第12話 アンジェラとマデレイネに会いました(ランスロット視点)

 ギルベルトが、先ぶれを出し、私達は二人が住む屋敷に行った。


 ふたりはこの国に住む、ギルベルトの伯母(我が国の国王の姉)の嫁ぎ先の大公家の養女になっている。

 ふたりは音楽士として演奏をして生計を立てているが、生活費のほとんどは我が家と王家が出している。


 大公家の本宅の敷地にある離宮にふたりは住んでいる。


 ふたりが百合なことはみんな知っているそうだ。この国は百合も薔薇も違和感なく普通に当たり前に暮らしているらしい。アンジェラはマデレイネ嬢とのことを伯母に相談していたらしい。


 我が国はまだまだ保守的でその辺りに関しては全くダメだ。ギルベルトが国王になったら薔薇も百合も自由に暮らせるようにしたいと思っているらしい。

 私はべべの事しか興味がないが、否定はしない。好きなもの同士、幸せになれる国は良いと思う。


「ギル兄様、お久しぶりです。ランス兄様も久しぶりね」


 アンジェラが迎えてくれた。


「アンジェラ、我が国にいた頃よりいきいきしているな」


「そりゃ自由だもの。この国は良いわ。ハード面ではあの国より遅れてはいるけど、ソフト面では大勝利だわね」


 アンジェラはふふふと笑う。


「私達が作っているハーブティーですわ。召し上がって下さいませ。お菓子もハーブが入っておりますのよ」


 マデレイネ嬢がお茶の用意をして現れた。


「マデレイネ嬢、久しぶりだな」


「ランスロット様、べべと結婚したそうですね。上手くいってますか?」


 マデレイネ嬢はいたいところをついてくる。


 ギルベルトはヘラヘラ笑いながら口を開く。


「それが、ランスは好きを拗らせすぎてべべちゃんと上手く話ができないらしい」


「まぁ、あの頃から全く話ができなかったけど、今でもなのですが? まさか足がすくんで前に行けないというのも?」


「いやそれは治った」


 マデレイネ嬢は私がべべにベタ惚れな事は婚約者だった頃から知っている。マデレイネ嬢達の事を知った時に、父が勘違いをして私と婚約者になった事で他の誰とも婚約せずにアンジェラと愛が育める。べべが婚約しないように協力するからアカデミーを卒業するまでは婚約者でいてほしいとふたりに懇願された。


 ベべの縁談を妨害するならと協力する事になった。


 あの頃の私は拗らせすぎていて、べべの姿を見ると足がすくんで動けなかった。オリヴィア姉上に叱咤激励され、それはどうにか治ったのだが、話す事はまだ難しい。


「べべは鈍チンで天然だからランスロット様の気持ちなんてわかりませんわ。ちゃんと話して向き合わないと逃げられますわよ」


 マデレイネ嬢め、自分が幸せなもんだから余裕だな。


「全くだよな。こんな口のたつ男が好きな女に話せないなんてな」


 ギルベルトの言葉にふたりはくすっと笑う。


ハーブティーをひと口飲んでアンジェラが口を開いた。


「お兄様、手紙をお書きになった事はありますか?」


「いやない」


「手紙なら顔を見ないし、本当の気持ちが書けるのではありませんか? べべちゃんは優しい子だし、きっと本当のことを知ったらちゃんと理解してくれるのではないかしら」


 手紙か……。


「ランスロット様のご家族は、べべにランスロット様が上手く話せない事は伝えていらっしゃらないのですか?」


「あぁ、自分で話せと言われた」


 そうなのだ、母上も姉上もお喋りなくせにそんな事は話してくれない。まぁ、自分で解決しないといけないのだろう。


 帰り際にふたりが作っているというハーブの茶葉を持たされた。


「今度はべべと一緒に来て下さいね。それまでに話せるようになるといいですね」


「手紙、手紙ですわよ。手紙を書いて下さいね。私達、おふたりが仲良くなるように祈ってますわ」


 アンジェラとマデレイネ嬢に見送られて、私とギルベルトは王宮に戻った。


「ギル、ランス、ダイナマイトが来て、あの大岩が吹っ飛んだそうだ。もうすぐ帰れるぞ!」


 イザークとハインリッヒは大喜びだ。


 やっと帰れる。べべに会える。


 帰ったら手紙を書こう。べべにちゃんと打ち明けよう。


 私は心はべべの側に飛んでいた。


*アンジェラはランスロットの妹、マデレイネはべべの姉です。アンジェラは最初はランスロットの姉の設定だったのですが、年齢差を考えて妹に変更しました。皆様すみません。

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