その3 未解決の密室。

きっと何かある。

私が気付いていない、秘密の何かが。


ここは私の知る世界とは少し違う。

だから、発想の転換が必要なのかもしれない。

そう仮定すると...



まあとりあえず、拭こうか。



「流す」に気を取られていたけれど、「拭く」をしないと気持ち悪い。

一連の流れで、当然のようにする行動ですよね、ええ。



ええ。


そうですとも。


ええ。



なんで紙までもが無いんですかね?


マージーかーよー、勘弁してくれよ、今日はどういう日なんだよ。

次から次へとさあ、人生最大の厄日で間違い無いよ。

まだ生きていられて良かったですね、ってぐらいに思わないと。



イケモトに聞けばすぐ解決するだろう。



...この状態でか?


今日の私は恥ですよ、恥99%で構成されてる存在ですよ。

でもね、ま~~~、でもね、この状況でトイレの中にお入りいただくのはないわ。



...いや、ドア越しに話せば良くね?



うん、そうだ。

初めて日本に来て和式便器に遭遇した外国人だって、そうやって聞いたに違いないよ。


よし、と覚悟を決めて、ドアを見た私は、ここでようやく重要な存在に気が付いた。



リモコン



スティック状の小さなそれは、ドアノブのすぐ上のポケットに入れられていた。


...なんだよぉ~~~、これかよぉ~、気付かなかったよ、もーーーう。


早速取り出す。



音1

音2

音3

開1

開2

開3



「音」かぁ...。

ふふっ、手遅れ感が酷いよ、君ィ!


だが、問題は無いさ。

このドアを突き抜けて、あいつの耳に届く程ではなかったはずだ。

爆発音がするようなアレは、私が30年間で身に付けた技によって...まあ、とりあえず流す時の音も気になるから、音のボタンはどれか押そうかな。




♪アイ!アイ!アイアイアイ!アレアレ!アレアレ!アレアレアレアレアレ!ハァ~~~~!スットコボンボンスットコボンボンスットコボンボンボン!!




(´・ω・`)



うるせえ!!

賑やかにも程がある!!

音1がこれなら、音2はどんなんや!?


試してみ...いや、今は拭く方が先よ。

あ、紙が無いんだった。

そうだ、えーと、流そう、うん。


‘流’のボタンを押した。



ブゥーーーン...シュゴゴゴゴゴゴゴ!!



便器に水が流れ出した。

そして、見られたくないアレを、綺麗に運び去ってくれた。


ありがとう、水。

ありがとう、便器。



さて、1つ解決した。


紙が見当たらないのも、何か理由があるはず。


‘開’のボタンが3つあるんだよね。

これでどこかが開くんだろうね。




...なあ...。



これさ、トイレのドアが‘開’だったらマズいよね。

私の既にオープンしちゃってるクローズしたようななんだりかんだり...



...



....



...賭けるか...この3択に...。

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