第16話 あんな奴やめときなよ


 私に愛があるなら、これがそう。

 昔から誰が好きとか、そういう話についていけなかった。単純によくわからないのだ。上手く想像もできない。

 渡る世間はなんとやら、とは言うけれど、なんだかんだ人には「相手にとって良い人でありたい」とか、「よく思われたい」という本能がある気がする。何を言いたいのかと言うと、みんな私に気を遣って恋バナをしなくなった。

 それは君も同じだったらしい。あるとき、共通の知人を通じて、君の好きな人とやらを知った。その時の私の相槌の杜撰さと言ったら! やっぱり興味無いか、なんて友達から苦笑いされた。

 ああ本当に。興味なんてない。君の好きな人なんてどうでもいい。

 それから私は、それとなく君を観察する。私と君は暇さえあれば一緒に居たものだから。

 君の好きな人に恋人ができたらしいけど。君はどう思う? そもそも知ってる?

 君はいつもと変わらない。何を考えているのか、よくわからない。

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