第2話 記憶

早い。

家に着いてスマホを見たら既に河野くんからDMが来ていた。


『北条覚えてます?平野先輩のLIME知りたいって』


北条くん…彼ははっきりと記憶にある。


この子だ、北条くんって。

引退の時みんなで撮った写真を見直してみたら、やっぱり間違っていなかった。

どこかのアイドルグループにいそうな感じの子。

男バスには結構かっこいい子がいるって有名だったけど、北条くん目当てで、例年1人か2人しか希望する子がいないマネに、6人も希望者が来た。

だから記憶に残ってる。

仕事の内容や、スコアの書き方に挫折して、結局マネは1人しか残らなかったみたいだけど。


『×××です』


河野くんにアカウントを送って、お風呂に入った。



お風呂から出て、髪を乾かしながらスマホを見ると、LIMEが来ていた。


『北条です。河野に連絡先聞きました』


『久しぶり』


返信を返すと、すぐに既読がついて、返事が返ってきた。


『平野先輩のことは忘れたことなかったです』


少し、どきっとした。


『富田先輩を担いで階段降りてたのが忘れられません』


あ、そっちね。

3年の引退試合で、足首を痛めた富田をおんぶして、体育館の階段を降りたんだよね…


『平野先輩、城南大学ですよね』


『そうだよ』


『そこ受験するんです』


『そうなんだ!』


『学校のこと教えてください』


『いいよ』


そう言うことか。

男バスの卒業生で、城南大学行ってるのはわたしだけだから、受験のこと聞きたかったんだ。


『今週会えませんか?』


『明後日なら』


間がある。

ずっとすぐに返信が返ってきてたから、ほんの少しの間でも長く感じるもんだな…


『皐月公園に10時は早いですか?』


『大丈夫』


『待ってます』


『じゃあ明後日』


わたしの返信に既読がついたけど、そのまま何も返ってこなかったから、これで終わりってことか。

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