第9話 過去2

安永はわたしの隣に座ると、普通に話しかけてくる。

「優衣、久しぶり。」

黙っていると

「やっぱお前可愛いわ。」

と、寄ってきた。

「近寄らないで。」

「何で怒んの?」

安永が笑った。


何で笑えるの?


「ごめん、美結…」

わたしは隣にいる美結に小さな声で言った。

「いいよ、後は任せて。」

美結にそう言われて、席を立った。

「優衣?」

声をかける安永に、

「飲みなよ。もう飲める年なんでしょ?」

と、美結がビールを勧めていた。


わたしはみんなに悪いなと思いながら、店を出た。




高校の時、安永に告られて嬉しかった。

彼は優しかったし、一緒にいて楽しかった。

わたしが男バスのマネをやってることが嫌だと言われて、ずっとやめてくれって言われ続けてたけど、やめなかった。


その後、振られた。


仕方ないと思った。

マネはやめたくなかったから。

バスケが好きなのに、運動音痴の自分ではできないから、それでなったマネだったから。



でも、ある時、聞いてしまった。


安永が友達に言っていた。

「優衣ってさ、連れて歩く分にはいいけど、全然さわらせもしないし。簡単にやらせてくれるかと思ったのに、つまんねぇ。もっと甘えてくるようなら可愛げもあったのに。」




なんだ…そうだったのか…



それで線を引いた。



しばらくして、「やっぱりやり直そう。」と何度も言ってこられたから、電話もLIMEもブロックした…

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