第14話 クロウサギは独占されたい

「ぷはぁっ……! はぁっ、はぁ……」


 最後に濃厚なキスをして唇を離す。

 それからゆっくり呼吸をして……俺はベッドに倒れ込んだ。


「アラタさんっ。大丈夫ですか……?」

「ちょっと……さすがに、疲れましたね……あはは……」

 

 大丈夫!とハッキリ言いたかったところだが……もう喉さえもカラカラである。


 仰向けで楽な体勢になる。


 ヘトヘトな俺に比べて、ユナさんは疲れてはいるものの、まだまだ体力はあるという感じ。


 でも……発情期は収まった感じかな?


「アラタさん……」


 小さくぽっこりしたお腹をすぅ、と綺麗な手で撫でながら……ユナさんは俺と視線を合わせる。


「発情を収めてくれてありがとうございました」

「い、いえ……。なんとか体力持って良かったです。上手くできたか分からないですけど……」

「アラタさんは初めとは思えないくらい……その……凄かったです……よ?」

「っ」


 思い出すだけで身体がまた熱くなる。

 下腹部がピクリと反応する。


 ユナさんの寝室に入った瞬間。俺はユナさんにベッドに押し倒された。


 それからは……凄かった。


 出しているというより搾り取られている感覚であった。


 でも……嫌ではなかった。

 凄かった。


 やばい……頭がフラフラしていて簡単な言葉しか出ない。

 今まで生きてきた中で衝撃で濃厚だったのに……。


「そ、それにしても、発情期は大変ですね。いつくるかも分からないんですよね?」

「そうですね……。突然始まるものですけど、本当に突然というわけではありません。発情条件というのが満たされて、発情してるって薄々自覚して……みたいな感じです」

「発情条件……?」


 オウガさんはそんなこと言ってなかったような……。


「発情のいわばスイッチみたいなものですね。私の発情条件はおそらく……ストレスの軽減。つまり私は……すごく優しくされるだけで発情してしまう女」


 ユナさんが俺と同じく仰向けに寝そべる。

 視線はこっち。

 発情は収まったはずなのに、その瞳にはまた熱がこもっているように見える。


「こんなの、男の人たちに知られたら、いいように犯されるかもしれない。でもアラタさんになら私、全てを捧げます。だから……」


 少し汗ばんだ顔が近づき———


「私のこと、独占してくれませんか?」


 ユナさんは俺の背中に手を回し、ぐっと引き寄せてきた。

 さらに脚を絡められて「逃がさない」とばかりに抱きつかれる。


 これでは俺の返答など関係なしに、もう逃げられない。

 まあ、逃げるつもりもないんだけど。


「ユナさんが望むなら、俺はそれに答えます。ユナさんを独占させてもらいます」

「ありがとうございます、アラタさん。ふふっ」


 ユナさんが笑う。 

 それは、純粋に嬉しそうな笑顔だ。


「あの、アラタさん」

「ん?」


 何やらユナさんの絡んでいた脚がもぞもと動いて……。


「その……ぎゅっ、と。抱きしめ返してもらえませんか?」

「喜んで」


 耳元で囁かれ、同時に俺はユナさんの身体を抱きしめる。

 汗ばんだ素肌を密着し合う。


「私……今、とても満たされてます」

「俺もですよ」

「でも……私ばかりアラタさんを独占できないのは残念です」

「え?」

「獣人族であるのは、私だけではありませんから」

「……あ」


 そう。他の3人にも特徴的な耳が生えていて……。

 【獅子の舞ビースト・ハード】は全員獣人。獣人だらけのパーティー。


「……他の3人にも発情期が?」

「もちろん。同じ獣人族ですから」

「で、ですよね……」


 でも発情期があるからと言って、俺が解消するわけじゃないし……。


 えっ、だよな?

 他の3人もってなると俺……体力持つ気しないよ?

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