第13話2人の敵

あれから1ヶ月と少し、椿も学校に慣れてきたのか、少しづつ友人も出来てなんだかんだ楽しんでいるようだ。


一方オレはというと、


「いでででで、筋肉痛がまだ響く」


毎週日曜に行われる椿のスパルタ教育のせいで筋肉痛が未だに治まらず机から動くのも大変だった。


「また筋肉痛か?八九師ぃ」


「ここんところ毎日だな」


佐竹と上原はいつも通り、オレの所にやってきては筋肉痛のオレの身体をツンツンとつついて面白がっていやがる。


「これでもだいぶ動けるようになったんだよ。最初なんて動けないどころか起き上がれなかったんだからな」


「確かに、お前が椿ちゃんに背負われて登校してきた時は驚いたな、ププッ」


「しかも、椿親衛隊にしっかり制裁を加えられそうになってたしな、ブフォッ」


笑いを堪えきれず吹き出す2人、そう、トレーニングが始まった次の日、オレはいつの間にか構成されていた椿のファンクラブ、

通称 椿親衛隊に危うく制裁を加えられそうになっていた。

その時は、椿がひと睨み効かせてくれたおかげでなんとかその場は治まったが、またいつ何が起こることやら。


「うるせぇ、お前らにはこの辛さは分からねぇよ」


だが、なんだかんだと椿の特訓のおかげで、桜華流をオレ自身で使えるようになってはきていた。

まぁ、椿に比べりゃ月とスッポンだけど


「八九師くーん!呼び出しだよー!」


教室の出入り口に視線を向けると、女子生徒がオレを呼んでいた。おっと告白か?モテる男はつらいねぇ。


ギロッ


という冗談は口にしないようにしよう…椿の視線が超怖い。

それによく見ると、呼んでいるのは女子生徒の子じゃなくて、その後ろにいる里見先輩のようだしな。


オレはゆっくりと席を立ち上がり、里見先輩の所に行く。


「八九師、今後の事だが…大丈夫か?」


「ういっす、ただの筋肉痛っす」


「そうか、ひとまずついてこい、例の話しだ」


オレは里見先輩について行き、別教室の前に来ていた。


「ココ最近、変なやつがうろついてる噂は聞いてるだろ」


「あー、そういやホームルームで灰人が言ってましたね」


「恐らくだが、そいつらは刀を持った連中だと思う」


おっと、また意外な所から刀の話しが出たな。


「どうして刀だと?」


「それっぽい武器みたいなのを見た人物がいるらしい。あくまで噂だが、警戒するに越したことはないだろう」


なるほど、そんなに物騒なら椿に頼んで先に倒しに行ってしまうべきか?


「言っておくが、倒してしまおうなんて下手な考えはやめておけよ」


エスパーっすか…?なんでオレの考えた事わかるんだこの人。


「お前、顔に出やすいな」


そんなに!?

オレは顔をペタペタと触って、表情を確認する。


「触ってもわかんねぇだろ」


「うっす…」


「まぁ、とにかく出歩く時は気をつけろ、何があるか分かんねぇからな。なるべく刀と共に行動すべきだな」


里見先輩は話終えると、そのまま自分の教室へと戻って行く。

先輩からの警告ってところか


オレはクラスへ戻り、椿に諸々の事情を話した。


「で、どうする?椿」


「どうするも何も、神威の為じゃ、妾は、どこにでも付き合うぞ」


ほーんと、こーゆー時はオレの為に動いてくれるのはありがたい。感謝すべき所だな。

問題は…ズキズキと痛むこの筋肉痛だけだな。

それから授業が終わってオレ達は帰ろうと支度をする。


だがそこに、ガシッとオレの両肩を掴む2人、佐竹と上原が笑顔でオレの顔を覗き込む。


「今日は付き合えよ?八九師くーん」


「いつまでもイチャコラしてんだから、たまにはオレらに付き合えや」


「What!?」


「ちょっと待ってください」


2人に連れていかれそうになるオレを、椿が引き止めてくれた。なんとありがたい!今日は寄り道せずに帰らないと、


「つ…椿さん!」


「私もついて行きます」


「椿さん!!?」


何言ってんのこの人!!?


椿はオレに、耳打ちで話しかける。


「安心せよ。妾が一緒にいれば何も問題あるまい?」


だからオレ、筋肉痛なんだって…お前楽しみたいだけだろ。


「さぁ、行きましょうか」


「「よっしゃぁぁぁ!!!」」


先導して教室から出ようとしている椿に、2人はオレの両脇を抱えて喜びながら引きずって行く。

…オレの意思は?


「どこに行くよ!なぁ八九師?!!」


「帰りた「ラウワン行こうぜラウンジワン!」聞いてる?」


オレは、引きずられながらもラウワンに連れていかれた。


そして現在、ボーリングなうのオレ達はというと…


パッカーン!


