第10話能力

能力とはなんぞや?


そう思ったオレは、構えをといて先輩に聞いてみる。


「先輩、能力ってなんすか?」


「はぁ?お前知らずに使ってたのか?」


先輩も気が抜けたのか、構えをといて説明してくれる。

なんだかんだでちゃんと教えてくれるところは好感が持てる先輩だ。


「契りをかわした刀はな、ある程度のお互いの信頼関係を築けていると、特別な他の刀とは違う力を使うことが出来るんだよ」


斬魄刀じゃん、え?椿ってそんな特別な力あるの?


「そうなのか?椿」


『い…いやぁ、妾もその辺はあまりよう知らぬ…』


あ、ダメだわ、椿はガチで知らなそう。


「お前らは無意識に使ってたようだが、刀が勝手に持ち主の身体を動かしてくれると思うか?あんな使ったこともなさそうな流派をいきなり使えると思うか?」


た…確かに、言われてみればそうだ。

普通オレが桜華流を使おうとしたらおそらくだが、型がめちゃくちゃになるだろう。

一重に椿が、オレの身体を動かしてくれなければ出来ていないハズだ。


「オレってすげぇ」


『いや、べつに神威は何もしとらんぞ?』


少しくらい余韻に浸らせてくれや、オレもそんなの憧れてたんだからよ。


「当然オレ達も能力が使える。察してはいるだろうがな」


でっすよねぇ〜何されるんだろ…怖くて聞けない。


「オレの春華の能力は、斬撃を空間に残して、自由に操るというものだ」


え?何それ、カッケェ!オレもやってみてぇ!!


「椿!オレ達もそれやろう!やってちょっ!」


『無理じゃわ阿呆が!!』


即断られたんですけど、やってみてからでもいいじゃん。


「試しに見せてやる」


先輩は刀をゆっくりと振り下ろすが、そこを見ても何も見えない。


「先輩、見えねぇっす」


「斬撃が目に見える訳ねぇだろ、刀を前に構えて防御でもしてろ」


オレは、先輩に言われるがまま防御の構えをとった。

その瞬間、椿が何かに当たったような強い衝撃が走る。


ガキィン!!


