第5話

□□□


 …………………はぅぁっあっ!!?


「……にゃにゃっ!!?」

「あっ、おはよう、パール!……といっても、もう夜だけどね」

「おはようございます、パール殿」


 あ、あれっ?


 私、さっきまでメアリーちゃんの小ぶりなメロンをじゅるじゅるしゃぶり尽くして…………


 ……って、なんだぁ、夢か。


 ……我ながら凄い夢見たな。私の深層心理、どんだけ変態なんだ。表層心理も変態だけども。


「にゃ?」

「ここは今晩の宿で、冒険者組合ご用達の宿屋だそうです。危険は恐らく無いので安心して宜しいかと」


 ふむ?確かに部屋の感じは良さげ。


 内装は豪華ではないけど、ベットはふかふかしてソファーも置いてあるし窓際には木目調の良さげなデスクが設置してある。センスがいい。


 お金はかけずにセンスの良さで部屋がめっちゃ良く見える感じだ。


 ドアには鍵もしっかりかかってるみたいだし、確かにノーブルの言う通りに安全っぽいね。


「まったく、もう。ノーブルって本当に用心深いよね。冒険者組合のとこでも全然喋らなかったじゃん」

「それくらいで丁度良いのですよ。御主人が無警戒なだけです」

「むぅっ!そんな人を疑っちゃダメでしょ!」


 おっ、ぷんすかメアリーちゃん。


 いい感じにほっぺたを膨らませてぷんすかしている。ほっぺた、ぷっ、ってやりたいわ。


「ぶっ!?……こら、ノーブル!」


 ……あっ!!ノーブル、貴様!!


 何勝手にメアリーちゃんのほっぺた突っついてんねん!!


「シャァッーー!!!」

「わわっ!?どうしたの、パール?落ち着いて?」

「にゃ」

「…………パール殿、従順過ぎませんか?」

「にゃにゃっ!」


 私が従順なんじゃない!

 

 メアリーちゃんが魅力的過ぎるんじゃ!!


 だって、ほら!


 こんな可愛い娘に頭なでなでされて動じずにいられるわけないじゃんか!!


「にゃふぅん……」

「ふふっ、パールは頭なでられるのが好きなんだね~。よしよし~~」


 ふはぁっ……もうね……最高の安眠剤やわ……


「すにゃぁ…………」

「あれ、また寝ちゃった」







□□□


 はい、どうも、パールです。


 完全にアレです。


 昼寝のしすぎで夜寝れなくなったやつです。


 今真夜中です。


 メアリーちゃんの寝顔が可愛いです。


 ちなみに辺りは真っ暗なのですが猫の獣の目のおかげではっきりくっきり見えてます。


 メアリーちゃんの色んなところがはっきりくっきりです。


 …………てな感じで、さらっとセクハラを終わらせたところで夜の散歩に洒落込みますか。


 窓の鍵開けて……っと。


 さぁ、いざ行かん、歓楽街へ!!


 とりあえずこの宿の屋根まで登って周りを偵察、一番明るくて賑わってる場所を目指す感じで。


 まずはこのまま窓からジャンプ……って結構怖いな。二階だけど猫視点だとめっちゃ高く感じる。まぁ、この身体なら落ちても怪我はないって直感で分かるんだけど。


 万が一をとって魔法で浮くか。


 風属性魔法よーーい!!


 これに乗って…………えいっ、発射!!


「にゃにゃっっにゃっ!!?」



 ドッピュッゥーーーンッ!!!!


 

 …………着地、っと。

 

 あはは……めっちゃ飛んだわ。予想の三倍は飛んだ。建物の高さの二倍は飛んだもん。人がゴミのようだっ!!って言えるくらいの高さまでは飛んだ。


 やっぱり魔法の練習した方がいいね、これ。いつか暴発して宇宙まで飛んで行きそうだわ。


 …………と、まぁ、それは良いとして。


 見つけちゃったわ、騒がしいところ。


 人がゴミ状態でも私の『可愛い娘いるぞレーダー』に反応があったね。ビンビンなってる。……ビンビンなってるは表現まずいか?無意識にクソみたいな下ネタが。


 …………でも、結構遠かったんだよな。あんまり遠くに行ったらメアリーちゃんがちょっと目を覚ましたとき心配しちゃうだろうし。


 うーーーーーーん…………


 今日は行くの止めとこうかな。


 あちこち近くに見える居酒屋さん回るくらいにしとくか。看板娘とか居たらいいな。気に入るところあったらメアリーちゃんに勧めてみるか。そしたらのんびり眺めること出来るし。


 ……いや、やっぱりそれは止めとこうかな。夜の居酒屋は治安が悪そう。メアリーちゃん、また絡まれて大変なことになりそうだな。


 メアリーちゃんが居酒屋なんか行ったら看板娘そっちのけで注目集めちゃうだろうよ!!


 結局のところメアリーちゃんの魅力が最強というわけだ!

 

 ………………ん?


 何の音だ、これ?なんか鳴ったな、今。


 ………ギシッ?


 後ろの方から……ぁ………ッッッッッ!!!!!?


「うにゃぁぁぁっっっ!!!!?」


 手っっ!!?


 手がっっ!!?

 

 手がぁぁっっっ!!!?


 幽霊が屋根に登ってきてる!!?


