Column14 「悶絶」の話

 今回は、「悶絶もんぜつ」について取り上げようと思います。


     ☆


 最近、「悶絶しそうになるくらい可愛い猫の写真」というような文章を、ネットニュースで見ました。(いつものように、ニュアンスだけ残して文章は変えています)


 推測するに、猫の可愛さに「気持ちがくるおしくなる」とか、「気絶しそうになる」などの意味で使われているのだろうと思いますが、「悶絶」とは本来、「もだえ苦しみ気絶すること」(『旺文社国語辞典 第十二版』より引用)という意味です。


「悶絶」の「悶」というのは、「心身の逃れがたい苦痛」という意味があります。

 それを知っていると、「悶絶しそうになるくらいかわいい猫の写真」ということに使うと、やはり違和感があるのではないでしょうか。


 しかし、多くの人たちが使っていることもあり、俗語として載せている辞書もありました。(俗語の意味として載せている「あまりのかわいさに、気絶しそうになる」という意味は、『三省堂国語辞典 第八版』の語釈から引用・参照させてもらっています)



●「悶絶」を「あまりのかわいさに、気絶しそうになる」という意味を俗語として認めている辞書

『三省堂国語辞典 第八版』『三省堂現代国語辞典 第七版』


●おそらく「悶絶」を「あまりのかわいさに、気絶しそうになる」という意味で捉えることを認めていない辞書(⇒言及されていない・用例がないため)

『明鏡国語辞典 第三版』『新明解国語辞典 第八版』『新選国語辞典 第十版』『旺文社国語辞典 第十二版』『学研現代新国語辞典 改訂第六版』『岩波国語辞典 第八版』『旺文社標準国語辞典 第八版』『デジタル大辞泉』『大辞林4.0』『精選版日本国語大辞典』



 こうしてみると、認めていない辞書のほうが多いのが分かります。

 やはり、「悶絶」の本来の意味や漢字の意味を考えると「あまりのかわいさに、気絶しそうになる」とするのは、辞書として容認しづらいところがあるのかもしれませんね。

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