第27話 想定外

 時間は18時になり、辺りは暗くなってきた。


 予定では、カラオケだけ行って解散ということになっていたが。


 どうやら、清水の気が済まないらしい。


「むぅ、払うのに」


「だから平気だって。清水はバイトもしてないだろ?」


「それはそうだけど」


「古くさいかもしれないが、女の子に払わせるなっていうのが教えなもんで。悪いが、俺に払わせてくれ」


 ただいま男女平等の世界、人によっては嫌がるかもしれない。

 女性だって払った方が気が楽な場合もあるし、男性も払うのが嫌って人もいる。

 しかし刷り込みっていうのは厄介なもので、俺はじいちゃんや親から言われてきたからなぁ。


「……ずるい言い方ね。それじゃ、ありがたく」


「おう、ありがとな」


「もう、なんで貴方がお礼を言うのよ……変な人」


「へいへい、変ですみませんね」


「ただ、私の気が済まないわ……そうか、夕飯をご馳走すればいいのね」


「はい? いやいや、夕飯の方が高くつくだろ」


 ゴールデンウィークとはいえ、所詮は学生の昼間フリーだ。

 一人当たり千円もいかないから大したことはない。

 外食となると、物によるが一人千円くらいするだろうし。


「……そうよね。そうなると、私が作るしか……でも、家に呼ぶのはアレだし」


「当たり前だろ。お前の家になんか行ったら、親や学校の奴らに殺されるわ」


「別に平気だと思うけどね……あっ、そうすればいいかも。ちょっと待って……」


 すると、スマホをぽちぽちと打ち出す。

 俺も手持ち無沙汰なので、スマホをいじっていると美優から通知が来る。

 そこには……『お兄ちゃん、しっかり案内してあげてね!』と。


「あん? なんの話だ?」


「許可が取れたわ。美優ちゃんに、今日の夕飯を作らせてもらえないかってお願いしたの。同居してるおじいちゃんも、是非にって言ってくれたみたい」


「……はい? どういうこと?」


「だから……私が貴方の家に行けば解決ってことよ。そしたら安全だし、美優ちゃんも知ってるし。それに、私も料理とか作れるから」


「……つまりは、清水がうちに来るってこと?」


「ダメかしら? ……貴方が嫌っていうなら仕方ないけど」


「いや、二人が良いなら大丈夫だろう」


 しかも、すでに根回しは済んでいるらしいし。


 ちなみに、じいちゃんと美優が認めたなら俺に拒否権はない。


 ただし、俺の家のことを説明することになるが。


 ……まあ、別に清水になら言ってもいいだろう。


 短い付き合いだけど、それを吹聴するような奴ではないとはわかってるから。








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