証拠

やがて、俺の部屋に先輩刑事が来た。

成瀬堅斗なるせけんと。いつも親しくさせてもらっている先輩だ。

成瀬先輩は、去年、巡査部長への昇任を果たしていた。


「相沢、久しぶりだな」


成瀬と相沢は、過去にバディを組んでいたことがある。

その時は、お互いに巡査長だったらしい。

相沢と組むと巡査部長になれない、というジンクスの通り、成瀬もまた、相沢と組んでいる間は昇任試験には合格できなかった。


成瀬は、相沢ではない相手とバディを組むようになり、そのおかげかどうかは分からないが、成瀬は巡査部長への昇任を果たした。


「先輩、これ見てください」


俺は、先ほど録画した動画を先輩に見せた。


「よし、これで間違いないな」


俺と先輩は、相沢をはさむように前後に立った。

先輩は言った。


「相沢、こんな時間に申し訳ないが、今から署に来てもらおうか」


「は?」


「相沢、おまえの所持品検査、してもいいかな?」


その言葉を聞いた途端、相沢の顔が青くなった。

俺は、相沢に言い放った。


「俺がトイレに行っている間、おまえがしたことはこのビデオカメラに収められている。言い逃れはできないぞ。ちなみに、テレビ画面も録画しておいたから撮影日時も立証できる」


相沢は観念したようだった。

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