求められてもいない設定資料集だの人物紹介だのは蛇足もいいとこ

 最近、小説のページを開くと一番上のリンクに「第一話 ○○」であるとか「エピソード1 ○○」とか書いてあることなんて、まずないっていうのは言い過ぎか。大体ちょっとこなれた雰囲気を醸して「プロローグ」なんてものが添えられてるのが多い。これなあ。賛否あるだろうけど、少なくとも僕はいきなり読む気をくじかれる。


 なんだよ「プロローグ」って。情報量がゼロに等しい。物語が始まるんだってのは小説を一から読もうとしている読者からしてみれば、謂わば当然の前提なのだからわざわざ教えてもらわなくて結構だ。小見出しつけるとか、サブタイトルつけるとか、これから展開されていくストーリーの内容を前もって想像させて、受け手をワクワクさせてくれるような創意工夫はないもんかね。


 そんなものは序の口だ。別に初っ端から「プロローグ」と書いてあろうがなかろうが、キャッチコピーとか、あらすじなどが記載された紹介文が魅力的ならば見る人は見る。許せないのは、まだストーリーが始まってもいないのに、冒頭数話を使って「設定資料集」だの「人物紹介」だの、求めてもいない謎のページが用意されていることだ。


 全く、どこからツッコんでいこうか。まず、その作品が仮にとても人気のある小説だったとして、設定資料や人物紹介をページの一番上にドカッと置く意味はなんだ。新規読者の目線から言わせてもらうと、はっきり言って目障りだし、一歩間違えれば作者から堂々とネタバレを受けかねない愚行だ。小見出しに「ストーリーを先に見ることを推奨します」とか注意書きを書いたってダメだ。じゃあ物語が一段落を迎える度に、適宜必要に応じて補足情報を挟み込むように記載すればよかろう。


 もっと基本的な部分に言及するとだな、そもそも「登場人物の容姿・性格・歴史等々」「作品設定の年代・環境・世界観等々」といった必要情報は、ストーリーの中で説明してほしい。というか、物語を進行させていく中で読者に違和感を与えず、自分の考え抜いた創作世界に関する情報を必要に応じて小出しにゆっくりと刷り込むことができてこそ一流の作家であるというのが、今回の持論だ。それをサボって十把一絡げに「これが私の創った作品の設定(人物)のまとめだから、これを片手に読み進めてね!」なんてマニュアルじみた資料集を配布してくるのは、正直言って「それ、小説である意味あるか?」って疑問が湧く。そんなに自分が創り上げた大蛇のような創作物に手足を書き足してやりたいなら、脚本家にでもなったらどうだ?


 もっとも、作中にて説明できる情報には限度がある。テンポ良くストーリーを進行させていく上では、必要以上の情報を説明している暇なんてものはないからな。しかし、ひとたび人気が出た作品ってのは、その必要以上の情報まで知りたい熱心なファンが現れるだろ。そうしたファンへのサービスの一環として、補足情報をまとめた人物紹介や設定資料集を配布するってのは、むしろ喜ばしいことだと思うんだ。だが、作品の内容すらまともに知らない一見さんに向かって、いきなりベラベラと一人語りをされても困る。買うかどうかも決めていないままウィンドウショッピングをしているだけなのに、いきなり服の試着を勧めてくるアパレル店員みたいだ。まずはゆっくり中を見させてくれ。


 判断に困るのは「まえがき」とかいうアレな。小説を読む上で「まえがき」をスキップしていきなり読み進めるのは、何というか気持ち悪い。かといって、そこに堂々とネタバレが記載されていたり、くだらない作者の一人語りがつらつらと続いていたりしたら、もう完全に興醒めだ。中には作品を読み進める上で、最低限知っておくべき注意事項を書いてくれている丁寧な作者さんも居るもんだが、それは作品の紹介文にでも書いておけば良くないかね。後はその「まえがき」って、実は「あとがき」で良いんじゃねって内容だな。「見なきゃ良かった」とまでは言わないまでも「それ、別にまえがきである必要はなくね」ってもんだ。


 他の読者様方がどういう風に感じているかは知る由もないが、こういうの全部、これから小説本編を読もうって時に、そういう気力が削がれるというか、得も言われぬ不快感でブラウザバックしてしまうんだな。一応冒頭の話だけチラ見することもあるが、その手の小説は往々にして僕の口には合わない。いや、単純な話、その手の小説の作者とは根本的に馬が合わないのだろうな。


 勘違いを生じさせないために言い添えるが、そういう作風を否定する見解を述べている訳ではない。僕が言いたいのは「その設定資料集だの人物紹介だの、本当に要るの? どうしてもって言うなら、物語の最後尾に記載しておいてくれない?」ってこと。それだけだ。


 ──おしまい。

 

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