第20話 浴衣

母親に手伝ってもらって浴衣を着終えると、

「もうバカみたいに飲まないでよ。今度は莉子ちゃんに迷惑かけるようなことはやめてよね。」

と言われた。

「わかってる。今日は飲まない。」


やっぱり手伝ってもらって良かった。

自分で着られないことはなかったけど、こんな風に着崩れないようにするのは難しい。

姿見で帯を見ると、可愛く結んであった。

着物好きな母親で良かった。


玄関を出ると、莉子も浴衣を着て待っていた。

「莉子ちゃんも、この子が飲みすぎないように言ってね。」

莉子にまで念を押される。

「はーい。じゃあ行って来まーす。」

莉子がわたしの母親に言った。



「莉子が一緒で良かった。」

「でしょ?」


家から少し離れた所に停まっている車のところまで行くと、莉子がウィンドウをノックした。

「神崎くんごめんね、お待たせ。」

「いいよ、2人とも乗って。」


「失礼します。」

莉子に続き、わたしも乗せてもらう。


助手席に乗った莉子が楽しそうに運転席に座ってる神崎くんと話始める。

夏休み前に、大学校内で莉子に声をかけてきた人だ。

真面目そうな人で、いつの間にかうまくいっているっぽい。


この間、合コンに行った話をしたら、どこかに行こうって誘って来たから、莉子も花火大会の話をしたらしい。

後ろにいるわたしにも気を遣って話を振ってくれる。優しい人みたい。

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