第36話

アガルタ王都ダンジョン第3層の攻略を終え、王都まで戻った俺たちは攻略の報告をするためギルドに寄った。

「あ、ヨウイチさん!攻略から戻られたのですね!」

「はい。第3層のボスも倒してきました」

「え!?もう倒してきたのですか?」

「はい。第3層のボスはオークキングでした」

「・・・なるほど、それでお戻りになられたのですね!それで、本日の用件は・・・」

「えっと、攻略の報告と、ドロップアイテムの換金、マップの提出ですね。」

「わかりました。では、ギルドカードを提出ください。」

「はい。」

「ではお預かりします。あぁ、ヨウイチさん、ギルドマスターが何やら用事があるらしいので、ギルドマスタールームまでお願いできますか?」

「えっと、何かありましたか?呼ばれるようなことはしていないと思うのですが・・・」

「いえ、それが・・・ヨウイチさんにお願いしたいことがあるとかで・・・。」

「・・・わかりました。嫌な予感しかしませんが、ギルドマスタールームに行きます。」

「ありがとうございます。」

嫌な予感がしながらも、ギルドマスターにはお世話になっているので、向かうことにする。

「みんなは家に戻って休憩していていいよ。お疲れ様!」

「ヨウイチくん、何かあったら呼んでね!お疲れ魔でした!」

「お疲れ~」

皆と別れた俺はギルドマスタールームに向かった。

コンコンッ!

「入っていいぞ!」

「失礼します。」

中から声がしたので、俺は中に入った。

ガチャッ!

「ヨウイチ、ダンジョン攻略、お疲れだな!調子はどうだ?」

「お疲れ様です。調子はいつも通りですね。特に問題なく進めています。」

「そうか・・・それはよかった!それで、早速本題だが・・・」

ギルドマスターが何やら言いづらそうにしている。

「・・・何かありましたか?」

「・・・実はだな、王都のカイ宰相からヨウイチを臨時の講師に招きたいと通達があった。」

「・・・・・・・・は?」

俺はギルドマスターの言っていることが全く理解できず、呆けてしまった・・・。

「えっと・・・どういうことですか?」

俺はギルドマスターに聞き返した。

「それがだな・・・カイ宰相がヨウイチのことを推薦したらしいんだ。国王も結構乗り気らしくてな・・・」

「・・・え?なんでですか?」

(いやいや、意味がわからない!そもそも俺なんてどこにでもいる普通の冒険者だぞ・・・)

「ん~前に王城の召喚者のうち3人がお前と決闘しただろ?それを文句を言うために王城の奴らには伝えてあるんだ。」

「ええ、それは当然だと思います。」

「でだ、お前が3人相手に完勝してしまったから、その差が歴然となってしまったわけで、それが王城に伝わったと。」

「まぁ、それは事実なので仕方ないですが・・・」

「それでな、王城にいる連中と、追放した6人に一体どんな差があるのか・・・という議論になったわけだ。」

「なるほど、それで俺が講師として呼ばれることになったわけですね。」

「そういうことだ。まぁ、お前にとっては王城にいる召喚者に快い感情はないだろうが、いい経験になると思うから、引き受けてみてはどうだ?」

(う~ん・・・確かにいい経験にはなるだろうけど・・・)

俺は少し考えたが、クラスメイトの一部の事は快く持っていないが、特に断る理由もないので了承することにした。

「わかりました。では講師の件は引き受けます。」

「おぉ、そうか!それは助かる!」

「ただし、ダンジョン先行権があと2週間程度残っているので、それが終わってからです。」

「あ~・・・やはりそうなるよな。わかった、王城にはそのように連絡しておく。」

「ありがとうございます。」

「他に王城の連中に言っておきたいことはないか?」

「ん~、事前に報酬だとか取り決めをしておきたいです。」

「あぁ、それはそうだな。あとでカイ宰相には伝えておこう。」

「よろしくお願いします。」

(はぁ・・・まさか講師をやるとは思わなかったな・・・。でもまぁ、王城のメンバーのステータスを確認できるだけでもありがたいか・・・)

少しだけ憂鬱になりながら、会えていない他のクラスメイトに会うのも少しだけ楽しみなヨウイチは家へと帰った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


家では帰宅した5人とメイドが集まってヨウイチのことを話していた。

「ヨウイチくんがギルドマスターに呼ばれたのはなんでだろう?」

「そのことですが、王城にいるメイドたちから聞いた話ですと、ヨウイチ様と決闘した3人の話で盛り上がっているみたいですよ。」

「え、なんでかな?」

「メイドネットワークによると・・・」

(((((メイドネットワーク!?!?)))))

「どうやら決闘した3人はその後、相応の罰を国王様から命令されたらしく、今ではその罰をする度に落ち込んでいっているのが目に見えてわかるので、その3人に何があったのか知れ渡るようになったとか。そして、3人は態度も横暴だったこともあり、ヨウイチ様には感謝しているメイドもいるらしいです・・・」

「なるほど・・・それで、ヨウイチくんの話題が出たのね。」

「はい。メイドネットワークによると、ヨウイチ様が同じ召喚者で王城から追放されていたことも話題となっていて、メイドの中で時の人となっているようです。」

(((((メイドネットワークって一体・・・)))))

「そして、冒険者ギルドで活躍し、かの冒険者メイ様とも懇意にされており、国王から追放した謝罪と報酬を与えられたこともメイドの中では知らない人はいないです。絵姿も密かに回っているみたいですよ。私たちの所にもヨウイチ様について教えてくれと話が来ています。」

(((((メイドネットワーク凄いけど怖い・・・)))))

「さらに、ヨウイチ様が国王と謁見した姿がかっこよかったとかで、メイドたちの妄想は加速しているみたいです。」

「えっと・・・つまり、王城の人たちはヨウイチくんのことを恨んでいないってこと?」

「はい。メイドに限りですが、むしろ感謝している方が多いようです。」

「それと今回のギルドマスターの話とどう繋がるのかな?」

「それについてですが、どうやら国の上層はヨウイチ様の強さの秘密を調べるために、ヨウイチ様を王城にいる召喚者の講師として雇うとの噂が流れています。」

「え、講師?」

「ええ、元々はステータスが低く、職業も戦闘職じゃないヨウイチ様が今では王城の召喚者の中でも上位の強さを誇る3人に完全勝利してしまった事に興味を持たれたらしいですね。それで強くなった理由について他の召喚者に講義をしてほしいと。」

「あ~なるほど・・・それは以前話してくれた『実戦経験が少なく実践慣れしていない』に繋がっているねぇ・・・」

「そうですね。王城の上層部はそんなこともわかっておらず、何か秘密があるはずだと調べているみたいです。」

「あ~・・・確かにヨウイチくんって強さに謎が多いもんね・・・」

「でも、それだとヨウイチくんは確実に王城に呼ばれるってことだよね?」

「・・・そうですね。そうなったら、私もメイドとしてお傍にいるため付いていきます。」

「え、ちょっと待って!あなた勝手に決めないで!メイドとしてなら私も行きたいのだけど!」

「2人共付いていったら、その間、家の管理する人がいなくなるではないですか!」

「よろしい・・・では戦争だ!」

(((((なんかメイドさん2人が怖い・・・・!!)))))


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る