悪役がボスになる~冷酷非道の悪役貴族に転生してしまったので、原作最強の仲間を集めて守らせることにしました。これで俺の未来も安泰で~~す

柊オレオン

第1章 俺がライン・シノケスハットになる日まで

第1話 第二の人生は悪役転生

 ライン・シノケスハット。


 アルゼーノン帝国の三大貴族の一つシノケスハット家の長男として生まれた彼は冷酷非道として有名だった。


 ほしいものは奪って手に入れるが当たり前。


 気に食わない者はシノケスハット家の力で無理にでも処刑させる。


 まさしく、冷酷非道の悪役貴族の鏡だ。


 そんな彼だがスペックと容姿だけは原作の主人公、勇者シンに引けを取らなかった。


 故にラインは、なぜ勇者は自分ではなくあのどこぞの田舎出身のシンなんだとねたむようになる。


 妬みに妬み、日々怒りが募るばかり。


 処刑させようにも勇者として認められている以上、できない。


 そんな時、勇者シンは聖女アリステラと共に旅をし、魔王討伐へと向かうことになる。


 これはチャンスだとラインがある計画を立てた。


 それは勇者シンを途中で殺し、自身が勇者として名乗り上げるという計画だった。


 そして、勇者シンの旅の中盤に中ボスとしてラインが立ちはだかる。


 大まかな流れはこんな感じで進んでいき、最終的には勇者シンによってラインは殺されてしまう。


 そんな未来が彼には待っていた。


□■□


 トラックにはねられ、死亡する。


 よくあるテンプレ展開だ。


 犬と散歩をしている女子高生が歩いている途中、犬に引っ張られ道路を飛び出し、とっさにかばって死亡したというのが死亡の流れ。


 うん、俺ってかっこよかったよな。


 でも、最後ぐらいあの小説を読み返したかったな。


 その時、真っ暗な世界に一筋の光が差し込む。


 その光は徐々に広がり、俺の視界を真っ白に染めた。


 そして、目が覚めた。


「うぅ…………ここは」


 目が覚めると、見慣れない天井があった。


 俺はゆっくりと起き上がると、見慣れない部屋のベットで寝ていた。


「ここどこだ…………」


 起きて早々、鏡を確認した俺は驚愕の表情を浮かべた。


「こ、この顔つき、この特徴的な真っ白な髪色に、真っ赤な瞳…………間違いない。こいつはライン・シノケスハットだ」


 そう、俺はハマっていた小説の中の悪役貴族ライン・シノケスハットに転生していたのだ。


 見た目からしてまだ12歳程度で、若々しい。


「すごい、本物だ…………ってそんなのんきにしていられないぞ」


 前世のことはよく覚えていない。ただ、死亡直前とこの小説の内容だけははっきりと覚えている。


「このままじゃあ、俺、死んじゃう」


 ライン・シノケスハットは最終的に原作最強主人公の勇者シンによって殺される。


 それは当然のことで、ライン・シノケスハットは帝国内でもかなりの問題児で、彼は勇者の立場を欲しがったからだ。


 ストーリーを読むときは間抜けな死に方で「ざまぁっ!!」って笑っていたけど、こうしてその人物本人に転生したら、ただ事ではない。


「ストーリーが始まるのはたしか学園の入学からのはずだ」


 つまり、学園に入学する歳、15歳から本格的に原作が動き始めるはず。


 残された時間はあと3年といったところ。


 それまでの間に何とかしなくては。


「って、どうすればいいんだよっ!いや、待てよ。冷静に考えれば普通に俺が過ごせば、問題ないのでは?」


 そうだ、今の俺はライン・シノケスハットであってライン・シノケスハットではない。


「そうじゃん、これから普通に過ごせば」


 その時、扉のノック音が聞こえた。


 誰だろうと思い、後ろへ振り替えると、思わぬ言葉を口にした。


「はいれ」


 え?


