第21話 a-4《黄色いスイカ》

 月に一度、自室での、保護者との面談があります。(もちろん、その保護者とは、パパのことです)

 あたしはパパに「〈イエロー〉を辞めたい」と言いました。

 辞めてどうするのかは分かりませんが、もう、地球人の心に近づくのはつらいのです。〈イエロー〉に入る前の、確実に一つきりだった――外の世界に触れる前のあたしに戻りたいのです。

 今この、地球人でもなく、宇宙人でもない自分が辛くて仕方ないのです。

 パパはあたしのその言葉を聞き、大層喜びました。

「その言葉を待っていたんだ。実はね、宇宙に出る準備が進んでいるんだ!」

 故郷の星の仲間に、ついに出会ったのだと言います。

 それは、インターネットで知り合った、かわいい歯科助手の女の子・かぐやなのだと言いました。(パパはそのとき、自分を偽らなかったのでしょうか?)

 かぐやは、宇宙船を所持しているそうです。

「急がないと。なにせ、こんな風にしている間も、宇宙は膨張しているし、ぼくたちのすみかは、どんどん地球から遠ざかっているのだからね。すぐに〈イエロー〉を辞める手続きをしよう!」

 パパは意気込んでいましたが、結局、あたしは退学することはできませんでした。

 パパが許しても、一番偉い校長先生が外出を許してくれなかったので仕方がないのです。

 その面談の翌日、あたし宛に手紙が届きました。

 パパからです。パパはなんと、あたしをおいて宇宙へと帰ってしまったのです。

 こんな、手紙でした。

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