第13話 押し切った

「いきなりやから、みんなもびっくりすると思うねん」


「嫌ですよ」


「そこを何とか頼むわ。な、明日と明後日。弁当好きなやつ選んでいいから」


「先生、それはもうどうしても。それくらい怒られてくださいよ」


「しゃあないねん。体育館明日しか無くてな」



「ということで、明日のオフは消滅しました」

 三日間、好きなお弁当とみんなの分のアイスで手を打った。言う方は真顔、言われる方は悲しみである。


「いつまで?」

 トランペットの小藤先輩から質問の手が上がった。


「先生はいつまでとは言っていません。体育館が取れ次第、連絡すると」

 はい、と手が上がった。後輩の山本さんだ。


「夜遅くなったら、家帰るの困るんですが、その場合の事前連絡って」


「僕は先生じゃないのでわかりませんが、先生ですら分かっていない線もありえます」

 マジかよ。明日。彼氏とデート。


 様々な悲喜こもごも、真っ当な神経をしていたらこんなむごい仕打ちはしないはずだ。


「おう揃ってるな」

 出たな大魔神。


「質問は? 光君」


「いつまでオフが無いか。夜遅くに帰る件」


「ご苦労。みんなは関西突破を目標にしているが、それはもちろん全国で金を取るという目標でもあるな?」

 せこいことすんなと僕は思った。

 声がずれて、皆から返事が聞こえた。


「そんな根性やったら全国は無理や!」

 出たよ、根性論。

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