第4話 眷属ガチャ


 能力とは。

 向こうの異世界では、誰もが一人一つ持っていたスキルみたいなもんである。


 「地球では全員じゃないんだな。大体1000人に1人か」


 まあ、向こうとは総人口が違うからな。

 こっちで全人類が能力持ちなんかになったら、絶対管理しきれないだろう。

 善人だけが、能力者になる訳でもないし。


 「そうすると、選民思想な人間が出て来る訳だが」


 絶対いるよね。

 俺は選ばれた存在だーって奴が。

 会ったら絶対面倒くさそう。


 「ふむふむ? 15歳になると急に使えるようになるのか。これは向こうと一緒だな。あっちは15歳で成人だったけど、こっちはやっぱり20歳までは未成年扱いなんだ」


 国によりけりって感じだけど。

 日本はそうらしい。


 「能力が発現すると、そのまま能力者学校に行くのが普通か。あ、探索者になる気のない人は行かなくてもいいんだ。能力もピンキリだからなぁ」


 攻撃能力があれば探索者を目指すのもありだろうけど。

 裁縫とか、交渉とか色々あるからなぁ。

 そういう人向けの学校はないっぽい。

 あくまで、探索者がなる人が行く学校なのか。


 生産向けの能力者用の学校も絶対作るべきだろ。

 魔法科学とやらの発展には不可欠だと思うが。

 そこまで余裕はないのかな。


 「俺の憑依はズルいからな。ランダムって言ってたけど、これが無かったら絶対に魔王を倒せてなかったぞ」


 因みに、俺は能力を二つ持っている。いや、こっちに来た時に意味の分からない能力が増えてるから三つだな。

 この世界では完全に異端者だろう。


 「いや、向こうでも結局能力二つ持ちは見かけなかったから結局か。まぁ、転移者特典ってやつよ」


 もう一つの能力は機会があればお披露目しよう。

 憑依だけでも十分だから使う機会はないかも知れないが。


 「問題はこっちに来た時に新しく増えた能力だよなぁ」


 眷属ガチャとはなんじゃらほい。

 ガチャなんて言葉久々に聞いたぞ。



 「やべぇだろ、これ。一種の生命創造じゃん。神しか扱っちゃいけないやつだろ」


 地球の女神にどうにか連絡出来ないのか。

 これは果たして唯の人が得ていい能力なんだろうか。

 こんなふざけた能力が地球にはいっぱいあるのかな?

 それで対応に困ってるって、地球の人間弱すぎない?

 向こうの人間の方が万倍強いぞ。



 眷属ガチャとは。

 一年に一回という制限はあるが、文字通りガチャで眷属を生み出す。

 魔物は出てこないらしく、人間が出て来るらしい。

 しかも、能力持ちの人間が必ず出て来るという破格な感じで。

 俺を裏切ったりはしないらしいが、忠誠を誓うとかそんな感じではないらしい。

 友達的な? え? 友達ガチャ?

 俺はガチャを使わないと、友達も出来ないと思われてるって事ですか?


 「本当にいいの? 俺はガチャしちゃうよ?」


 あのポンコツ姉妹女神の事を考えるとうっかりなんてのもありえるんだが。

 本当にやっちゃうからな!!


 と、いうことで眷属ガチャスタート。

 目の前にコンビニとかに置いてありそうなガチャガチャが出て来た。

 マジでガチャじゃん。

 こっから人間が出てくるんでしょ?

 なんか物みたいで嫌なんだが。


 ちょっと嫌な気持ちになりつつ、レバーを回す。

 ガラガラと音が鳴り、カプセルが出てきた。


 「これ、開ければいいの? マジで物じゃん。玩具じゃん」


 神とはなんて傲慢なのか。

 こんな玩具みたいに人を創造するなよ。

 そんな事を思いながらもワクワクしてる俺がいるんだけど。

 では、パカっとな。


 「んえ!? 眩しい!」


 カプセルが光に包まれて、俺は思わず目を閉じる。

 目を開けると、光は人サイズの大きさになって、やがて収まる。


 「どもども〜。八重桜って言います〜」


 「え? あ、はい。どうも」


 カプセルから出て来たのは、金髪でピアスを付けて、アクセサリーもいっぱいつけてるギャルだった。

 それでいてけばけばしい化粧をしてる訳でもなく、なんていうの? ナチュラルメイク? なのに、綺麗な感じ。


 手にはギャルには似合わない、銀のアタッシュケースを持っている。

 それはなんなんだい?


 「これ、あたしの個人情報ですね〜。戸籍やらなんやらと用意してあります〜」


 「いやいや、待って! お前は一体どういう存在なの?」


 「普通の人間ですよ〜。戸籍上は20歳ですけど〜生まれたてホヤホヤです〜」


 「いや、そうじゃなくって…」


 「そうとしか説明出来ません〜」


 ふ、ふむぅ。

 俺が気にしすぎなのか?

 いやいや、目の前で人間が作られたら気にするよね? 俺は間違ってないと思うんだ。


 「とりあえず…とりあえずは分かった。で、八重桜? は、俺の事は知ってるのか?」


 「あたしは八重が苗字で桜が名前ですよ〜。桜って呼んで下さ〜い。天魔さんの事は大体知ってますよ〜。なんかインストールされてる感じです〜。後は世間一般の常識も一通り〜。これからは天魔さんと行動すれば良いんですよね〜?」


 「いや、別に無理に一緒にいて貰わなくても大丈夫だけど。何かやりたいならそっちを優先していいぞ」


 「そうですか〜。あたしは何がやりたいのか良く分かりませんし〜。とりあえずは一緒に行動させてもらいますね〜」


 って事は何もなかった部屋の一つは桜の部屋にするか。

 住所とかはどうなって…あ、ここになってるんですね。


 「ギャルと二人暮らしか。捕まったりしないよな?」


 「どっちも成人なんですから大丈夫ですよ〜。なんなら早速一緒に寝ちゃいますか〜?」


 桜がニヤニヤしながらからかってくるが、俺は女神と一戦を交えて勇者になった男。

 そんな安い挑発にはのってやりません。


 「そうだな。まずはシャワーからか?」


 「きゃ〜。ケダモノ〜」


 桜は笑いながら体をよじらせて、いやんいやんしてるが、残念ながら俺はその気である。

 勇者といえども男。

 性欲には簡単に支配されるのである。

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