 入ってきたのはきっちりとした執事だった。


「失礼いたします。ライン坊ちゃま、ご指示通り、すぐれたメイドを5名ほど用意いたしましたので、お好きにお扱いください」


「ご苦労だった、下がれ」


「はい…………」


 ど、どうなってるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


 口が勝手に強い口調になってちゃうんだけど、もしかして、心は転生した俺だけど、口調とか全部、ライン・シノケスハットになってしまうのか。


 しかも、メイド5人って何がしたいんだよ、こいつっ!!


 これじゃあ、何をしても冷酷非道のライン・シノケスハットに見えてしまう。


「落ち着くんだ。普通に考えれば、ストーリーにかかわらなければいいだけじゃないか。そうだ、うん」


 せっかく得た第二の人生、絶対に後悔のない生き方を俺はしたい。


 そうだ、せっかくの第二の人生、謳歌しないなんてもったいないじゃないか。


 そのためにも殺される原因は排除しないと。


 すると、扉が開き次々とメイドが入ってくる。


 あと、これも何とかしないとな。


 うん?


 ふと、最後に入ってきたメイドに目が飛びついた。


 この真っ白なショートヘアに絶壁な胸、どこかで…………。


 っとまじかでじろじろと見ていると、そのメイドさんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。


「あ、おっとすまないな。そこのメイド、名前を教えてくれるか」


「はい、アルルと申します」


「そうか、アルルか…………」


 アルル?どっかで聞いたような名前だけど。


「あっ!」


 思い出した。アルル、アルル・エルザー、原作最強の暗殺者、絶影のアルルじゃないか。


 アルル・エルザー、原作では陰で活躍する立ち回りするため原作での描写が少ないが、その一部に刺さる容姿でかなりの人気キャラで有名だ。


 どうして、こんなところにメイドとして雇われているんだ。


 まさか、俺を暗殺しに来たのかっ!?


 ありえない話じゃない。


 ライン・シノケスハットは幼少期からかなり悪名がひどかったからな。誰かが暗殺依頼をしてもおかしくはない。


 くそ、どうして俺がこんな目に…………うん?待てよ。


 ここで俺はいいことを思いついた。


 そうじゃん、仲間に引き入れればいいじゃん。


 たしかに今は印象が悪いかもしれないが、それは時間と一緒に払拭できるし、なにより、ライン・シノケスハットは性格さえ除けば勇者に張り合えるスペックがある。


 最強の暗殺者が仲間になれば、俺が殺される心配もないし、いざという時の戦力にも、盾にもなる。


 いいぞ、見えてきた。俺が生き残れる道筋が…………第二の人生を謳歌できる希望が。


 俺は悪役らしい笑みを浮かべた。


□■□


 無事に1日が終えようとした満月の月が輝く夜に俺はアルルを寝室に呼び出した。


 ノック音が聞こえると。


「はいれ」


「失礼します」


「よく来てくれた、アルル」


 アルルはなぜか少し顔を赤らめていた。


 なんで、顔が赤いんだろう。暑いのかな?


「ご主人様の命令とあらば、いつどこでも駆けつける所存です」


「立派な心構えだな」


「ありがとうございます」


「一つ質問だ。なぜ、呼び出されたと思う?」


「…………そ、それは、よ、夜伽でしょうか」


「うん?」


 よ、夜伽!?そんなつもりで呼んだじゃないんだけど。


 まぁたしかにこの原作設定だとあり得るか、それにライン・シノケスハットがメイドに無理やりって…………考えるのやめよう。


「勘違いしているようだな」


「え?」


「俺がアルルを呼んだのは二人で話したかったからだ」


「二人でですか?」


「そうだ、メイドのアルルとしてではなく、としてな」


 その言葉にアルルは驚きの表情を見せた。


ーーーーーーーーーー

あとがき


悪役転生ものは初めて書くので変なところが多いかもしれませんが、応援のほどよろしくお願いします。


少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!(ページ下から三回ほど押していただけると幸いです)


モチベーションになりますっ!

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