クラスから追い出された最弱テイマー、美少女幼馴染みと共に最強を目指す

第1話 異世界へ

 月曜日の朝、今日から学校かと思いながら俺、上原うえはら 逸樹いつきは日本高校の自分のホームルーム教室へと入っていった。

 「もう!遅いじゃない!鈍臭いんだから!…今日も話せなかったじゃない…」

 そう声をかけてきたのはこの学校でも1、2を争う美少女の蒼井あおい さくら だ。この学校で彼女を知らない人はいないのではないかというほどの人気で、ファンクラブまであるそうだ。サラサラとした桜色の髪の毛を後ろで一つに縛り、少し大きめの瞳も髪の色と同じように、淡いピンク色になっている。明るい性格で誰にでも気さくに話しかけ、性別を問わず人を魅了する。胸は平均的か少し小さめだけど、そこがいいそうだ。クラスの男子が、これで一人称がボクだったら最高なのにな、と話しているのを聞いた。

 「はいはい、悪かったよ」

 そんな美少女に話しかけられても、俺はいつものことなので適当に返事をした。クラスのほとんどの人は知らないと思うが、俺と彼女は幼馴染みなのだ。昔はよく一緒に遊んでいた。それが変わったのは中学生の頃だ。それまで俺はさーちゃん…蒼井さんとはずっと一緒にいるもんだと思っていた。けど、他の男子からしたら、俺だけ蒼井さんに特別扱いされているのが気に入らないみたいだった。たくさんいじめられて、彼女と距離を置くことにした。そして、俺は人を信じられなくなった。それでも幸いなことに俺は昔から自分の感情を隠すのが上手かった。そのため、今まで大きなトラブルはなかった。

 「いっつもそればっかじゃない!…今日は一緒に帰れるの?」

 彼女には悪気がないことは分かっているが、俺には他のクラスメイトたちの「…なんでアイツばっかり」「なに桜様を無視してくれてんのよ」といったような声が聞こえてきた。それが聞こえてくるたびに俺の心は掻き乱される。

 「…うるせーな」

 そう無意識に呟いた瞬間『キンコンカンコン』とチャイムが鳴り響いた。

 「あっ。……ごめんなさい」

 そう呟いた桜の声はチャイムにかき消されて俺には届かなかった。

 チャイムが鳴り終わった瞬間、教室の床が青く光り出した。そのまま光はどんどん強くなり、なにも見えなくなってしまった。「えっ」そう誰が呟いた瞬間、教室内がパニックに陥った。「なんだよこれ!」「どっ、どうせドッキリなんでしょ!」「やだ、もうやめてよ!」そんな声が聞こえてきた。

 やがて光が収まると、見知らぬ空間に出ていた。「ここは…どこだ?」という疑問に答えるように女性が目の前の階段から降りてきた。

 「ようこそ、勇者様がた。私はこのカワラギ王国の第三王女、シンシア=カワラギと申します」

 シンシアと名乗った彼女に俺は違和感を感じた。王女という割には身につけている衣服がボロボロなように思った。飾りっ気のない真っ白なドレスはところどころり切れていて、何度もったような痕が見えた。他には首元に不自然なくらい巻き付けられたスカーフのような布があるだけだ。

 状況が飲み込めてきたのか、「どういうつもりだ!俺たちを教室にもどせ!」「そうだそうだ!勇者だかなんだか知らないが他所でやってくれ!」と叫ぶ人があらわれた。それに対して、シンシアは深々と頭を下げた。

 「たいへん申し訳ございません。あなた達を元の世界に戻すことはできないのです。…戻れる可能性があるとしたら、魔王のみが持つとされる転移系最上位スキル『闇魔法(神)』しかありません」

 この言葉を聞いた生徒の反応は大きく分けて3通りだった。激昂げっこうする人、絶望する人、そして喜ぶ人だ。中には座り込んでしまう生徒もいた。シンシアは申し訳なさそうにするばかりだった。

