20話 誕生する十ニの輝き

 ピコンッ!とセナの脳内でスキル取得の効果音が鳴り響く。


 〈深淵スキル、【誕生する十二の輝き】(表層)を取得しました〉


 なるほど。身の内側から溢れてくるこの白銀のオーラが魂輝ってことか。魂輝ってのは結構暖かいんだな。


 セナはすかさず深淵スキルの詳細を鑑定した。


    【誕生する十二の輝き】

 それぞれの誕生石に応じた能力を発動することができる。※同時発動不可及び宝剣が破壊された場合、能力が強制解除され24時間その能力の使用を制限される。

 

 ・1月ガーネット: 宝剣ガーネットを召喚し上空に巨大なコンパスを出現させ欲しいものを指し示す。また、任意でベクトルを操作することができる。

 

 ・2月アメジスト: 宝剣アメジストを召喚し、いかなる攻撃や呪いの類を防ぐ完全防御の薄い紫色のバリアを展開する。

 

 ・3月アクアマリン: 宝剣アクアマリンを召喚し水氷の創生操作及びポーションの生成が可能。

 ※ポーション生成は1日に三度まで。

 

 ・4月ダイヤモンド:宝剣ダイヤモンドを召喚し数秒先の未来を決定する。※ 制限時間は5分まで。インターバルは1日を要する。

 

 ・5月エメラルド: 宝剣エメラルドを召喚し植物の創生操作及び植物の声を聞くことができる。

 

 ・6月ブルームーンストーン:宝剣ブルームーンストーンを召喚し、物のみの完全修復を施す。

 

 ・7月ルビー: 宝剣ルビーを召喚し火炎、溶岩の創生操作及び自身に強力な身体強化を施す。 

 

 ・8月:ペリドット:宝剣ペリドットを召喚し敵対者の煩悩を消滅させる。

 

 ・9月サファイア: 宝剣サファイア及び七つの青い砂時計を召喚する。砂時計の周囲の時間を加速、減速させることができ、全ての砂時計が破壊された時、強制的に3分間の時間停止が引き起こる。又、砂時計の位置と自身の位置を入れ替えることができる。

 

 ・10月オパール:宝剣オパールを召喚する。相手の運を奪い、その運を自身に付与し加算することができる。

 

 ・11月トパーズ: 宝剣トパーズを召喚し雷の創生操作及びあらゆる真実を見極める事ができる。

 

 ・12月ラピスラズリ:宝剣ラピスラズリを召喚し対象を星空色の球体に閉じ込め強制的に眠らせる。※稀に未覚醒者が覚醒し、深淵スキルを会得することがある。


 ふむふむ、これって実質深淵スキルが12個あるみたいなもんじゃね?それに(表層)ってのは何だろう?


 その疑問にナビゲーターさんが反応する。


『本来、深淵スキルには表層はございません。しかし、主人様の魂は少し特殊で二段構造になっております』


 二段構造?


『主人様の魂輝は恒星並みの輝きを放っているため中心核の外側にもう一層高密度なエネルギーの膜が張られているのです。それを表層と言います』


 なるほどね。であれば深層もあるってことになるのかな?


