0.愚者

 光あれ!

 世界のどこかで男は叫ぶ。

 まことの光あれ!

 悲嘆に声を張り上げる。


 全てが荒れ狂う何処かは、彼方より訪れたモノ達によって『世界』となった。光が、闇が、空、海、陸が整えられる。

 彼方より『彼ら』と共に流れ込んで来る『力』もまた定まった流れを持たなかったが、やがて生まれた龍王達によって『世界』と馴染んでいった。

 全ては穏やかにすぎていくように思えた。けれど、『世界』に命が満ちた頃、何かがおかしく狂い始める。

 見守りただそこにあった『彼ら』は変容した。或いは、してしまったのか。それとも、元よりそうであったのか。最早知る由もなく、術もない。

『世界』は蹂躙される。無慈悲に、無意味に、無惨に、残酷に。

 いくつもの国が消えた。数え切れない死者が横たわる。

 崩壊を見下ろす丘の上で、『使徒』と呼ばれた男は己が無力に身を焦がす。奪われ、喪い嘆きの言葉も尽きた頃、男は静かに顔を上げた。

 宿る意思は、決意。

 如何なる犠牲を積み上げようと、どれ程の時間を重ねようと、『彼ら』全ての放逐に挑む。

 故に男は唯独り、長き路を往く。

 いつか必ず、その誓いだけを道連れに。

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