芸術家に限った制度ではないと良いのに。夭折した偉人たちに想いを馳せる。

一度読んでから、しばらく咀嚼に時間がかかり、なんだかずっと心の片隅にあったので、もう一度読んで、これを書いています。

本作は、芸術家として仙人試験に合格すると、不老不死となり創作に没頭できるようになる面白い制度のある世界が舞台になっています。
不老不死特有の希死念慮もあり、とても壮大なファンタジーSFで面白かったです。

読み終わってから、芸術家だけじゃなく、科学者にもこういう制度があったら、もっとすごい発見や発明につながるのかもなぁと、『三体』のようなことを考えました。

というのもファイル共有ソフト「Winny」を開発し、いろいろと社会問題も引き起こした天才プログラマーである金子勇さんのことを思い出したからです。
彼はWinny裁判結審後、わずか二年ほどで42歳の若さで亡くなっています。
彼が仙人だったら、きっともっとすごいプログラムを発明して、日本のIT業界も違っていたのではないか、と思わずにいられなかったのです。

この作品は、端正で精錬された文章で淡々と綴られております。
私のように読んでから、十分に染み込むまで時間のかかる人もいると思います。

消費的になりがちなWEB小説という界隈において、こういった作品は貴重なのでは、と感じました。

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