第15話浪詩戦

さーて、治癒の能力はかなり厄介だ。

どうする?正面突破じゃ実力差でやられるだろうし、だからといってさっきみたいにチマチマやってたら体力実質無制限のあいつの方が有利だし


『神威よ、良いことを教えてやろう』


「いい事?」


『世の中には、努力してもどうにもならんこともあるんじゃ』


コノヤロウ諦めやがった。


『こういう時は、正攻法じゃ!』


「いーや、何させる気!?」


『一撃で仕留めれば解決じゃ!!』


椿は、オレの身体を引っ張って真正面から浪詩に突っ込んでいく。

正攻法じゃ無理だって!!


「おまえ最近オレの扱い雑ぅぅぅ!!!」


出来れば勘違いであって欲しい、たまたま雑に扱ってるように見えるだけだよね?


『安心せい!せめて相打ちにしてやるからのぉ!』


「おんまえ!オレの命諦めてるだろ!!!」


『諦めておらぬ、神威が死ぬ時は妾も死ぬ時じゃ』


ワーイ、地獄の果てまで一緒だぁ…

オレの意思を完全無視して、椿は技の構えをとらせる。


「この構え…」


『察したか、ならばやるぞ神威よ』


「マジ!?」


オレと椿は、前に突進しながら、大きく刀を振り上げた。


「『桜華流、枝垂桜!!!』」


「くっ!」


ガキィン!と、椿と浪詩の刀がぶつかり合い、オレと浪詩は鍔迫り合いとなる。


「この威力…」


『うむ、前より威力が上がっておるの、修行の成果じゃ』


「いや、止められてますけど!?」


『止められたなら別の技があるじゃろ』


「あ、そっか」


オレは左手を刀から離し、右手で刀を持ったまま浪詩の刀を持ってる手首を抑え、その場で自身の身体を大きく捻る。


「なっ!」


「『桜華流、ぜんまい』」


ズバァ!!


オレは、浪詩の胸を狙ってを切るが、浪詩は身体を反らせて致命傷を避けた。


「ぐぁぁっ!!…ふぅぅぅ」


『チッ、あやつ、回避に長けておるのぉ』


舌打ちするんじゃありません、はしたない。


「回避に長けた治癒能力って相当ジリ貧になりそうじゃね?」


『安心せい、治癒には長けてはおるが、攻撃力はあまりない、攻めて攻めて攻め続ければ勝機はあるぞ』


「それ、オレのスタミナの計算してる?」


『フッ、安心せい、お主を信じとる』


してないのね、うん、分かってたけどさぁ。


「はぁっ!!!」


「『!!』」


オレ達が会話をしてる間に、やっこさん突っ込んできやがった。

刺突しとつ唐竹からたけ、持ち変えて左切りあげ、首オレのを狙って右薙ぎ、たった一つの動作から次々と攻撃が繰り出されてくる。


「ぎゃぁぁぁ!!!」


『悲鳴をあげながらかわしきっとる…』


オレの行動を見た椿が、呆れたような、なおかつ感心したような声で、コメントしているが、それどころじゃねぇっつの!!!


「やるな小僧、ならこれならどうだ」


浪詩が小太刀を床に突き刺すと、床に大きな亀裂が走り、オレの足元がパックリと割れた。


「ファッ!!?」


『まずい!!』


椿がオレの身体を操って、何とか地割れから逃げ出す。


「あっぶねぇ…」


『ギリギリじゃったのぅ』


「まだだ」


浪詩は更に床に小太刀を突き刺し続け、地割れを連発で起こしてきやがった。

それをオレは必死こいてかわし続ける。

ここラウワンだよ!!?そんなに壊すんじゃありません!!!損害賠償はあいつに押し付けてやる。


『というか、床に刀を突き刺しただけであんなに床が割れるものでは無いと思うんじゃが』


確かに、オレがやってもこうはならないよなぁ


「なんでこんなことできるのかって顔だな」


おっと、顔に出てた?


「タネを教えてやろう。オレがやったのは物の核を突いただけだ」


核?角…カクカク?


「物の核を突くと加えた力の倍以上の破壊力が出るんだよ」


『なるほど、それであの地割れか、納得じゃ』


すんません、オレは納得できてねぇっす…何一つ分からないっす。

気がつけば、オレの周りは地割れのせいで動ける所がほとんど無くなっていた。


「やっべ」


『神威!来るぞ!』


「来なくていいってぇぇぇ!!!!」


これだけ動ける幅がないところで、距離を詰められると…圧倒的にオレの方が不利だ。


『神威、桜華流の真髄はあらゆる状況に対応した多種多様の技にある。まだお主に教えてはなかったが、妾が見せてやろう』


「え?なに?新技?」


『そうじゃ』


オレは高く飛び上がり、刀を下に向けて突き刺す構えをとる。


「『桜華流、鬼灯ほおづき』」


「なっ!!?」


オレは椿を、浪詩の突き出した刀をかわして腕目掛けて空中から落下しながら突き刺した。


「ぐぁぁぁぁ!!!!」


『成功じゃな』


これは、アレだ!!


「突き刺し版!飛天御剣流、龍追せ『違う』最近誰も最後まで言わせてくれない…」


『早く追撃せぬか!』


あ、そうだった。


オレは椿を引き抜きながら、浪詩の顎を蹴り上げる。


ドガァっ!!


浪詩は踏ん張りを効かせて、吹き飛ばされる身体を支える。


「ここまでしたのにまだ終わらねぇのか」


『じゃが、かなり追い詰めたじゃろう、回復される前にトドメじゃ!』


「おう!」


オレは足場が悪い中、何とかやつの下にたどり着こうと動き出す。


「くっ…くくくっ」


オレが浪詩の所に向かいながらやつの顔を見ると、何故か不快な笑みを浮かべていた。

え?なに?あのボロボロの状態で笑ってんだけど、こわっ


「お前は勘違いしてるみてぇだな」


は?勘違い?


「オレの刀、時奈ときなの能力は治癒じゃねぇ」


時奈?…トキ…ナ…トキ…まさか!?


そこでオレは、ようやくやつの刀の能力を理解した。

やつの能力は治癒じゃない、時間を操るんだ!!


『まずいぞ神威!あやつの能力は治癒ではない!』


椿も気づいたようで、オレに警戒の指示を出すが、一手遅かった。


「あぁ!オレも理解した!!」


「オレの刀で触れたり壊した物の時間を戻すことができるんだよ!!」


そう言って、浪詩の刀が光ると地割れした床が元に戻り、オレの片足を巻き込んで元に戻った。


「げっ!!オレの片足が床に埋まった!!?」


『しまった!!』


片足が埋まって動けないオレに向かって、浪詩が立ち上がり飛び出してきた。


「オレの勝ちだ」


「!!」


ズバァン!と、オレの身体はやつの小太刀に切られた。


「がはぁっ!!!」


『神威!!!』


「やばっ…これは…死ぬ…」


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