34話。

 屍人グール階層の作成も順調に進み、一応の防衛階層としての機能を完成させた後オリゴスとの戦力差を考えてやはり屍人階層を第一階層とすることにした。これで現在のダンジョンの構成は以下のようになる。


 第一階層・屍人グール階層

 第二階層・骸骨スケルトン階層

 第三階層・本拠兼吸血鬼ヴァンパイア階層


 これから戦力が増えていくことを鑑みると同じ種族でも構成を変えて階層を二つに分けたり、他の種族を混ぜた混成階層を作るというのも……まだまだ夢が広がっていく現状に興奮を隠せない私が居る。


 屍人グール階層を第一階層へと変更を終えた時、オリゴスから連絡があった。そう、このダンジョンに所属する魔物であれば私との意思疎通がどこであっても可能なのである!サングィスに教えて貰うまで気付かなかった情報だが、そもそも彼は何処で知ったのか。『念じてみたらいけました』と軽い感じで答えられたが……それはいったん置いておくとして。


 オリゴスから来た連絡の内容は『試したいことがある』とのことだった。まだ短い付き合いではあるものの寡黙なイメージがある彼からそのようなことを言われるとは予想外ではあったが、最近は屍人グール階層や本拠のことに掛かりっきりで余り骸骨スケルトン達の様子を見れていなかったこともあり、すぐに向かうことにした。


 第二階層となった骸骨スケルトン階層へと着くとオリゴスだけでなく他の骸骨スケルトンも勢揃いで出迎えられた。地道に増やしてはいたが、こうして揃っている光景を見ると『軍団』感が増して非常に感慨深い。最初はオリゴスと約三十体の骸骨騎士スケルトン・ナイトだけでとても軍団とは呼べなかったからな……。


 物思いに耽っている私に早速オリゴスが一歩前に出て、その場に膝を着く。わざわざ私にそのような仰々しい態度を取る必要はないと何度言っても態度を改める気配がないのは困ったものだ。それだけ忠誠心があるということではあるのだが……。


 肝心の『試したいこと』というのは、骸骨スケルトンの召喚についてだった。


 これまでは私が自ら召喚をすることで数を増やしていたが、他の実験との兼ね合いもあり全ての力を此処に注ぐことは出来ていないのが現状である。しかし、オリゴスが自らの能力を把握するにつれて私と同じようなこと……つまり、無から骸骨スケルトンを召喚することが出来るようになったらしい。


 本人が語るにはダンジョンには不死アンデッドが大量にいるからか負の空気が充満しているため、オリゴスも無からの骸骨スケルトン召喚が出来るようになったとのことだが……確かに以前の私も不死アンデッドを配下に加えれば加えるほど死霊術の行使が楽になった記憶はある。だがどれくらいの不死アンデッドが戦力として加われば死霊術の格が上がるのか、正確に把握したことはなかったな。増やし続ければいつか、と適当になっていたが……配下である者にも影響を及ぼすともなればもう少し真剣に考える必要があるか。


 これ以上物思いに耽るとオリゴスを置いて死霊術の世界に旅立ってしまうため、早速オリゴスとの共同実験に取り掛かる。まずはオリゴスが出来るようになったという無からの骸骨スケルトン召喚を見せて貰った。


 オリゴスが手を前にかざすと黒き鎧が黒紫色の靄に包まれたかと思えば、その靄が目の前の地面へとゆっくり吸い込まれていく。少しの間靄を取り込み続けた土は途中で吸収を止め、ぼこっと盛り上がり始める。そして白い骨の腕が土を突き破った後、ごく一般的な骸骨スケルトンがその身体を露わにした。


 おお……本当に骸骨スケルトンが……。生まれたのはただの骸骨ではあるものの、私が時間を割かなくても戦力拡充が出来るという点が非常に大きい。どれくらいの力を消費するのかは確認する必要があるが、このままオリゴスに任せているだけで軍団レギオンを名乗れる程度には骸骨が増えていきそうだ。そんなことを考えながら生まれたばかりの骸骨をつぶさに観察していると、オリゴスから待ったが掛かる。


 『試シタイコトハ、デハアリマセン』と。


 てっきりこれが私の前でもしっかりと発動するかどうか、の確認かと思っていたが……私は少し仲間を侮っていたらしい。彼曰く、その試したいことと言うのは『私とオリゴスの力を合わせて召喚した場合どうなるのか』ということだった。


 その言葉を聞いて私は頭の中の殻が一気に破壊されたようだった。私は死霊術というのは全て一人の術者が単独で行使するものだと思い込んでいた。これは決して以前の私の周りに人がいなかったという訳ではない。断じて違う。事実、死霊術を学ぶにつれて周囲から人は居なくなっていったが、助手はある時期まではいたからな。断じて私の交友関係が問題ではない。


 しかし……なるほど、それは確かに試したくなる気持ちも分かる。実際オリゴスからの提案を聞いただけでワクワクしてきた。召喚される骸骨スケルトンの数が増えるのか、質が良くなるのか、それとも別の何かが変わるのか。逸る気持ちを抑えきれず、早速二人で召喚しようと思っていたのだが……。





 そもそもどうやって二人で召喚術を発動するんだ? 



 


────────

お待たせしました、34話の更新です。


無事体調は良くなりました。ご心配をお掛けしました。


ついでに調子に乗ってカクヨムコンに登録はしましたが、10万文字書ききれるかな?と正直不安ではあります。

まぁ間に合わなかったら間に合わなかったで自分の好きな物を書いてるだけなので構わないと思っていますし、今後もまったりとお付き合い頂ければ幸いです。

今後とも拙作をよろしくお願いいたします。

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