「おっしゃ!ストライク!!」


「わぁー!凄いですね!」


「椿ちゃん惚れた?オレに惚れちゃった?」


「いえ全く」


「はっきり言うなぁ…」


ストライクをとって調子に乗った上原だったが、椿の一喝で一気にテンションを落としていた。


「ほら、次は椿ちゃんだよ。頑張れぇ」


「ピン壊すなよ?」


「なんの心配!?」


椿は玉を持つと、構えてピンに視線を向けた。


「せーのっ!」


椿の投げた玉は、真っ直ぐとピンに向かって一気にピンを倒した。


パッカーーン!!


「「おぉーー!!」」


「さてと…」


オレは、立ち上がって席を離れる。


「お?どこ行くんだ?八九師」


「便所」


オレは便所から手を洗って出ると、目の前に背丈の高い長身の男が立っていた。


「アンタ…誰?」


「お前だな?」


は?何この人?気持ち悪い。


「よぉ」


「!?」


気がつけばオレの後ろにも、もう1人の男が立っていた。


「また変なのが出た」


「ちょっとツラ貸せや、オレ達はお前に用があるんだよ」


「オレは無いので失礼します」


カチャッ


オレの目の前に、布で巻かれた長い棒のようなもので道を塞いでくる。

どー見ても刀だよなぁ、ここで争う訳にもいかねぇし、困った。


「行かせねぇよ?まぁついてこい」


オレは2人に連れられて屋上へと向かい、外の広い場所へと出てきた。


「とりあえず、お前は斬るぜ」


決断早ぇなオイ、まだ何もしてないんですけど。


「オレの刀がお前達2人を危険視してるんだよ。だから斬る。それだけだ」


とりあえず理不尽なことだけは分かった。よしっ、逃げるか


オレは、どうにか逃げようと前と後ろを確認する。うん無理、出入り口塞がれてる。


「となると後やれる事は…」


刀を持ってる長身の男より、明らかに持ってないニット帽を深く被った男の方がまだ逃げれるか。


オレは、ニット帽を被った男に向かって走り出した。


ニヤリ


「!」


ズバッ!


!切り傷っ!?


オレは腕に切り傷を付けられ、慌ててその男から距離をとった。


男は懐から取り出したのか1本の小太刀を左手に携えていた。


「刀が見えないイコール持ってないとは限らねぇ、油断したな」


ドクドクと血が流れる腕を見て、持っていたハンカチで腕を縛って血を止める。


「安心しろ、傷は浅い。だが次は切り落とす」


「ヒッヒッヒ、やるだろ?そいつ、オレの次には強ぇぜ」


いや、おめぇの次とか言われても基準が分からん。


「神威!!!」


オレが困っていた時に、椿がやってきてくれた。さすが相棒。


「椿!!!」


「チッ!女から斬れ!真幸まゆき!」


ヤバイ、あの小太刀男、オレと椿が契る前に椿から仕留めるつもりか!!!真幸とかいう名前の長身の男に指示を出しやがった!!


「来るな椿!!!」


だが、オレが声を掛けた時には、椿はオレの下に走り出していた。


「嫌じゃ!!妾は!お主と共におる!!」


あんのボケ!!ここでオレに突っ込んできたら格好の的じゃねぇか!


椿がオレの所に向かってくることを察したオレは、椿の下に走ろうとするが、小太刀男がオレの前に立ち塞がる。


「おっと、お前の相手はオレだぜ?」


「ぐっ…」


そして、真幸が布を解いて刀を取り出し椿に刃を向ける

刀は薙刀、かなり厄介そうな代物だ。


「死ね」


ガキィン!!


「!!」


真幸の薙刀が椿に触れる直前、薙刀を止めてくれた人物がいた。


「探すのに手間取ったぞ、八九師」


「先輩!!」


「ったく、あれだけ気をつけろっつったのによ」


いやぁ、ほんとすんません。


「それじゃ」


先輩は、椿の襟を春華さんで引っ掛けて釣り上げる。


「え?」


「行ってこい」


ブォン!!


「キャァァァァ!!!」


「椿さぁぁん!!?」


先輩は、椿をオレに向けて放り投げた。


「させん!」


「いーや、やらせてもらう」


真幸が空中にいる椿を狙うが、それを先輩が防いでくれた。


「チッ」


「甘いな、おっさん」


「神威ぃぃ!!受け止めとくれぇぇ!!」


「おぉぉ!!了解!!」


ガシッ!と椿を受け止めて、床に倒れる直前に椿を刀にした。


「ふぅ、これで対等だな」


『やろうぞ神威、修行の成果を見せる時じゃ』


小太刀男が、オレに視線を向けて小太刀を構えた。


「ちっ、まぁいい、計画は狂ったが、テメェは潰す」


———————————————————————フォロー、応援、コメント等よろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る