第5.5話 返事

 俺は二人から同時に告白された。この世界では重婚が認められてるとはいえ、元日本人として抵抗がないわけじゃない。それでも二人とも可愛いし、愛しいと思うようになってきた。…でも、まだダメだ。

 「…イツキの言いたいことは何となく分かります。でも、私たちも不安なんです。せめて、彼女だと名乗ることだけは許してくれませんか?」

 シンシアは懇願するようにそう言った。でも、俺も覚悟が決まってないし……怖い。この世界ではいつ死ぬか分からない。俺はスラリンの力を借りて、ようやくCランクだから、もっと強くなるまで待ってほしい。

 「…サクラはどう思ってるの?」

 シンシアのお願いに頷けなかった俺はサクラの意見を聞くことにした。…卑怯ひきょうだよね。

 「私?私は…今が幸せならいいかな。たとえ私がいっちゃんに選ばれなくてもいい、って気持ちで言ったから、保留にしてくれただけでも嬉しい」

 …シンシアもサクラも本音を話してくれたんだ。俺も同じようにしないとだろ?

 「…俺は、怖いんだ」

 「怖い?」

 俺がそう言うと、サクラが意味が分からないという感じで首を傾げた。シンシアも同じなのか、俺の言葉を待っていた。俺は一度頷いてから話を続けた。

 「ああ。この世界は死が身近にある。スライムに襲われてよく分かったよ」

 「…死ぬのが怖いんですか?」

 シンシアが聞いてきた質問は首を振って否定した。

 「俺が死ぬのはそんなに怖くないよ。でも、俺が死んだことで悲しむ人がいるのは怖い。それに、俺にとって大事な人が傷つくのを見てることしかできないのは辛いと思う。…だから、俺が強くなるまでそういうことは待っててほしい」

 俺がそう言い切ると、一瞬だけ周りが静かになった。

 「やだ…」

 でも、その沈黙はすぐに破られた。サクラの押し殺したような声の後、俺に届けとばかり感情の籠った言葉をぶつけてきた。

 「やだよ!私はいっちゃんのことが好きだから!そんなことはもう手遅れなの!もしいっちゃんがいなくなったら、私もどこまでも追いかけてあげるから!私に、私たちにとってはいっちゃんが"大切な人"なの!」

 「そうですよ。私たちはイツキが大好きなんです。もう、一生あなたの側にいる覚悟もしてるんです!彼女宣言はそれを外に見せるための大切な機会なんです」

 二人はそう言ってくれた。俺も多分、もう二人が危険なことになったら助けるだろうな。……なら、彼女になってもらう方がいいのかな?役立たずだって、追い出されたのに。そんな俺が幸せになってもいいのかな?

 「…こんな俺でよかったら、彼女になってください」

 「はい!よろこんで!」

 告白とも呼べないようなカッコ悪いやり方に、だけど二人は微笑んでくれた。その笑顔がずっと続くように、俺はもっと強くなりたい…。

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