、友達関係は続かなかった。


 でも、その分、勉強には専念でき、就職活動では、トップクラスで、有名な製薬会社に入り、薬の研究をすることになったわ。


 そんな時、驚く連絡が耳に入ってきた。彩が入社したその晩に、車に轢かれたんだって。どうして、そんなことになっちゃたんだろう。今日が最初の出勤日で楽しみって、DMを送ってきたのに。彩の葬儀に出て、これまでありがとうって遺影に向かって伝えた。私は、これで本当に1人になってしまう。

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