第6話 本命にアタック

 いよいよ本命のエマ様に会いに行く。


 少しずつ様子を見ながら近づいて行く。

 エマは今誰とも話していない。食事を楽しんでいるようだ。これはいいタイミングかも。そう思い、アタックする。


 小柄ながらも大きな双丘が目に止まる。身にまとっているドレスもフリフリの髪と相性のいいベージュ色のものを選んでいるようだ。


 近くで見ると胸の鼓動が高鳴り聞こえてしまうんじゃないかと思うほどである。仄かに甘いいい香りがして脳が麻痺しそうだ。


「ごきげんよう。エマ・ハーマイン様、お初にお目にかかります。私が昨年次期当主となりました、オルト・ダークネスと申します。以後お見知りおきを」


「ごきげんよう。オルト様。以後お見知りおきを」


 そうなんだよなぁ。この子今はアルス以外に興味が無いから素っ気ないんだよなぁ。ただ、印象を残すために二三言話しておかないと。


「エマ様、本日のドレスは髪の色とも合っていてとてもお似合いです。ご自分で選ばれたのですか?」


「このドレスは自分で選びました。髪がこの色だから私に似合うドレスの色ってあまり多くないんですの」


 少し目を垂らし口を尖らせてそう答えてくれた。よかった。悪い印象にはなってない。


「ドレスはもちろんですが、髪のお色もエマ様に大変お似合いですよ? 可愛らしい雰囲気にピッタリです!」


「そ、そうですか? それは嬉しいです。ありがとうございます」


 少し伏し目がちにこちらを見るエマ様。そのちょっと恥ずかしがっている姿も大変可愛らしい。俺の胸はもう一杯だ。


「いえいえ。では。他の方にも挨拶に回りますので。失礼致します」


 そう挨拶を終わらせて去っていく。さっきからアメニがめちゃくちゃこっちを見てるんだよなぁ。他の令嬢にも挨拶に回らない訳にはいかないな。


 次はマーニーだな。この子は性格は悪くないし綺麗系な顔立ち。俺のタイプではないが笑った顔がクシャりとなって可愛らしい。


 マーニー・フェーン伯爵令嬢(難易度:C)

 (赤い髪のポニーテール。少し薄い顔。目が少しだけ小さいが笑った顔が愛らしい。胸は張るくらいある)

 レベル40くらいないと落とせない。

 年上が好き20歳より上


 マーニーの元へと行って定型文の挨拶を交わす。そこでまた予定外の出来事が。


「オルト様は昨年まで当主では無かったから社交会に出ていないのですわよね? それで今年出ていらっしゃったとか?」


「えぇ。そうですよ」


「ということは年上ということですよね?」


 そうか。マーニーは年上が好きだった。俺は昨年成人しているが、当主じゃないから社交会に出ていない。指摘された通り21歳である。


「そうなりますね。ははははっ」


「私、年上が好きなんですー! オルト様お強そうだしカッコイイし、お話一杯したいですー!」


「申し訳ないですが、他のご令嬢にも挨拶したいんです。今日はこの辺で」


「じゃあ、また今度にしましょー!」


 そそくさとその場を後にする。

 

 これはまずいぞ。次回の動きがしづらくなる。でも、たしかマーニーはエマと仲がいい。それであれば三人で話したりできるな。


 よし、次回はそれも踏まえて作戦を練ってこよう。


 次はルールーだな。コーザに以前オススメした令嬢でドMが好きという性癖の持ち主だ。だがら、コーザとは合うと思うのだが。


 また定型文の挨拶をすると、ルールーはすんなりと挨拶だけでおわった。近くにコーザがいて目でエールを送っておく。


 最後がララだ。メラルダは、最初にあっちから来たからもう良いだろう。

 このララは令嬢、令息にも人気で色んな人と話をしているようだ。


 前にも語ったが、この令嬢はドタ恋の中でもナンバーワンの人気を誇っている。生で見るとまた凄いスタイルとフローラルな香りが男を引きつけるのだろう。


 ララにも挨拶をすると普通に挨拶を返してくれたが、コチラから話さなければ別に食いついてくることはなかった。


 よかった。これで予定通りにアルスと話ができる。そう思い周りを見てアルスを探すように見ていると。


「おい! お前は誰だ? 社交会に居るはずがないやつが居るのはおかしい」


「これはこれはごぎけんよう。ハクト・シーライズ様。社交会ではお初にお目にかかります。オルト・ダークネスといいます。闘技大会でお会いしましたよね? 社交会には今回が初めてでございますので、居るのがおかしいと言われましても困ります」


 話しかけてきたハクトを煙に巻く為にシラを切る。そして、どう言ってこいつの疑問を解決するか考える。俺以外のやつが変だと思わせればいい。


「知らない奴が居るのがおかしいんだ! お前には闘技大会でも負けた。何かがおかしい! 俺が負けるわけがないんだ!」


「はて、それに関しては実力だからと言うことしかできません。そして、私が当主になったのはエルトが弱かったからです。私のせいではありませんので……」


「そ、そうか。なんか。すまなかった」


 そういうと去っていった。

 これで俺への疑いは晴れたが、もしかしたらエルトを探るかもしれないな。


 面倒だなと思いながらアルスを探す。


 ハクトの注意は逸らした。

 とりあえず俺はアルスと仲良くなろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る