 「…私たちにできることならなんでもします。生活面で困らせることはしないと誓います」

 「そういうことじゃないだろ!」と生徒の一人がシンシアに向かって言った。消え入りそうな声でシンシアは謝った。その目には涙が浮かんでいた。

 「お願いします。話を聞いてください!…この世界には魔物がいます。勇者様がたはこの世界の人よりも強いステータスをお持ちのはずです。"ステータスオープン"と念じてみてください」

 俺はシンシアに言われた通りに念じてみることにした。すると、頭の中に文字が浮かんできた。

 【イツキ=ウエハラ 性別:男 年齢:17 

LV:1(next:5000)

職業→テイマー(◼︎)

生命力 25→20(+5) 25

魔力  20→20(±0) 20

筋力  20→20(±0)

防御力 30→20(+10)

魔法力 20→20(±0)

精神力 30→20(+10)

速力  25→20(+5)

総合ランク G

スキル 

・テイミング→魔物を従えることができる。テイム可能モンスター:スライム

称号

・異世界人→全ての言語を理解可能】

このステータスが強いのかどうか分からないが、それぞれの項目についてシンシアが説明してくれた。

 「ステータスについて説明します。生命力は自身の命のことです。これが0になるまではモンスターからの攻撃を一切受けません。0になっても死ぬ訳ではありませんが、直接攻撃を受けてしまうので、必ず0にならないようにしてください。魔力はスキルを使うために必要なものです。一部のスキルは消費しませんが、基本的に魔力がないとスキルは使えません。また、強力なものほど消費魔力も多くなります。筋力と防御力は与えるダメージと受けるダメージに影響します。基本的にはその差がダメージとなります。しかし、攻撃に当たったら1ダメージは必ず受けるので、避けられる攻撃は避けるようにしてください。魔法力と精神力も同じような感じです。こちらは遠距離からの攻撃に影響します。そのため、弓を使う場合はこちらが重要となります。速力は攻撃のためのものです。これが大きければ武器を振る速度や魔法を発動させる速度が速くなります。移動速度などとは関係ありません。同様に筋力がいくら高くても殴ったりしない限りドアなどの物が壊れる、なんてことはありません。これらの数字は矢印の左側が合計値で、右側は自身のステータスです。()の中に入っている数値は装備しているものや、支援魔法などの増減を表しています。職業はおすすめの職業であるだけなので、従わなくてもいいです。その後ろにあるものがおすすめの度合いで、小さい方から順に微→小→中→大→超となっています。これはステータスとスキルから自動で選ばれます。また、一部のスキルにも同様のランク分けがありますが、スキルの場合のみ超の上に神があります。スキルは魔力を消費することで使用できる切り札のようなものです。また、特定のことをすると称号が得られます。称号とは、魔力を消費せずに、常に発動する能力です。最後に総合ランクについて説明します。総合ランクとは、G〜SSSまであり、ステータスのみで判断されています。そのため、スキルなどにより、強さは前後するので過度に信用しないようにしてください。…ここまでで何か質問ある方はいらっしゃいますか?」

 シンシアがそう聞いたときに「この世界の人はだいたいどのくらいのステータスなんですか?」と尋ねた人がいた。

 「そうですね。一般市民がだいたい20くらいです。そして、冒険者になる人はだいたい50くらいです。200を超えると英雄クラスです」

 それを聞いた俺は頭が真っ白になった。俺は…一般市民と同じくらいなのか…。

 「他に聞きたいことはありますか?」

 俺はもう一つの項目であるLVについて聞くことにした。

 「一ついいか?LVってなんだ?」

 俺がそう聞いたとき、シンシアはポカンとした顔になった。よく分からずに周りを見るとみんなも同じような顔をしていた。

 「…あの、LVってなんですか?」

 「…えっ?」

 シンシアがウソをついてるような雰囲気はなかった。…じゃあ、この表示はなんなんだ?

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