「うおぉっ!!?」


『これは!』


「分かったろ?これが春華の能力『斬真ざんしん』だ」


「これは、アレですね!月牙てn「違う」まだ言い終えてねぇっす…」


ん?そういえば、


「契りをかわして使えるなら、ういははどうなるんだ?」


『何かしらの能力は発現しそうじゃの、あやつは神威にベッタリじゃし』


よし決めた。今度ういはに刀になってもらおう、今日決めた。今決めた。ソッコー決めた。


『妾としては、知らなくても良いんじゃが…』


「何を言うかね、椿よ。未知の力だよ!カッコイイ技のオンパーレドだよ!念能力だよ!」


『念能力ではないじゃろ…』


「はぁ、興が冷めた。勝負はここまでにしよう」


そう言って、先輩は刀を手放し、春華さんが人の姿となって先輩の隣に現れる。


「あらぁ、もう終わり?あの小娘をけちょんけちょんにしてやろうと思ってたのに」


「実力は十分知れたし、これ以上手合わせする理由がない」


「そう、残念」


先輩はオレ達に背を向けて、歩き出した。


「何かあれば教えろ、いつでも力を貸してやる。その代わり、黒羽の情報は包み隠さず教えろよ」


「は…はい」


そう言って、先輩はその場をあとにした。


「凄かったな、先輩の能力」


『正確にはあのアバズレの…じゃがな』


とことん嫌ってるっすね、椿さんよ。


そして、椿も元の人の姿になり、不安げにオレに話しかけてくる。


「なぁ、神威よ」


「ん?何?」


「妾は…足でまといではないかの?」


は?何言ってんのこの子。


「五大刀輝なんぞとうつつを抜かしとるが、実際は、ただ神威の重荷になっておるのではないかと、五大刀輝が嘘だと、あの女狐に言われてから不安になるのじゃ」


女狐って春華さんの事か?まぁ、そこはいいや。


「変な事聞くヤツだな。お前からオレに押しかけて来たってのに」


「それは、そうじゃが…「元々、嫌ならどうにかしてお前やういはと離れてるっての」!?」


オレは椿の額に、軽くデコピンしてやった。


「あうっ!」


「オレはお前を刀として見ていない。1人の人間として一緒に居る。人間としてお前を気に入ってる。あとは言わなくても分かるだろ」


なんだかんだ3日間の付き合いだが、コイツといるのは嫌いじゃない。だからこそ言わせてもらう。


「絶対、オレのそばを離れるな」


「……はい」


オレはそれだけ言って、家に帰ろうとカバンを拾った。


「さーて、帰ってういはの能力確認しよーぜ!」


「妾はあまり気乗りせんぞ」


まぁーたそーゆー事言っちゃって、ロボとビームとカッコイイ技は男のロマンでしょうが。

あ、コイツ女だったわ。


「何やらものすごく失礼なことを考えておらんか?」


「おらんおらん…マジオラン」


鋭い目付きで睨みつけてくる椿を、オレは視線を外して椿と目をあわせようともしなかった。


「まぁよい、帰るかの」


「そそ、帰りましょ帰りましょ」


そして、オレ達は家に帰り、家族にバレないように、椿とういはを連れて夜中にこっそり外に出る。


「シーーッ」


「シーーッ」


「何がシーじゃ、もうお義母様もお義父様も、沙耶ちゃんも寝ておるわ」


オレとういはが、口に指を当てて静かにするように合図するが、椿はあまりノってくれなかった。


「ノリ悪ーい」


「ノリ?」


「わかったからさっさと行かぬか」


そして、オレ達は3人で誰もいない広場にやってきた。


「大丈夫かな?オレ、お巡りさんに補導されちゃわない?」


「不安ならやめるかの?」


「意地でもやります!」


「じゃろうな」


キョロキョロと辺りを見渡すオレを、椿は呆れた顔で、ういはは不思議そうな顔をして見ていた。


「ご主人、何するの?」


「ん?ういはがどれだけ力になってくれるかの確認」


「う…頑張るます」


よーしっ、それじゃいっちょやりますか。


「ういは、悪いけど刀になってくれ」


「はぁい!」


ういはとキスをして、大太刀に変身してもらったところで、改めてでかい刀だなと思わされる。


「そういや、何気にういはを使うのって初だな」


「記念すべき初ういはがこんな夜中とはのぉ」


別にいいじゃん…


『ご主人、私どーしたらいい?』


ん?そうだな、ういは本人は何が出来るのか理解してるのかな?


「ういは、その姿で何が出来る?」


『悪い人を切れます!』


うん、でしょうね…そうだけど、オレが聞きたいことはそこじゃないんですよ。ういはさん。


「いや、それ以外で何かない?」


『えーっと…あ!氷なら出せます!』


氷!?それはすげぇ!是非とも見たい!!


「神威、ういはは何と言うとるのじゃ?」


?椿にはういはの声が聞こえねぇのか。


「お前、ういはの声聞こえてねぇのか?」


「妾の時もそうじゃが、あれは刀と持ち主が、武器と使い手としてリンクしとらんと聞こえんのじゃ」


なるほど、そーゆー事ね。


「ういはなら、刀から氷出せるってさ、マジかっこよくね!!?」


『えへへぇ』


「ほう、氷か、ちょっと見せてみよ」


お?椿さんもご興味あり?オレも見たいし、いざやってみよう。


「あ、使い方は十分注意せんと「よーしっ!ういは!でけぇの頼むぜ!」……」


『ひゃい!わ…私を大きく振ってくだしゃい!』


振ればいいのか?簡単だな!


オレは、大太刀を横なぎに大きく振った。

すると、なんということでしょう!刀を振ると、無数の氷の粒手が一気に射出されるではありませんか!これは面白い。


「あっ…」


「おぉー!!すっげー!!」


『やった!ご主人!』


ういはは、刀から人の姿に戻ってオレと共に喜びを分かち合う。


「ういは、ちょっとついてまいれ」


そう言って椿がういはを連れてどこかに行ってしまった。どしたの?


「あの〜ちょっとすいません」


ん?


オレが振り向くと、そこには天下のお巡りさん…いや、お巡り様が…


「この辺りで大きな音が聞こえたのですが、あと、君未成年?保護者の方は?」


椿のやつ…これを見越して逃げやがった?!!


オレはそれからしばらく、警察の職質を受けることになるのだった。



そして、さっさとういはを連れて帰る椿はというと


「お姉ちゃん、ご主人置いてってだいじょーぶ?」


「大丈夫じゃ、というか自業自得じゃ」


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