あうとふぉーかす!. RW2

氷結ざりがに

第1話.高校生活は急に始まる!(?)

春風がとても心地よい。

まるで、妖精たちが踊っているかのよう。


俺は立ちこぎで自転車を進めながら、春の陽気を体いっぱいに浴びる。


つい先週、この町に引っ越してきた俺。


ここ数日は特に忙しい日々が続いていた。

家具を買いそろえたり、ご近所に挨拶に行ったり。


高校受験が終わったと思えば、新生活の準備に追われていた。

ここ最近はそんな感じ。


だけど、両親は俺以上に忙しいかったらしい。

よく眠ていないのか、父の目にクマができていた。


新しい職場に新しい人間関係。おまけに息子は受験生。

軽く想像しただけでも父の忙しさが理解できる。


それでも時間を割いて入学式に来てくれたのだから、もう頭が上がらない。


 河川敷の自転車用道路からは、この町が広く鮮明に見える。


一番印象的なのは、河川敷の向こうにあるショッピングモールだろうか。

なんでも、つい最近リニューアルオープンしたらしい。


おととい家具を買いに行ったのはあそこ。


前に住んでいた町とは比べものにならないくらい大きい。

時間ができたら、今度はゆっくりと館内を歩き回りたいものである。


次に視界に入ってくるのは、河川敷に広がる徒桜たちだ。

お世辞にも満開とは言えないが、それでもたくましく花を咲かせる彼らには心から感服する。通学中にお花見ができるなんて、俺は運がいい。


朝からこの町には活気があふれている。

ランニングをするおっさん、犬のさんぽをするお姉さん。


電車やバスは多くの通勤通学者を乗せ、町中を走り回る。

これが東京...と思うと同時に、自転車通学であることを幸運に思う。

絶対満員電車なんか乗りたくない。


思えば、この町の景色をきちんと目にしたのは今日が初めてである。

引っ越作業に追われていたものだから、街並みなんて意識してなかった。

それぐらい自分が本当に忙しいかったんだな、と改めて実感する。


俺は自転車を走らせながら、だんだんと活気づいていく街並みを俯瞰していた。


自分の全く知らない街並み。風景を見るだけで面白い。

質の悪い海外旅行なんかよりずっとコスパがいいまである。


河川敷を抜けると、もうそろそろ高校につく。

徐々に同じ制服の学生が増えていくのが分かる。


校門が見えてきた。

もう後には引き返せないと思うと、不安になってくる。

ここは全てが新天地。うまくやっていけるだろうか。


でも、それよりも期待の方が大きい。

少なくとも、初日ぐらいはそうありたい。

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