第007話 棒でコンコンしてるんだから、これもう『コンコンぼ(ry』。

 所持品(?)の確認に少し時間がかかっちゃったけど、葵ちゃんに建設資材も出してもらったし、いよいよ穴掘りの開始!……ではなく、先に『穴掘りするための道具』の作成から始めることに。

 まぁ最初に作れるのは『簡単な石器』だけなんだけどね?


「まずは石塊1と木材5を用意します。それらに『工作』を使えばあら不思議」

「……地面に落ちてる石を木の棒でコンコン叩いてるだけにしか見えないんですけど……工作要素はどこにあるのでしょう?そして、その奇妙な行動は何かの宗教的な儀式ですか?」

「あれだよ?石器づくりって結構時間がかかる作業なんだよ?」

「それは分かってますけどね?私は貴方が石をコンコンしてる理由について質問してるんです!」


 だから石器づくりだって言ってんだろ!

 まったくそうは見えないから仕方ないけどさ!

 てか外、相変わらずむっちゃ暑っちいな!……いや、暑いだけで済んだらいいんだけどさ。


 えっと、システィナさん、この世界での体調不良の扱いとかってどうなってるの?

(まず前提条件として、『あなたの体調』及び『あなたが治療に関与した相手』にはスターワールドシステムが適用されます。おそらくあなたが現状で回答を得たいと思われる、高温による体調悪化、『熱中症』及び『脱水症状』に関しては『軽度(20%の作業時間デバフ)・中度(50%の作業時間デバフ)・重度(意識不明状態)』の三段階の症状があり、熱中症の場合は衣服やクーラーなどでの保護策、耐熱対策がまったくなされていない状態であれば、外気温35℃から39で6時間、40℃から44℃で4時間、45℃以上では2時間の経過ごとに症状が進行、重度の状態からさらに一段階症状が悪化すると『死亡』してしまいます。また脱水症状に関しましては『12時間以上水分補給がない場合一段階症状が悪化(発汗状況により時間は変化)』します)


 なるほど……てことは回復方法は『その逆』で、体調不良まで進んでしまった場合は、温度が34℃から30℃の場所なら6時間、29℃から25℃の場所なら4時間、24℃以下の場所なら2時間の休憩で一段階回復するってことで合ってるかな?

(正解です。体調悪化前なら短時間の休憩で回復いたしますので、症状が出る前にこまめな休憩をとることをオススメします。ちなみに現在の外気温などはマップ画面に表示されておりますので随時ご確認ください。また、この近隣地域の季節による平均最高気温は、春・45℃、夏・60℃、秋、45℃、冬・60℃となっておりますので、お早めの高温対策をオススメいたします)


 今でも十分暑いからこの星?世界?で今は夏、それとも常夏の世界?なのかと思ってたら更に上の温度があるだとっ!?

 さすがに外気温60℃とか経験したこと無いレベルなんだけど……もうそれ、そこかしこで山火事待ったなしじゃね?いや、見える範囲の近辺には燃えるような草も木もまったく生えてないんだけどさ。

 この世界の住人、暑さに強すぎなんじゃ……そうじゃないからこの近隣には人っ子一人住んでないんだろうな、うん。


 などと、システィナさんと結構重要な雑談をしている間にも、おおよそ15分の作業時間で石器第一号は完成!


「パララパッパパー、いーしーおーのー」

「いえいえいえいえ!おかしい!おかしいですから!どうして石を棒でコンコンと叩いただけでその形になるんですか!?持ち手の部分とか石をくり抜いて刺さってますよね!?あとどうして石斧!?持ち手部分に使った木に対して木材の消費量も多すぎますし!!」

「100点満点の反応をありがとう。どうして……と聞かれると、それが『スターワールドにおける生産』だからとしか答えられないんだけどね?何故石斧なのかと言われれば最初はこれしか岩壁を掘る道具が無いからだな」


 石斧(原始的な道具)で穴を掘ろうとすると50%の『作業時間デバフ』が掛かるから、とっとと鉄製の鶴嘴を作るべきなんだけどさ。今は一刻でも早い拠点の確保が必要だからな。

 鶴嘴を作るための作業時間と、習得しなければいけない『技術』を考えると、最初はなんとかこれで頑張るしかないのだ。

 出来たばかりの石斧を右手に握りしめ、岩壁の前に立つ俺。その姿はまるで、


「ドラゴンに立ち向かう勇者みたいじゃね?」

「風車に突撃するドン・キホーテの間違いでは?」

「あれだよ?俺のテンションが下がると穴掘り作業が葵ちゃんにも回ってくることになるよ?」

「頑張れ私の勇者様っ!ラ・マンチャの男っ!」


 ホントいい性格してるよな葵ちゃん……いや、ちょっとまて、『ラ・マンチャの男』って結局はドン・キホーテのことじゃね?


 このまま外でボーっとしてても、時間だけが経過する――つまり熱中症になっちゃうだけなので、気を取り直して、手に持った石斧を岩壁に向かって叩きつけること数十回。

 石斧の衝撃でパラパラと砂はこぼれ落ちてるんだけど……あれー?作業が全く進んでる気がしないぞー?

(採掘作業を行うには『命令タブ』から『採掘』を選択、マップ画面で場所を指定をしてください)

 できればもっと早く教えてほしかったかな?

