第16話 芋聖女、ハンバーガーセットの原理

「メークイン令嬢は何をされてるんですか?」


「この間買ってもらった糸を使ってマスコットを作ってるんです」


「マスコットですか?」


 私は領民の食生活を改善するのに協力して、その報酬に糸をとにかくたくさん買ってもらった。


 セイグリットは少し驚いた顔をしていたが、婚約して欲しいと言うとでも思ったのだろうか。


 あまりに何度も婚約して欲しいって言うと信じてもらえないし、胡散臭く見えると思った。


 そこで己の欲望を満たす方法を考えたのだ。


「人々に幸運をもたらすって言われている人や物のことを言うんです」


 その方法がマスコットぬいぐるみを作ることだった。


 元々推し活の一環として、自分でオリジナルグッズを作っていた。


 ただ、あの時は顔は黒塗りで作っていたが、毎日見ていれば簡単に作れてしまう。


「坊ちゃんが幸運をもたらすって不思議ですね」


「そうですか? それに聖女の力があれば本当にマスコットになるんですよ」


 完成したぬいぐるみに魔法をかける。


 聖属性魔法の中には、幸運のステータスを上げるバフが存在している。


 ステータスの概念があるのかもわからない。


 それでも魔物が食べられるようになったのも乙女ゲームの知識のため、見えない幸運ステータスも上げられると思っている。


「セバスもぜひ枕元に置いてください」


「ありがとうございます」


 セバスは優しい笑顔をして受け取ってくれた。


 インカに関してはいりませんとすぐに拒否した。


 受け取らないと解雇にすると言っても、考えると言われて逃げられてしまった。


 そこまで嫌なのかと思ったが、私のぬいぐるみも付けたら渋々受け取ってくれた。


 なんやかんやで私のメイドとして働くのは嫌いではないのだろう。


「これがメークイン令嬢ですか?」


「ええ、セイグリット様に抱かれる私……素敵ですよね」


 セイグリットぬいぐるみの手には目がついたじゃがいもを持たせている。


 自分のぬいぐるみを作るのは、さすがに吐き気がするがじゃがいもなら問題なかった。


 つい芋子として生まれてよかったと思ってしまう。


「相変わらず変なことを言ってるんですね」


「セイグリット様、お疲れ様です」


 魔物の討伐を終えたセバスは帰ってきた。


「私のことが必要になったんですね」


「いや、メークイン令嬢の力です」


 魔物に魔法をかけて欲しいのだろう。


 あれから定期的に魔物を討伐しては、領民に配っている。


「本当は私がいないと寂しいんですよね?」


「クッ……」


 セイグリット一人で街に行ったら、人々は震え上がってしまう。


 だからいつも私がセットになる。


 これこそハンバーガーセットと似た原理ね。


 ハンバーガーにはポテトフライが必須になる。


 セイグリットがハンバーガーで、私がポテトフライだ。


「では鍋も持って一緒に行きましょうか」


 今日も私達は調理道具と魔物を持って領地に向かった。

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