 うわぁあぁぁッっ!!?


 な、何!!どっ、どうすんのこれ!!


 私、浄化魔法は使えないよ!!?


 何!!?幽霊って何効くの!?


 爆発か!?落雷!?いや空間ごと消し飛ばせばっ!?


 ……って、イヤァッ!!?登ってる登ってる登ってきてるよぉぉ!!?


 あっ!?ああぁぁっ!!頭っ!!頭出てきたぁ!!


 あぁあぁっあっっあぁぁ…………って、あれ?


「にゃ?」


 ……ノエルさんじゃね?


 えーと、何してんの、あなた?


 ちょっ、ちょっと?そんな静かにジッー、って見ないで。


 えー、もう、ちょっと。怖いよ!!


 美人が暗闇のなか無表情で見つめてくるのは、もうそれ、ホラーなんよ!嬉しい、恥ずかしいとかそんな生易しいもんじゃないのよ!


 やぁっ、ちょっ、怖……って、近寄ってきた!!?

 

 に、逃げねばぁ……!!?

 

「…………」


 えっ、ちょっと?待って?


 何、今の反応。


 しゅん……ってしてた?


 試しにもう一歩後ずさりして…………


「…………」


 しゅんっ……ってした上に「あっ……」って感じで私の方に手を伸ばした。


 あぁっ!これは!まさか!?もしかして!?


 完全にアレだ!


 『クール系美少女、または美人が動物に触ろうとするも自分の恐い顔のせいで動物が逃げていってしまってちょっと悲しくなっちゃうイベント』!!!

 

 まさか現実で見れるとは!!


 どっ、どうする?


 私の今ある選択肢は主に二つ。


 このまま逃げるか、近づいてもふられるか。


 逃げるを選択したらノエルさんの悲哀の表情を陰ながら監視して愉悦することができる。


 一方もふられればノエルさんはほんわか喜ぶだろうし撫でられて私も嬉しい。


 テンプレとして考えたら逃げる一択なんだけどな。いかんせんもう一方の選択が魅惑すぎるんよね。いや、迷うな、これ。


 ていうか、迷ってる間にもノエルさん、めっちゃジリジリ近寄ってきてるわ。


 なんか凄い必死で笑う……


 …………まぁ、仕方ない。ここまで必死なのに敬意を表し、もふられてあげよう。


 ていうかよく見たら、ノエルさん、パジャマ姿で可愛い。


「うにゃぁ」

「…………!!」


 猫式奥義、足元にすり寄って甘える猫の術!


 どうよ、この自分でやっときながら恥ずかしくなるほどのあざとさは!!

 

 動物好きには堪らんであろう?


 ほれほれ、もふって良いのだぞ~~?


「…………!!!」


 おぉ……


 ちょっと雑……


 手が剣を握ったときのマメで少しごつごつしてる感じとかもあって撫でられ心地はあんまり良くない。


 ……だけどそれがキャラに合ってる感じがあって逆に良いね。


 この子を生んだ神様はよく分かってるわ。需要にあった供給。


「…………♪」


 おっふ……


 デレです。デレ入りました!!


 見ましたか、今の!!無表情が思わず緩んでしまった、みたいな笑顔!!


 最高かよ!!!

 

 なんかもうっ、誰目線だよ、って感じだけどさぁ?ノエルさんに、『動物撫でられて嬉しかったね~~』って言ってあげたい!!ノエルさんの頭をよしよししてあげたい!!何この気持ち!?これが母性!?


 これが本物のクーデレの威力か!!


 よしっ、しょうがないなぁ!!


 もうちょっと甘えてあげましょう!!


「にゃお~~ん」

「…………」


 秘技、お腹見せねっころがり!!


 仰向けにごろんっと寝っ転がり、お腹をだらしなく見せつけ相手を誘惑する!


 それを見せられたものは必ず誘惑に耐えきれずお腹をわしゃわしゃ撫でたり、突っついたり、もちもち揉んだりするという……


 そして手を出したが最後相手は死ぬまで猫を愛さざるを得なくなる、恐ろしい技なのだ!!


 さぁ、ドンとこーい!


「…………!」


 おっと……なゃにこれ……!?


 な、内臓がぐにょぐにょ動かされてる感覚……?


 変な感じにくすぐったい…………!


 それにちょっと、なんか誘惑するのは良いんだけど普通に女性としての理性がこんなポーズとるのに恥ずかしくなってきた。


 まぁ、でもノエルさん、とても喜んでらっしゃる。


 猫冥利に尽きますなぁ~~!


「…………ぅんしょっ」


 お?


 捕まえられた。


 脇に手を差し込まれ、持ち上げられる。


 うにょ~~~~ん、っと胴が伸び~~る。


「にゃぁ!」


 捕まえられた前足をぶんぶんやって抵抗する、フリをする。


 こうやって暴れたりするのが可愛いのであろう?


 ……って、何だ?


 何するつもり…………っ!?


「…………ちゅっ」


 え?


 は?


 何?


「…………またね」


 く、唇?


 柔らか……


 へ?


 は?


 ふ?


 ふぁっ!?


 ふぁっぁっ!!?


 ファーストキスッッッッ!!!!!?


 ファッ!?


 ファーストキスだぁぁっっっ!!?

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