(また、単純作業になりますので『優先作業』タブを開いて『採掘』にチェックを入れておくと『自動』で作業いたしますのでそちらもオススメします)

 なるほど、確かに自力で延々と壁に向かって石斧を振り続けるとか精神病みそうだもんね?……てかオートで作業が出来るんだ!?すげぇなシスティナさん!

(他のシステムとは出来が違いますので)


 その得意げな声に、薄い胸を自慢気にはる彼女の姿が目に浮かぶようだった。

 ……いや、声は確かに女性っぽいけど性別のある存在なのかなシスティナさん。


 てことで心を無にしながら1グリッド掘り進めるのにデバフ込みでおおよそ150分、トラックで冷房に当たりながら、ちょくちょく休憩を挟みながらも『2グリッド分の穴』を掘り終わった俺。

 いや、オートで体は動くんだけどさ、これ、葵ちゃんとシスティナさんっていう話相手がいたから良いけど、一人ぼっちの作業だったらマジで暇すぎるわ……単純作業恐るべし。


「……どうして石斧を振り続けるだけで壁、床、天井にいたるまで綺麗に、測ったように2メートル間隔で仕上げられるんですか?」

「作業グリッドを指定してるからに決まってるじゃん」

「その説明だけで相手が理解してくれると思わないでくださいね!?……ああ、こんなことなら私もそのスターワールドというゲームをプレイしておくべきでした……」


 まぁ横穴を掘っただけでは、まだここは『拠点』とは呼べないんだけどね?

 てことで次の作業、『扉の取り付け』である!


 先程石斧を作成した時のように、石塊1、木材5を用意して15分間コンコンコンコン……。


「パララパッパパー、いーしーのーはーんーまーあー、石鎚の完成です」

「貴方、その青狸のSEは毎回はさみ続けるつもりなんですか?そして新しく作ったらしき石鎚ですが、私には石斧との違いがまったくわからないんですけど……」

「そうかな?よーく見れば、さきっぽ部分が石斧よりも平になってるんだけどね?まぁ石器なんてそんなもんさ。てことで、続きましては扉の設置予定場所まで木材を20本持っていきます」

「そんな持ちにくいモノを、よく20本もまとめて器用に抱えますね……」

「俺にはシスティナさんのサポートがあるから30キロ、60本までなら問題なく抱えられるよ?」

「ソレに関してはそれほど羨ましいとは思いませんけどずるいです!……というか、作業方法は石鎚で木材を叩き続ける感じなんですね?すべての作業がコンコンで終わるとか本当におかしすぎでしょう……」

「ゲームではドットキャラが作業してたからね?ちっちゃいキャラクターにそんな細かい動きが出来るはずないじゃん?」


 ……おおよそ75分掛かって扉の設置も完了!


「丸太というか『薪にしか見えない棒』がどうして板状になっているのかとか、壁にどうやってピッタリと取り付けたのかとか、色々と言いたいことだらけですけど……お疲れ様でした」

「いや、ホントに疲れたんだけどね?」


 16時くらいから作業を開始したからってのもあるけど、道具作成に30分、穴掘り6時間以上、扉の設置1時間以上、もちろん数回の休憩も挟んでるから少し前に日付も変わっちゃってるしさ。


「てか途中で一度葵ちゃんの姿が見えなくなったけど、どこに行ってたの?マップでは確認できてないし、何かが現れたらアラートが鳴る設定になってるから周りに危ない生き物は何もいないと思うけど、あまり見えない場所での単独行動は控えて欲しい……ああ!もしかしておしっこ?それとも」

「貴方は地球にデリカシーと言うモノを置き忘れてきたのですか?それとも元々持ち合わせていないのですか?」

「ごめんて。でも何があるかわからないしさ、恥ずかしいとは思うけど報告はしてほしいんだよ。やっぱり何か武器くらいは……葵ちゃんにも石斧作ってあげようか?」

「いりませんよっ!そもそも石斧持った女子高生ってどんな絵面なんですかそれ!……報告は了解しました。確かに貴方の言うとおりですね」


 手洗いについては素直に了承してくれた葵ちゃん。まだ何の生き物も発見できてないけど『迷宮』なんてものが近くにあるし、それなりに、注意しておくに越したことはないからね?

 てか、こんな未開の惑星で見た目なんて気にしてる場合じゃないんだけどねぇ?石器系女子、いいと思うよ?ある意味歴女じゃん?……違うか。

 葵ちゃんと雑談をしながらも拠点、寝床の準備を黙々と進める俺。……モクモク○ァームのバイキング、肉っ気が少ない割に高ぇんだよなぁ。


 んー、女の子を地面に直接ごろ寝させるのはさすがに可愛そうか……確か防災袋の中に銀色の保温シートが……あった!

 サイズはそれほど大きくないけど、上に一人寝転ぶだけなら問題ないだろう。うん、ペラッペラのシート一枚引いたところで何が変わるとも思えないけど優しさは大切!

 ああ、このままだと扉を閉めると完全に真っ暗闇になっちゃうな……あっ、ラジオとか手回し式の充電器が一つになった『携帯用のライト』も袋の中に入ってたはず。

 こんなことになるなら、太陽光発電パネルとか蓄電用の大型バッテリーも買っておけばよかった。


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