私になる

Aoi Midori

第1話 気付き

 当時仕事をしていた私は、会社での一人称は「私」でした。別にこれ自体は普通の事だと思いましたが、近畿圏は意外と「僕」を使う人が多いように感じました。これはまだ先の事に繋がるのでこれくらいで。


 ある日の仕事帰りの事でした。O駅で降りて真っ暗な大和川沿いを歩きながら、ふとなぜか「なんで自分は男なんだろう?」と疑問を抱きました。過去には男であることにストレスを感じる事もたまにはありましたが、基本的には「男だからこういうもの」というのがありましたのでそうなるべく努力していました。声が小さいってよく言われた事を思い出します。因みに後に男性としては声が高いほうだと、I病院で言われました。


 少し脱線しましたが、この気付きが後に大きな影響を与えることになります。仕事に疲れてふと思い浮かんだだけかもしれない内容ですが、これが人生を大きく変える事になる切っ掛けでした。


 家に向かって歩きつつ、色々な考えが頭に浮かびました。男で有ることを辞めたい、今の仕事も続けたくない。この頃はまだぼんやりとしたものでした。


 この後にS町からS市に引っ越し、会社まで1時間だったのが約20分に縮みました。でも上司と反りが合わなくて鬱で休職する事になり、時間が出来たのでいろいろ調べて自分はGIDであると自覚しました。更にこの頃2年ほどある女性と同棲していましたが、これで確信することになりました。男の役割に強い抵抗を感じたのです。


 このような感じで私のトランスはスタートしたのです。

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