log05...コロッセオへの挑戦? やるだけ無駄だ~ブリーフィング編~(記録者:TERU)

【非交戦状態。次の命令まで待機します】

 コフー、コフー。

 ああ、身体が重い。コックピット内の酸素が薄い。

 忌々しい事に、先日また三キロ太っていた。これで体重が三桁の大台に乗ってしまった。

 ああ、そう言う事は聞いてないか?

 今から話す“本題”よりはよほど有意義な話題だと思うがね。

 おれはHARUTOハルトのチームのテストパイロット。名前はTERUテルと言うが、別に覚えて貰う必要は無い。

 一応、仕事だから義務でこの記録を取っているが、読んで実入りのあるヤツがいるとも思えん。

 諸君らのオツムには、おれの話は荷が重い。悪いことは言わんからブラウザバックしてしまえ。

 

 今回、チームが受注した任務――つまりクエストに出撃するのはHARUTOハルトMALIAマリアの二人だけ。

 おれは参加しない。

 ヤツらの無為な努力を高みの見物だ。

 ジェノバ風ピザ、ペパロニピザ、それぞれLサイズと、デザートにイーストドーナツ、フレンチクルーラー、オールドファッションドーナツが少々。

 ドリンクはもちろん無難にコーラ。コカ・コーラ、ペプシコーラ、ドクターペッパー、ルートビア。その瞬間に何を食べているのか、おれ自身のその瞬間ごとのコンディションによって飲み分けが要求される。

 高みの見物を行うにあたっての備蓄は万全だ。

 

 今回の仕事については、厳密に“任務”と言うのは正しく無い。

 このゲームのコンテンツの一つである“SB闘技場コロッセオ”の参加である。

 シナリオ的には、ブラフマー財団が主催する、全企業勢力合意の協定とされる。

 これも戦争の一形態と言う事。

 要するに、どちらかが滅ぶまでの恒久的武力衝突にある5Tとは言え、戦争ばかりしていると金がかかるので、最小数の戦力同士で勝負して、領土の支配権だとかを公正に賭けようって寸法だ。

 一戦二戦で戦局が傾く訳ではないが、各企業の全試合のトータル勝率が月に一度集計されて本命の世界戦争に、物資や友軍NPCなどの様々な形でフィードバックされるのだから、コロッセオの動静もなかなか馬鹿にはならない。

 忘れかけた頃に、コロッセオからのテコ入れのせいで戦争の戦況が狂うと言う事もあるのだ。

 また、ブラフマーも5Tも、興業収入を得られて一石二鳥だ。

 次にメタ的な、プレイヤーの事情だが。

 SBスペアボディを歩かせる事すらおぼつかず、新規参入、即、脱落するプレイヤーが後をたたないようなゲームだ。

 ユーザーフレンドリー皆無のこのゲームにおいて、HARUTOハルトMALIAマリアのような辛うじて虫の息で残ったビギナーが実績を積むための登竜門とされている。

 コロッセオのエントリーにはF~Aのランク帯が設定されていて、言うまでもなくド素人のヤツらは最低のFランク。

 勝敗の影響は選手のランクに大きく依存する。

 Aランクが負ければ、それだけで所属企業の勝率ががた落ちする。

 Fランクが勝っても企業に加算される勝ち点はゴミ同然。

 逆もしかりだ。FランクのHARUTOハルト、および、その他一名が勝とうが負けようが、タールベルクには何の影響も無いに等しい。

 全体から見れば、ヤツら程度は居ても居なくても同じって事だ。

 

 さて、今回の試合は2on2のチーム戦である。

 対戦相手はトゥルビネ・インダストリー所属。

 脚部パーツと、その駆動系に特化した会社の飼い犬だ。さぞ、小うるさいハエのごとき敏捷性のヤツが出てくる事だろうと思ったら……ビンゴだ。

 対戦相手その1。

 機体名:アゲダコ パイロット名:NAOナオ

 軽量四脚タイプで、ツヤの無い深紅に白いラインの入ったような、名前通りのカラーリングだ。

 武装は火炎放射器と実弾マグナム、背部にレーザーキャノンが一門。

 四脚タイプは、言うなればケンタウロスのように、人型の胴体に四本脚が放射状に生えている。

 見た目通り、脚部の耐久性が脆弱だが、旋回性能が高い上にフロート型のような慣性のクセも無い。

 この上更に、ホバリング機能も標準装備されているので、地上戦ですばしっこい上に制空権も取りやすい。

 このような機動力ながら、積載重量もそれなりにある。

 HARUTOハルトらがテンパって翻弄される様が今から目に浮かぶようだ。


 対戦相手その2。

 機体名:エクリプス・ラビット パイロット名:MASAマサ

 逆関節二脚タイプ。メタリックな黒と所々紺色と言う、真っ暗な色合いだ。

 武装はマシンガンとレーザー手の甲剣ジャマダハル、両肩に垂直ミサイルのユニットが一門ずつ。

 逆関節タイプは、文字通り膝の関節が逆向きになった二足型だ。

 例えるなら鳥やバッタのような脚……と言えばいいのか。

 見た目通り、跳躍力に優れ、着地の衝撃を大きく緩和する構造だ。

 ブースタに頼らず、素のジャンプ力でそこそこの高度を稼げ、着地の硬直も短いのは、地味だが、このコロッセオのようなSB同士の近距離戦で驚異になる。

 反面、横からの衝撃に弱い事と、長時間の直立が維持出来ない構造ゆえに、常に動き続けなければならないのが欠点だが。

 それは裏を返せば、こいつもこいつで縦横無尽に駆け回る事も意味する。

 

 さて、そろそろ時間だ。

 おれはコックピット内のモニタ機能をオンにして、コロッセオの中継立体映像を表示した。

 申し訳程度に柱があるだけの、野球場みたいなドーム状。面白味の無いステージだ。

 アルバス・サタンとアーテル・セラフ。

 アゲダコとエクリプス・ラビット。

 両者が入場した。

 さて、ヤツらの無様な姿を見物させてもらおう。

 あからさまに相性が悪い。Fランクの雑魚同士とは言っても、負けるに決まっている。

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