「その通りです。ですが、今の主人様では深淵スキル(深層)は会得することはできないでしょう」


 それは何となく分かる気がする。より深く魂の中心に手を伸ばそうとすると体が燃えるように熱くなるからな。今のひ弱な体じゃあ耐えられないってことだろう。


 セナは自身の深淵スキルについて考察していると前方にいるガイウスから異変を感じ取った。


「真なる不老不死とは自身の存在自体を永久のものとして昇華することにある」


 次の瞬間ガイウスから荒々しい白銀のオーラが放出された。


「肉体も、魔石も、魂も、全てが不変でありそれらの情報がこの世界に残り続ける。故に永久不滅」


 ガイウスの体がより強く発光する。


「さぁ、とくと味わうが良い。オレの深淵を」


 ガイウスは、スキル【消失吐息】を放つ。その吐息は国を一つ破壊できる程の大規模なブレスである。


「ちょうど良い。試してみるか深淵スキル」


 セナの魂輝が煌めき、額についてある虹石がアメジストへと変わる。


 そして、セナの胸から刀身がアメジストで出来た煌びやかな長剣を召喚した。


「モードアメジスト。完全防御の盾だ」


 剣先をブレスへ向け、薄紫色のバリアを展開した。


 ドゴーーーーーン!と激しい衝突音がしたがブレスはバリアによって防がれる。


「素晴らしい盾だ」


 しかし、防がれることを予測していたのかガイウスは次の行動に移していた。


 「《削取空間スペースキューブ》!」


 ガイウスは魔法を放ちセナを半透明な立方体の中に囚える。


 「《消滅ロスト》」


 次の瞬間、キューブが白く発光し爆散した。


「ふむ、これでも無理か」


 しかし、セナは無傷。体全体をバリアにて覆ったからだ。


「こ、怖えーー!!」


 だが、流石に怖すぎる。空間魔法って攻撃にラグがないから気づいたら攻撃されてて本当にビビる。


 それにこの深淵スキル、発動すると額の石が変わっちゃって魔力供給が出来なくなるんだよね。


 深淵スキル発動中に魔法を使う場合は魔力量に関しても頭に入れておかなきゃな。


「次はこちらから行かせてもらう」


 セナはラピスラズリの能力でガイウスに攻撃を仕掛ける。


「遅い!」


 しかし、星空色の球体から 《空間跳躍スペースジャンプ》で回避される。


「ならば!」


 ラピスラズリからアクアマリンに変更し、ミカエルが使用した《氷蝕世界コキュートス》を再現する。


「次は氷系統の能力か」


 ガイウスはセナから放たれた青白い光から距離を取るが……


「逃がさん!」


 《氷蝕世界コキュートス》は無差別的範囲攻撃のため指向性がない。しかし、セナは《氷蝕世界コキュートス》に指向性を持たせガイウスを狙う。


「なるほど、追ってくるか」


 ガイウスは逃げるのをやめ【消失吐息】にて迎え撃った。


 両者の攻撃が衝突し激しい爆発を引き起こす。



 そこでセナは爆発と同時にサファイアに切り替えガイウスの背後に砂時計を設置する。


「貰った!」


 セナの位置と砂時計の位置を入れ替え 《死光線デスレイ!》による一撃を叩き込んだ。ちなみに溜めの時間は砂時計で省略させてもらった。


「ぐはぁ!」


 魔石もろとも破壊し、セナは勝利を確信した。



 しかし……


 

 「《空間断爪スペースクロー》!」


 ガイウスは振り向きざまに魔法をセナに放つ。


「くそ!」


 セナはすかさず遠くに設置していた砂時計の位置を交換し回避する。


 どういうこと?


 ガイウスの土手っ腹に風穴を開け魔石を砕いたはずなのに……


 セナは再びガイウスの体を観察すると先程の傷が何事もなかったかのように塞がっていることに気づく。それに魔石もしっかり体内に存在していた。

 


 ありえない。《死光線デスレイ!》は一瞬ではあるが再生が追いつかないほどの火力を有している。先程の早撃ち勝負でも再生には時間がかかっていた。


 いや……それよりもさっき魔石を砕いたはずだ。


 ヘルプミー!ナビゲーターさーーーん!


『はい。恐らくですが彼の深淵スキルの影響でしょう」


 忘れてはならない。ナビゲーターさんの能力にはスキル把握という便利機能があることに。


「どんな深淵スキルなの?」


『彼の深淵スキルは【永久不滅】。想像通りの能力で自信の存在を永久のものへと昇華するスキルになっております』




 不老不死の存在から永久不滅になっちゃったわけね。もう少しだけ詳しく教えてください。



『【永久不滅】の仕組みは至って単純です。昇華すると自身の存在情報は不変のものになり世界に残り続けます。つまり、過去、現在、未来にいるガイウスは必ず存在していることになり現在のガイウスを殺したとしても未来では生きているという事実だけが残るので辻褄合わせで現在は死んでいなかったことになります」


 つまり、オレはガイウスを殺してなかったってことになるのか?


『いいえ。あくまでガイウスが死んでしまった事実だけ消えます。主人様がガイウスを一度殺したという事実は消えません。その証拠に主人様はガイウスを殺したという記憶がございますので他者には事実改変の影響を与えないのでしょう」』


 だとしても、倒せる気がしない。過去、現在、未来のガイウスを倒したとしても、それぞれのガイウスにとっては現在であり、さらに過去と未来が存在する。まさしく、永久不滅を構成する永久機関ってことか。


『主人様がガイウスに勝てる確率はゼロに近いでしょう』


 遺書書く時間ってありますか?それか、今から降伏宣言してガイウスに命乞いをするか……


 セナは完全に諦めムードに入ってしまった。


『主人様、確率がゼロに近いだけでまだ可能性はありますよ』


 にゃに?!


『喰らうのです。ガイウスの魔石を。聖獣の魔石を喰らえばひょっとすると虹石を食べた時と同じように進化するかもしれません。」


 なるほど。(深層)に耐えれるほどの肉体に進化すれば良いんだな。やっぱそれしかない。


 それに、ガイウスからなんかうまそうな匂いがしてるのって魔石のせいだったんだな。


 どんな味なんだろう。


 そして、セナはガイウスの魔石を喰らうべく行動に移すのであった。


 ◇◇◇◇◇


『ほう、それがお前の真の姿か…………小っさ!』


 50メートルの巨躯の竜に50センチの猫。身長差は約100倍である。


 そう、セナは【千変万化】を解き、獣姿へと戻っていたのだ。


『主人様、本当にやるのですか?』


 漢にはやらねばならない時があるってカッコ良い事言ってもどうせキャットフェイスだから意味ないんだろ?


『意味無いですね。ギャップは可愛いらしいのですが』


 可愛いと言われても心は未だ男子高校生。実際、前世の年齢合わせて20代半ばだから可愛らしいには年々抵抗感が強くなるな。


 それよりもガイウスは俺の小ささに動揺している。思ってたん以上に小さかったんかな?失礼なやつめ。


 セナは、サファイアの能力を発動しガイウスの上空に砂時計を設置した。そして、自分の位置をその砂時計と入れ替える。


「何のつもりだ?」


 セナは急降下する中アクアマリンによる指向性「《氷蝕世界コキュートス》」を放つ準備をする。


「なるほど。またあの技か。先程は相殺したが今回はそうは行かんぞ!」


 ガイウスは口内で膨大なエネルギーを収束させ、解き放った。


 しかしセナは、アクアマリンからアメジストへと変え自身をバリアで覆う。


 貴様の体内に侵入し魔石を喰らってやるぞ!


 ブレスにより口をぱっかりと開いているためセナは難なく口内からガイウスの体内に侵入することに成功した。

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