log37...あるひとつの決着について(記録者:フルチューン・MALIA)

 視界の端、UMGPアンマークド・グッドプロダクトが墜落していきます。

 そちらへ気を取られるわけにはいきません。あとでYUKIユキさんに怒られてしまいます。

 高速でこちらに向かってくる“チャンディー”も気になりますが、捉えるのは現実的ではない速度。

 だからこそ、アルダーナーリー本体との早期決着を決めなければなりません。

 わたしは、ムーンライトを横倒しに振りかぶりながら、アーテルを急上昇させていました。

 アルバスが、キャノンを突きつけ圧をかけつつ、いつものダブルフルオート射撃を浴びせます。

 オービットが殺到して、また全方位からアルダーナーリーを撃ちます。

 わたしは、バリアシステム・ドゥルガーの揺らぎに集中。

 シールドダウンまでの負荷を目算します。

 今です。

 わたしがムーンライトを横薙ぎに振りぬくと、オーロラのような円弧が尾をひいて、ドゥルガーをダウン、できれば“ピナーカ”をもつ下段の腕を狙いたかったのですが、寸前でかわされます。

 また、肩のでんでん太鼓“ダマル”からスキャンの光が走り、アーテルの全身を通過しました。

 やむをえません。わたしはピナーカの破壊をあきらめ、振り抜いたムーンライトをひるがえして、アルダーナーリーを縦一文字に斬りつけました。

 光刃は、横へ逃れたアルダーナーリーの肩を通過し、ダマルを砲身半ばからえぐりました。

 ムーンライトの残光がわだかまり、音響砲の内部を灼き、ショートさせました。

 あるいは、あれもリペアされるかもしれませんが、さっき斬り飛ばした脚部パーツすら未だになおってないところをみると、すぐに復旧はしないはず。

 そう思うことにしましょう。

 そして。

 うわさをすれば、アルダーナーリーの残された脚が突然切れて、眼下に落ちていきました。

 自分でパージしたようです。

 下半身を失い、軽くなったアルダーナーリーが、急激に速さを増して上昇しました。

 ああ、やっぱり。

 チャンディーなる“合体ユニット”は、ちょうど巡洋艦みたいな形をしているのですが。

 アルダーナーリーの上半身とチャンディーが空中で軸をあわせ、なんと、超音速の中でしょうに、少しもズレなくドッキングしてしまいました。

 チャンディーとひとつになったその姿は、まるで巨大なフロート型SBスペアボディのようです。

 “狂暴な”チャンディーだった部位から蒼いブースタ光が噴射。

 それを目視した瞬間、横へ翔ぶので精一杯でした。

 最前まで豆粒のような大きさに見えていたアルダーナーリーの機体が視界を埋めつくし、アーテルの機体をはね飛ばして飛び去ります。

 かすめただけですが、それでもかなりの衝撃です。

 自機が空中を溺れて言うことをきかないので、わたしはオービットのほうに集中。

 けれど……ダメです、月並みですがアルダーナーリーが速すぎて、とても捕捉できません。

 アルバスのオービットも同様、推力がちがいすぎて、おいつけなくなりました。

 ようやくヘビーな重量二脚がでてきたかとおもえば、このオチです。

 アルダーナーリーが、はるか頭上でピナーカを組み立てるのが見えます。

 わたしもアルバスも、全速力で追いかけますが。

 わたしたちがにたどり着いた時には、アルダーナーリーはへ、読んで字のごとく瞬間移動しています。

 そして。

 ミサイル発射台に変わり果てたアルダーナーリーが、淡々とそれを打ち上げました。

 塔のようなそれが、電子誘導に導かれて翔んできて。

 固体じみた爆轟がマヌ上空を覆い尽くし、わたしたちを機体ごと、コックピットごと、容赦なく圧搾しました。

 スジャータの無差別通信が入りました。

《全て、想定の範疇でした》

 ■乱れ∴る視界の"中、YUKIユキさん;が、

《小細工;∴なし。スペッ∵クの;■暴力、だ∴〓ねぇ》

 ノイズ混じりに言ったのを最後に、わたしの五感も途切れました。

 

 ここまで出し切りましたが。

 負けて、しまいました。

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