第36話 婚約者2
コンドゥシル男爵家の
「ええ~… コホンッ…! デシル、お母様と少しお話をしましょう?」
男爵夫人はデシルを呼び止めると…
「はい、あの… 何ですかお母様? わわっ! 手をグイグイ引っ張らないで下さいお母様! サリダ様すみません! 僕はお母様とお話があるので、少し席を外しますね! すぐに戻りますから!」
すごい勢いで、その場から母に連れ出されるデシルは、背後を振り返り、サリダに謝罪した。
「兄上、急がなくて良いですよ! 僕がサリダ
騎士に
「そうだよデシル、急がなくても良いよ… 私はいくらでも、君を待つから、ゆっくり
弟の隣でサリダは
「ありがとうございます、サリダ様… それでは後で!」
支度? 支度って… 何の支度のこと? それに何でサリダ様の顔が赤くなっているの? 赤くなるほど、サリダ様は
「さぁ急いで、デシル!」
「え? お母様、それでお話とは何ですか?!」
「ここでは話せないから、あなたのお部屋に行きましょう? ね?! さぁ、早く!!」
デシルは母に急かされながら、ガッチリ腕をつかまれ、自室へと戻った。
自室へ戻ると、なぜかデシル付きのベータ女性の使用人たちが、待ちかまえていて…
「さぁ! あまり時間がありませんから、急いで下さいデシル様! すぐに入浴を済ませて下さい!」
「ええっ? 何でいきなり、入浴なの?! それより僕は、お母様とお話があって、部屋に戻ったんだよ?! サリダ様が居間で僕を待っているし…」
「私のお話は後で良いから、ほらデシル! 早く服を脱いで入浴の準備をしなさい!」
母と3人の使用人たちに急かされ、デシルは服をあっという間に脱がされてしまう。
そのうえ、いつもとは違い… お祝い事に使われる、
(デシルがオメガでも、男女の性差があるため、使用人たちに見えないよう、
「入浴が終ったら、身体にエストレジャの花のエッセンスを塗り込めるから、あまりゆっくりはしていられないわよ?!」
「ええ?! 何で?!」
エストレジャの花のエッセンスなんて… 何で?! 数ヶ月前の成人の儀式の時に、使って以来じゃないか?!
隣国の、ごく限られた地域でしか育たない、小さな星の形をしたエストレジャの花から、
湯からあがり、バスローブ姿でデシルが椅子に座ると、男爵夫人が
「ねぇ、お母様? いったい何をするの? いい加減、教えてくださいよ! 何かあるから、こうしているのでしょう?!」
何も知らされずに、アレをやれ! コレをやれ! と急かされて、デシルは
「お父様やサリダ様と昼間、話し合ってね… 今夜は、あなたたちの初夜を前倒しにしましょうと、いうことになったの!」
「・・・・・・」
あれ? 今のは僕の聞き間違いだろうか?
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