13 to 15 years old

彼との出会いは、中学2年の春。私の中学校は出身小学校上がりの人が多く、クラス替えはそれほど苦ではなかった。2年生は修学旅行もあるため、怖い先生だとやだなぁと思っていた。ホームルームのチャイムが鳴り、担任が来るのを皆、今か今かと待ちわびていた。私はギリギリまで下を向き、優しい先生でありますように、と祈った。ついに教室のドアが開き、その人物が教壇に上がり、口を開いた。

「みなさんの担任になりました。櫻田嵩紘です。1年間よろしくお願いします。」

その声を聞いてようやく、私は目を担任に向けた。それほど高くはない身長と、それほど低くはない声。そしてなにより、23歳ととても若い先生だった。その時の私は、そんな印象しかなかったと思う。櫻田嵩紘という長い名前だったため、みんなからは「さっくん」と呼ばれるようになった。

それからというもの、クラスの仲も担任との仲も良く、毎日が本当に楽しくてあっという間に1年は過ぎ去った。2年生最後の日。みんなが帰る中、1年間の余韻から抜け出せずにいた私は、最後まで教室に残っていた。

「虹七まだ残ってたんだね」

「クラスも楽しかったし、担任も先生でよかった。本当にバイバイしたくない。」

「そんなに楽しかったのか。そう思ってくれてて良かった。」

涙ぐむ私の頭を、先生は優しくポンポンしてくれた。カッコよくて、優しくて、お兄ちゃんのような存在の先生が大好きだった。それでもその時の私は、まださっくんとは呼べなかった。先生と生徒、その壁がどんなに厚いかわかっていたし、越えられないと思っていたから。

私は3年になり、先生は1年の担任を持った。それから関わる機会は体育の時間だけになってしまった。卒業式の日、2年のときの仲良しグループで集まり、先生も含めて写真を撮ろうということになったが、結局先生は見つからず解散。なんの思いも伝えられず、静かになった校舎を背に、桜が散り始めた坂を私はゆっくり下った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る