第2話 氷解音



太陽が登り始めたというのに

気温は上がらず

それでも朝からせっせと水出し珈琲を作り

やがて来るであろう真昼の太陽を

なんとか凌げるであろうかと冷やした珈琲


涼しい間にと草を刈り

花に水をあげれば

朝日が届く窓の向こうで

風鈴が音もなく短冊だけを揺らしている


肌に滲んだ汗を拭こうと

額から外したバンダナが

充分働いたよと塩気を含み


太陽が天空の頂点に達する前にと小部屋に戻り

氷をグラスに入れて珈琲を注げば

ガラスを割ったような氷解の音


気怠さだけの真夏の朝を懐かしむ思いはなく

誰もが出て行った家の朝に寂しさもなく

氷が割れる音に一瞬だけ鼓動が止まり


静かに忍び寄る短い季節は

掴もうとした希望と長い眠りの狭間

もう少し休んでいたいと思うなら


一体何がしたいのだと問い掛けるように

また氷が弾けるように割れた音がした

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