第29話 嘘の白状

「ホンマは」

 松山の席を見た。ごめん、まだ言えんわ。せめて全国終わった後にさっさと辞めるわ。


 その時やったら言えるかな、疲れたって。


「ホンマは全国の舞台は見てみたい。このまま出ても見るのは見れる。銅賞でもええ。でも、あー今年は惜しかったな。来年は頑張ろかーって言って、来年関西で落ちて何で去年の全国ちゃんとやらんかったんやろって思うのは嫌や」


「しんどい時は自分を大切にするべきやし、逃げるのは正当な手段や、だから僕も逃げたい。でもまだ一か月あきらめない仲間がおる。せめてそいつらと一緒に舞台に立って、まぁ関西落ちの団体やから大した事無かったなって言われたくない」


「そんな辞めるのか辞めないのか中途半端な部員もおるわけやけど、元メンバーとしての経験とこの瞬間にかけて、僕は諦めたくはない」



 しんみりとした空気になってしまった。


 ま、でもこんなこと言ってもまさかし、明日てきとうを先生に言ってちゃっちゃと退部届書こう。疲れた疲れた。おつかれちゃん。


 でも次の日、さすがに全員揃うと思わんやん。

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