【第三章:仲間(3)】
田中洋一の
その場所に田中洋一たちが
その様子を見た真中しずえは、「あんたたち何してるの?」といきなり大きな声を出し、ずかずかと酒見正と一ノ瀬さとしに向かって歩いていった。
そんな真中しずえの様子を、田中洋一はオロオロしながら
「なんだ、またお前か」と、真中しずえが
「何が遊んでる、よ。
「また、ってどういう意味だよ。」
「あなたたちの
「悪事?」
「悪いことをしたってことよ。」
「悪事の意味くらいは知ってるよ。バカにすんな。」
「あら、そうだったの?
真中しずえが酒見正をからかって『フフッ』と笑うと、一ノ瀬さとしが
「おい、あんまり調子に乗んなよ。」
「調子に乗ってるのはどっち?あんたたちが調子に乗って羽加瀬君に
「誰が困ってるんだって?羽加瀬は俺たちと遊びたいって言うから一緒に遊んでるだけだ。」
「よくそんなウソが言えるね。」
「ウソじゃねーよ。おい、羽加瀬、お前からもきちんと
羽加瀬信太は下を向いたまま何も言わない。
「おい、羽加瀬、聞いているのか?」と、今度は酒見正が羽加瀬信太の
「
「おい学級委員長、気をつけな。一ノ瀬君は空手の
「ふん、なによ、女子にも暴力をふるうっていうの?カッコ悪いわね。空手だか何だか知らないけど、自分より体が小さかったり力の弱い女の子に向けてしか
一ノ瀬さとしをにらみながら強い
その様子を見て田中洋一は何か行動を起こさなきゃと思ったが、その
田中洋一は「あっ」と声を出し真中しずえから
しかし、予想していた出来事は起こらず、
一ノ瀬さとしの右のパンチを、沢木キョウが左手でブロックしていた。
「てめえ、何すんだ」と
「おい、俺の話を
「女性に手をあげるのはよくないと思うよ。」
「じゃあ、お前にだったらいいんだな。
「やめた方がいいと思うよ。」
「もう
「いや、それは違うと思うんだけど。」
「どっちでもいいだろ。
「後悔するのは君だと思うよ。」
「ふざけるな!」と
その手刀は一ノ瀬さとしに当たるギリギリのところで止まった。
その状況にさらに一ノ瀬さとしは怒り、今度は右足で沢木キョウの
一ノ瀬さとしの身長は沢木キョウよりも10cmくらい高かったが、そんな身長差があるにもかかわらず、沢木キョウの右足の
「これ以上やっても
「別に何でもないよ。僕もアメリカにいるときに空手をやってたんだよね」と、一ノ瀬さとしの
「うん、たしかに空手は日本で生まれた
「お前、ベルトの色は何色なんだ?」
「ベルトの色も日本とアメリカでは違うし、アメリカの中でも
「く、黒帯・・・の二段?」と、さっきよりもさらに元気のない声で酒見正が言った。
「僕はたまたま運が良かったから、みんなより少し早くブラックベルトまでいけたけど、頑張り続ければみんなもいずれは黒帯までいけるよ。一ノ瀬君もあと少しなんでしょ。でもね、僕の
沢木キョウは最後は少し強い口調でそう言ったが、一ノ瀬さとしは「うるせえ!」と、また攻撃的な口調でが
「What you learn should be used to defend yourself and your fellow students, and should never be used to attack others or to do bad things in an abusable way」
沢木キョウが急に英語を話し出したので、一ノ瀬さとしは
「空手の教室で習ったことは自分や仲間を守るために使うべきで、決して他人をいたずらに攻撃したり悪いことに使ってはならない、って意味ね。沢木君が通ってた空手の教室にあった『守るべきルール』と言ったところかしら?」と、空木カンナが突然会話に入ってきた。
その状況にはさすがの沢木キョウも少し驚いたらしく、空木カンナの声がする方を向いて、「空木さん、いつの間にかにいたんだね」と、少し苦笑いをするような表情になりながら声をかけた。
空木カンナは
「みんなの様子が心配になっちゃったから、立花先生を連れてきちゃった。で、
そして次に、立花美香は一ノ瀬さとしたちの方を向いて「暴力はいけませんよ。みんな同じクラスのお友達でしょ。仲良くしましょうね」と笑顔を浮かべたまま優しい口調でそう
しかし、田中洋一には、その目には冷たい光があるのが感じ取られ、少し怖い気持ちがした。一ノ瀬さとしと酒見正も、沢木キョウの空手の技や英語、それに急に先生がその場に
「ふうー。あーよかった。
「しずえちゃん、
「え、カンナ、あのあたりから見てたの?」
「うん、立花先生と走ってきたから、しずえちゃんが一ノ瀬君に話してる内容も聞いてたよ。」
「じゃあ、私が殴られそうなの
「もう!」
「
と、手にした
「これ、保健室にあったから立花先生に
「そうだったんだ。でも、沢木君すごかったね。空手やってたんだ。あの一ノ瀬君が手も足もでなかったもんね。」
「たまたまだと思うよ」と、沢木キョウは、真中しずえと空木カンナの会話に加わる。「一ノ瀬君、
「そうなのかなぁ」と、真中しずえは
「う、うん、大丈夫。みんなにまた
「え?またってどういうこと?」と、真中しずえが聞くと、「えっと・・・それは・・・」と、羽加瀬信太は何て答えるべきかと言い
その様子をみて、「今朝のことかな?」と、空木カンナが助け舟を出すと、「え・・・あ・・・う、うん」と、羽加瀬信太が返事をした。
すると真中しずえは、「あ、あれのことね。全然迷惑じゃないわよ。私たち、同じ科学探偵クラブの仲間じゃない!」と元気よく言った。
「あ、ありがとう・・・」と答える羽加瀬信太に笑顔で答えた真中しずえは、「でも、あの二人には困ったものね。まあ、さっきの様子なら、もう羽加瀬君にはからんでこないんじゃない?こっちには強いボディーガードもでいるんだし」と、真中しずえが沢木キョウの方を向いてそう言った。
「いや、だから、そう話は
「いや、でも、僕もキョウ君と同じ考えだよ。さっきあの二人がここを離れるとき、一瞬だけど酒見君はすごい目でこっちを
「またまたーみんな
「こらこら、女の子だって暴力はダメですよ」と優しく立花美香がたしなめると、「あ、先生がいたんだった。今のはウソでーす。聞かなかったことにしてください」と言って、みんなの笑いを
「はいはい。じゃあ、そろそろお昼休みも終わるし、みんな教室に戻ってくださいね。あ、空木さんは私と一緒に来てね。
そして、その日の午後の授業および放課後も何事もなく時間が過ぎていった。しかし、次の日の朝、再び教室内で問題が起きるのであった。
***
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