第2話 俺以外にも?

 ちょっと出掛けてくると言い残して俺は部屋にあった剣と革鎧を来て東の森に来ていた。ここは15レベまではレベリングできるはずだ。


 どうせ裏ボスに転生したんだったら邪魔する人は居ないよな。だったら最後の推しのあの子。難易度Sランクを攻略して結婚したい。


  その為にはまずレベリングだ。このゲームはレペルが高い程、令嬢達を落とすことができるというゲーム。だから魔物を倒すという作業が発生する。


 ────ガサガサ


 草が揺れ、何かがいるようだ。

 出てくるのを待っているといきなり跳躍して襲いかかってきた。

 咄嗟に頭を捻り避ける。


 後ろを見るとホーンラビットが角をこちらに向けて跳躍してきたようだ。また方向を変えてこちらに飛んでくる。


 剣を飛んでくる射線上に置くだけ。

 これで真っ二つ。

 この体も動けないわけじゃなさそうだ。


 ゲームでは肉とかのアイテムになっていたが、実際に狩るとなるとそうはいかないようだ。仕方ない。そのまま土に埋めよう。


 その後もホーンラビットを狩ってレベルを上げた。次はウルフでレベル上げ。


 ウルフは少し手こずったがなんとか倒せた。次々とウルフを狩る。気付くと薄暗くなっていた。


 屋敷に戻ると驚かれた。

 どこに行ってたのか。何をしていたのかをメイドに聞かれて狩りをしていたと素直に答えると、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


 何かあってからでは遅いから護衛をつけて欲しかったらしい。けど、それじゃレベリングができないから断った。


 会ったことがないが、父親に武闘大会でいい成績を残したら当主にして欲しいとお願いしてもらうことにしてその日は寝た。


 次の日了承を得た俺はレベリングに力を注ぎ、戦いの日々を送っていた。

 そして、闘技大会を迎えた。


「エントリーお願いします」


「はっ! オ、オルト様も出られるんですね?」


「でます! エルトもエントリーしてますか?」


「はい。先程されてました」


 大会のエントリーを終えるとまだ会っていないエルトを探す。選手控え室に行くと皆が頭を下げる。

 そうか。オルトって一応貴族では一番上の公爵家だっけ。


「オルト、どういう風の吹き回しだい? いきなり当主になりたいだなんて?」


 誰だコイツ? ゲームだとエルトとか出てこないからなぁ。こいつがそうかなぁ。


「社交会に出たくなったので。社交会出るなら当主の方が有利でしょ?」


「生意気な!」


「まぁ、まぁ。戦えば分かりますよ」


 ゲームでは一年に五回ある社交会で結婚相手を決める。その歳からレベリングする人が多い。そして、この大会は独身のみが出る大会。勝ち目は十分にある。


 トーナメントが決まってようだ。

 エルトと二回戦で当たるみたいだ。

 ハクトとは三回戦であたる。


 ゲームでもこの大会は開かれていたのを覚えているが、実際に参加したことはない。こんなのに参加するくらいならその時間をレベリングに当てるからだ。


「それでは、開始!」


 最初の戦いが始まった。両者とも刃引きされた剣を持っていて、勝敗は「降参」するか戦闘不能にする必要がある。

 

 相手が戦い慣れていないことがひと目でわかる。さっさと終わらせよう。


 顔に対して突きを放つ。

 相手は目をつぶって剣を振り回した。

 剣をクルッと回して首にあてる。


「降参する? しないならこのまま剣引くよ? 刃引きされてるけど……切れないといいね?」


「ひぃぃ! こ、降参!」


「勝者! オルト・ダークネス様!」


 周りがザワついている。

 この程度どうということは無い。

 選手控え室に戻る。


 次はエルトだったんだが、この戦いにはもちろん勝った。ただ、余りにもエルトが見るに堪えない状態になった為、ちょっと皆さんに伝えるのは差し控えようと思う。


 まさか、漏らしちゃうとは思わなかった。

 ちゃんとトイレに行ってから来れば良かったのに。


 という事で、ハクトである。

 本当はエルトに勝ったから適当に負けようと思ったんだけど、なんか主人公には勝っておこうかなと思い直した。


「それでは、開始!」


 ハクトは初っ端から全力で剣を振り下ろしてきた。ちょっとどのくらいの実力なのか探ろうとしたけど、それどころじゃなさそう。


 半身になって避けると追撃をしてきた。剣で弾く。俺は前蹴りを放った。別に剣以外で攻撃しちゃダメだとかそういったルールがある訳じゃないから。


「ぐっ! くっそ! 卑怯者め!」


「よっ!」


 剣を持ってる腕を狙う。

 跳躍して避けられた。


「いらっしゃーい」


 予定通りの動きすぎて笑えてくる。

 避けた先にハイキックを放つ。


 ────ドゴッ


 横に吹っ飛んで倒れる。

 ハクトの首に剣先を突き付ける。

 刃引きされていても痛いだろう。


「終わりだよ」


「くっそ! 卑怯者! 降参だ!」


 持っていた剣を投げ捨ててステージを殴りつけながら降参を宣言する。こんなキャラなんだ。主人公って。

 漠然とそんなことを思いながら冷めた目で見ていた。


「勝者! オルト・ダークネス様!」


 俺は控え室に戻ろうとしたところ、耳に入った言葉に目を見張った。


「……何で負けるんだ!? 俺が主人公なのに! くそっ!」


 なんでハクトは自分が主人公だって分かってるんだ?

 分かるはずないよな。

 って事は。


 俺以外にも転生してる奴が居るってことか。

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