第4話 思ってたのと違う

バイト先の居酒屋「風鈴」で、颯太の話を莉子にすると、笑われた。

「何その子?高校生だっけ?よくわかんない子だね。」

「だよねぇ。」

「その子優衣のこと好きとか?」

「それは、ない。」

「なんで?」

「なんかこう、男バスのみんなは、わたしのこと女として見てなかったから。」

「嘘だー。」

「本当。わたしの前で平気でパンツになって着替えたりしてたし。」

「でも、優衣って女のわたしが言うのも何だけど、可愛いじゃん。」


「優衣は残念なとこあるからなぁ。」

いきなり店長が話に入ってきた。

「聞いてたんですか?」

「うん。」


店長は多分30歳後半、2人の子供を持つパパだ。

店の名前は子供の名前「ふうか」ちゃんと「りん」ちゃんからつけられている。

今日の仕込みをしながら、店長が言った。

「優衣はさ、黙ってたら可愛いんだけど、何かと…」

「何ですか?」

「潔すぎる。」

「意味がわからないです。」

「あっさりしすぎてるってこと。まぁ、それが優衣なんだけど。」

そう言って笑われた。


褒められてるのか、けなされてるのかわからない。


「潔い」って何?


まぁ、思い当たる節もある。


高校の時、告られてできた彼氏に、フラれた時の言葉が

「優衣って、思ってたのと違う。」

だった…

もっと甘えたり、頼ったりできたら良かったのかもしれないけど…そういうのはうまくできない。

想像してた感じと違う、って言われても、自分ではどうすることもできない。

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