第47話 定刻通り
「嫌ですよ。なんでそんなんいかんとダメなんですか。やっと忘れることが出来たのに」
「僕は嫌やった。練習も楽器もマーチングも人間関係も」
僕は松山の隣に座った。
「喘息もごまかしきかんようになって、練習させられて嫌やなって思ってたけど、松山と一緒でクラスメイトに吹奏楽部の人おって、辞めにくかった。棚西が落ちてきて、松山がこけそうになってホンマに嬉しかった。なんも気にせんと学校も行かんで済むってな」
松山が隣で深く息を吸った。
「でも責任を取らんとあかんらしいねん。僕は来月、今もずっと吹奏楽が好きなふりをしてセンチュリー行くねん。だからそうじゃないって言えるくらいの仲間が欲しい。これグリーンのチケットと全国のチケット。来月、新大阪に来ること考えといて」
十月朝に僕は新大阪の新幹線ホームに立っていた。出番は午後一番らしい。
「もう来るで」
姉ちゃんが僕の肩を叩いた。グリーンだから階段に一番近い。
「うん」
定刻通り、松山を乗せずに新幹線は出発した。
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