第2章 アルフレット帝国

第11話 アルフレット帝国で冒険者登録

 アルフレット帝国、実力主義の国家を作り上げた強者が住まう絶対の世界。戦争を多くこなし、連勝してきた国であり、武力だけならアンリーゼ王国に迫るといわれている。


 だが、皇帝の代替わりが激しく最近では貧困層との差が大きく生まれ問題になっている。


「ここが、アルフレット帝国…………なんだが、想像と違うね」


「来たことないのか?」


「私、基本的に引きこもりだからね」


「そんなイメージ全然ないが」


 アルフレット帝国の門はとてもじゃないが門とは呼べなかった。


 素朴な木々で作られた扉に門番も二人だけ。


 だが、それはまだここが外周だからとも言える。


「アルフレット帝国の裕福ゆうふく層はみんな中心部に集まる。つまり…………」


「なるほど、帝国は外周部と中心部で貧民層と裕福層を分けてるんだね」


「そういうこと、とはいえここまでひどいとは思わなかったがな」


 アルフレット帝国の貧民層が急増したのはここ最近だと聞いている。


 俺が小さいころに来たときはまだこんなにひどくなかったし、やはり皇帝の代替わりが原因だろうな。


 門の前まで到着した俺たちは門番の人たちに足を止められた。


「そこのお前、そのフードをとれ」


「はい、これでいいですか」


「ふん、よしっ!」


 指名手配されているのはあくまでアンリーゼ王国内のみだが、念のため変装魔法で姿かたちを変えている。


 まさか、フードを外させて顔を確認されるなんて、外周部なのに抜け目がないな。


「よかったね、変装しておいて」


「ああ、そうだな」


 だが少し気にかかる。見る感じ、顔をみえない人には全員声をかけているようだし、もしかして、だれを探しているのか?


「それで、アルフレット帝国内に入れたけど、これからどうするのかな?」


「今回の魔物大量発生した場所に行くには、ある手続きをする必要があるんだ」


「手続き?」


「…………そう、冒険者登録だ」


□■□


 アンリーゼ王国を除き、ほとんどの国が実力のある騎士が不足している。


 そのため、どうしても戦争になると戦力が少なかったり、魔物に攻められたときに守れなかったりする。


 そんな時、役に立つのが冒険者という存在だ。


 依頼を発布し、冒険者は依頼を達成して相応の対価をもらう。


 冒険者という役職が存在することで国は依頼を出し、戦争の戦力を補ったり、魔物退治のために依頼したりする。


 アンリーゼ王国は宮廷騎士団という化け物ぞろいの騎士がいるおかげでその必要がないが他国ではその真逆なのだ。


「どうして、冒険者登録をするの?」


「今回、魔物大量発生している場所の魔物駆除の依頼が張り出されているんだ。そこから依頼を受けないと、そもそもその場所に入れてすらもらえないんだ。それに…………今俺たちはすごく金欠だ。ここで稼がないと、野宿だぞ」


「それは嫌だ」


「ということでまずは冒険者登録をするってわけ」


 冒険者ギルドの扉の前。


「ここが冒険者登録ができる、冒険者ギルドだ」


「へぇ、案外…………普通だね」


 木々でできた立派な建物。見た目はきれいでちゃんと清掃されているが、建物の素材の味が出ているのか、普通に見える。


「…………それ冒険者ギルド内に入ったら言うな、普通に」


 俺たちは平然と扉を開けると、いかつい冒険者から仲良くワイワイしている冒険者までたくさんの人で賑わっていた。


 そのまま一直線に歩く。


「どのようなご用件でしょうか?」


 冒険者ギルドの受付前まで来ると、受付嬢から話しかけてきた。


「冒険者登録をしたのですが」


「冒険者登録ですね、わかりました。少々お待ちください」


 少し待つと、受付してくれた人が戻ってきた。


「冒険者登録をするには試験を受けなければいけません。日付はいつにしますか?」


「今日、受けることはできますか?」


「え…………あ、できますけど、よろしんですか?」


「はい、大丈夫です」


「わかりました。準備が出来次第、お呼びしますので、少しの間お待ちください」


 そう言って受付嬢はまた席から離れた。


「ねぇねぇ、ウルくん」


「どうした?」


「どうして、あの人はあんなに驚いてたの?それに試験があるってしらなかったんだけど」


「シルって案外何も知らないんだな」


「そんな、ほめないでよ」


「ほめてないわ。…………冒険者は国から強制依頼がきたりもするから、ある程度の実力や知恵を求められるんだ。受付嬢が驚いていたのは試験対策をしないまま受けることに驚いていたんだよ」


「なるほど、それじゃあ、楽勝だね」


「言っておくがシル、お前も受けるんだぞ」


「わかってるよ。私もそこまで馬鹿じゃないし…………それにむしろ、どうやっていじめてやろうか考えてるところだよ」


「…………やりすぎるなよ」


「大丈夫だって、せいぜい三日ぐらいお布団でお眠りする程度で済ませるから」


「もうちょい手加減せい」


 正直、シルが本気で言っているのかわからない。


 ただ、一か月間一緒にいて分かった。シルから目を離すとろくなことがない。


 俺が思った想像以上にシルは世間知らずだ。


 しばらく待っていると。


「準備が整いましたので、ついてきてください」


「わかりました」


「たっのしみっ!!」


 受付嬢の後ろへついくと、冒険者ギルドの地下に連れてこられる。


 そこは大きな闘技場のような形をしており、真ん中には巨体な男が立っていた。


「彼が今回の試験官、ガルディアさんです」


「俺がガルディアだ。よろしく、冒険者に夢持つ小僧ども」


「知っているとは思いますが、念のため、試練内容を説明をさせていただきます。試練合格の条件は試験管に一撃を与えること。不合格条件は、参ったと口にするか、もしくは戦闘不能状態といたします。ご理科いただけましたか?」


「大丈夫です」


「私も大丈夫だよ」


「それじゃあ、さっそく誰からやるんだ?」


 どうやら、相手はやる気満々らしい。


「相手に不足なし。俺からだ」


「よしっ!!」


「がんばれっ!ウルくんっ!!」


「ちっ、彼女持ちかよ」


「彼女じゃないんだけど」


「そうかよ、まぁどうでもいいけどよ」


「それでは始めてくださいっ!!」


 受付嬢の合図とともに試験が始まった。

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