02話 獣の巣

 『ズズッ』


  ……


『ズズズッバリバリ!』


  ……


『ズズッ』


 あのう、ナビゲーターさんなんか食べてません?

 

『ブボーッ、あれ?マイクはオフにしたはずなのに?』


 え?もしかしてナビゲーターさんの本体って別の場所にある感じ?


『いいえ。私はナビゲーターというスキルとして主人様の中に存在いたします。付け加えて私の本体はスキル内に存在するオフィス型の拡張空間にて私の声を主人様に届けているのです。このオフィス内であればある程度創造をすることが可能で今は主人様の知識にあったお茶とお煎餅を嗜んでおりました』


 なるほど、これからダンジョン攻略って時に……


『主人様が昼寝をしだすからです』


 それは申し訳ないわ。早速だけどこれから攻略していこうと思っているから次の階層に行ける場所を教えて欲しい。


『了解致しました。まず現在地から北へとまっすぐに北上していただければ次の階層へ続く転移陣が存在いたします』


 了解!早速進もう。


 ◇


 俺は今、ゴブリンに睨まれている。

 

 出発して2時間で魔獣にエンカウントしてしまうとはどんだけ運が悪いんだ。


『最弱魔獣のゴブリンですね。問題ありません。今の主人様でも倒すことが出来ます』


 まぁ、確かに体格は俺と同じぐらいだが……


『さぁ、首筋を思いっきり噛みちぎるのです』


 可愛い。え?ゴブリンってこんな可愛いの?何?あのつぶらな瞳は?睨んでも意味ない、全然意味ない。


 しかし、やるしかない。相手は俺をりに来てるのだ。


 俺はゴブリンに接近し首筋へ噛みついた。


 くぎゃっ!


 殺すという抵抗感はあったが自身の内なる狩猟本能が掻きたれすんなり倒すことに成功した。


 やはり、俺も宝石獣として転生したのだなと改めて実感する。しかし、元人としての理性はちゃんと残っていたことは素直に嬉しかった。

 

 やはり、殺すことは気持ちの良いものじゃないな。


『お疲れ様です。心中お察ししますが急いで目の前のゴブリンから魔石を取り出し、この場から離れましょう。魔石は心臓付近に存在いたします』


 俺はナビゲーターさんの言う通り魔石を取り出しその場を離れることにした。

 ……

 …………

 ………………


 ふぅ。ここまで来れば大丈夫かな?

 

 それでは、いざ実食と行きますか!


 俺は咥えていたゴブリンの赤い魔石を噛み砕き咀嚼、そして飲み込んだ。


 うまい。まるでもぎたてのリンゴを丸齧りしたかのような感覚だ。

 口に広がるは甘酸っぱいイチゴの味だった。そして飲み込んだ魔石から流れるエネルギーが身体中に染み込んでいくことがわかる。


 その瞬間、脳裏でナビゲーターさんとは別の声が響いた。


 〈スキル、【逃げ足】【投擲】を取得しました〉


 え?今の誰?

 

『恐らく、鑑定眼の能力の一部でしょう』


 取得したスキルを教えてくれるのか便利だな。


『……』


 あれ?ナビゲーターさん?もしかしてヤキモチですかー?


『ち、違います。それよりも先を急ぎましょう』


 はいはい。


 俺はその後三日三晩走り続けた。もちろんこまめに休憩したりグレイウルフやレッサーアントとの戦闘をしたりなどかなり無茶をした。

 

 その結果、かなりスキルを会得した。


名前: 【セナ】

種族: 【宝石獣カーバンクル

称号: 【異界の転生者】 

魔力階梯:【第一階梯】

闘力色:【黒】

深淵スキル:

ユニークスキル:【ナビゲーター】【鑑定眼】【石喰い】

スキル: 【逃げ足】【投擲】【咆哮】【爪撃】【硬化】【穴掘り】

統合スキル:

ギフト:【スキル統合】

魔法適正: 【光】


 ふふ、壮観なり。


 俺は走りながらステータスを確認していると……


『主人様、もう少しで目的地に到着いたします。ですが、転移陣近くで強力な魔獣達が争っております。隙を見て突破致しましょう』


 嘘でしょ!?やるんなら別のところでやってよ〜。


 俺は、最大限に警戒しつつ目的地まで近づいていく。しかし、転移陣の前では筋骨隆々の二つの角を生やした鬼と馬鹿でかい猪が戦闘を繰り広げていた。


『あれは、ハイオーガとジャイアントボアですね。双方とも上位個体です』

 

 双方ともかなり傷ついており次の攻撃でこの戦いの勝者が決まろうとしている。


 もしかするとこれはチャンスなのでは?


 俺は、極力目立たないよう草むらの中で息を潜ませチャンスを伺う。

 

 次の攻撃で息絶えた方の魔石を頂いて転移陣までいけば……そんな策略を立てている中双方が同時に動き出した。


 そして、ハイオーガの振り下ろした棍棒がジャイアンボアの頭を捉え爆散。ハイオーガは勝利の雄叫びを上げるがその隙を小さな獣は見逃さない。


 俺は瞬時にジャイアントボアへ近づき【爪撃】で魔石を取り出し転移陣へと駆け出した。


 しかし、それに気づいたハイオーガは傷だらけの体を動かし俺を追いかけようとする。


 歩幅が小さい俺はすぐにハイオーガに追いつかれてしまうが体が小さいため棍棒をかろうじで避けれている。

 それに加えて【逃げ足】のスキルで少しだけ足が速くなっている感じがする。

 ハイオーガは細かい動作に関しては苦手のようだ。さぞ、もどかしい思いをしているのだろう。


 そして、俺は転移陣の中へ入ることができ淡い水色の光が俺を包んでいく。

 

 しかし、ハイオーガはまだ諦めておらず転移する瞬間オーガの上半身だけ転移陣に侵入して来たのだ。


 しつこ過ぎだろこいつ!


 その後、転移が終わり俺の目の前にはハイオーガの上半身が転がっていた。


 oh……グロテスク!


『ハラハラしましたね?』


 もう、こんな体験はしたくないな。


『主人様が強くなれば怖いものなんてなくなりますよ』


 まぁ、確かにそうだな。それよりも次は一体どんな階層なんだ?めちゃくちゃ暑いし此処は洞窟なのか?

 

 周囲には溶岩が散りばめられている。


『ここは、第二階層獄炎の世界ですね。炎系の魔獣がいる階層です』


 相性最悪だな。毛皮を脱ぎたい。それよりもハイオーガの魔石を回収して魔石を食べよう。


 俺は二つの魔石を食べた。


 うまい。ハイオーガの魔石の方は色合い的にピングだったが完全にメロンの味がした。そして、ジャイアントボアの魔石だがバナナ味だ!


 〈スキル、【怪力】【威圧】【直感】【微再生】を取得致しました〉


 おぉ!【微再生】はすごく助かるかもしれん。


 その瞬間、これまでに負ってきた擦り傷が少しずつ再生してきているのを感じる。


 これである程度の傷なら問題なさそうだな。


 この調子でガンガン階層を攻略していこうか!

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