第30話 六つは開けすぎ


 ピアス開けたいんだよね。事の発端は、スマホを弄りながら放った言葉だった。言った本人、つまりは私ですら言ったことを覚えていないくらい、何気なかった。

 その一週間後、覚えのない宅配が届く。覚えのない訪問者は出ないと決めている私だが、ちょうど新しい靴を頼んでいたので、それだと早とちりしたのだ。だが業者から渡されたのは、なんだか小さなダンボールだった。

 差出人には君の名前がある。心臓が跳ねた。サプライズなんて嬉しいじゃない。

 ところが、中から出てきたのは五つのピアッサーだった。何を隠そう、耳にピアスホールを開ける器具である。それも五つ。え、五つ?

 耳というのはそこまで大きな部位じゃない。それなのに、五つも穴を開けて良いものなんだろうか? よくよく見たら軟骨用、という空恐ろしい響きのものもある。そういえば君は、耳の上の方にもピアスをつけていた気がする。

 私は自分の耳の上部分に触れてみる。コリコリしている。

 怖いので軟骨は開けない。君は電話越しに残念そうだった。

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